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1台1台のクルマにドラマがある! スーパー耐久が創る"未来"

2024.05.01

スーパー耐久の開幕戦を振り返りながら、各チームの物語を現地取材。勝ちにこだわりながらも、もっといいクルマづくりにかける、それぞれの想いと人間ドラマに注目!

4月26日のトヨタイムズスポーツは、日本最大級の草の根(参加型)レースでもある「スーパー耐久」を特集した。第2戦の富士24時間に向けて、新体制の発表や水素エンジンなど話題は尽きないが、今回注目したのは “未来”を創るために奮闘する人々のドラマ。菅生での開幕戦を振り返りながら、1台1台のクルマに懸けるドライバーやチームの熱いストーリーを追った。

坪井翔、山下健太が語るスーパー耐久の熱気

新シーズンを迎えたスーパー耐久が、次の未来に向けて動き出した。6月から一般社団法人スーパー耐久未来機構(STMO)による新しい運営体制に移行することになったのだ。理事長に就任するモリゾウ選手(豊田章男会長)らによる会見の模様などは、トヨタイムズの記事でも伝えている。

スタジオゲストは、坪井翔選手、山下健太選手のスーパーGT開幕戦優勝コンビ。ここ数年のスーパー耐久への注目度の高まりについて、坪井選手は「毎年どんどん盛り上がって、その熱を今感じながらやっている最中です」、山下選手は「そもそも水素でレースを走るという、世界で初めてのことが日本のスーパー耐久で行われているのが、めちゃめちゃとんでもない」と語る。

同い年の坪井翔(左)と山下健太(右)は、ともにGT500のシリーズチャンピオン経験をもつトップドライバー

プロドライバーとアマチュアの「妥協点」とは

スーパー耐久には改造範囲や排気量などで9個のクラスがあり、サーキットで新しい技術を試す「走る実験室」のど真ん中になっているのがST-Qクラス。トヨタ以外にもマツダ、スバル、ホンダ、日産から計8台の開発車両が参戦している。

番組では、4月20・21日の菅生での開幕戦を走った6台について、それぞれ取材した。

まずは今年から参戦した92号車のGRスープラ。ドライバーはプロが山下選手ら3人で、ジェントルマン(アマチュア)が社員ドライバーの加藤恵三選手。ピットでは和気あいあいとした姿が見られた。

開幕戦はセーフティーカーが入り、加藤選手は4時間のレースの2時間近くを担当するロングドライブに。タイヤを変えずにバランスを取ることを求められた。「クルマをコントロールするのに劣っている自分たちがもっと楽に運転するためには、クルマが変化するのが一番良くない。変化をなるべく小さくするのが課題」と話していた。

山下選手は「プロのドライバーは、よく曲がりさえすれば自分たちどうにでもできてしまう。クルマがオーバーステアでリアが滑りやすい状態でも、それで速けりゃいいかなみたいな。ジェントルマンドライバーの方がそれに乗ると、オーバーすぎてスピンしてしまったりとかあるので。自分たちも速く走れなきゃいけないし、ジェントルマンの方たちは安心して速く走れるクルマをつくらなきゃいけない。そこが妥協点という感じ」と解説した。

左からジェントルマンドライバーの加藤恵三、プロの松井孝允、河野駿佑、山下健太。新監督の関口雄飛がチームをまとめる

メーカーの垣根を越えた未来の燃料への挑戦

マツダからは、バイオ燃料で走る55号車のMAZDA3と、カーボンニュートラルで走る12号車のロードスターが参戦。チーム代表の前田育男さんは、「最初にバイオ燃料でクルマを走らせた時は、燃料調節やコンピューター制御でなんとか走れる状態まで持ってきた。今は普通のディーゼルエンジンと変わらないパフォーマンスが出せている」と説明する。

カーボンニュートラル燃料については「先駆者であるトヨタさんスバルさんの知見をいただけて、そこに壁はない。共に創るという感じで、技術開発という意味で一緒にやっている。でもレースはレースで戦って、すごくいいムード」と語った。

菅生では2台ともに完走。前田さんは「ここで鍛えられた技術が商品に直結していく。レースとしては最高の場じゃないかなと思います」と話していた。GRスープラとマツダの2台の開幕戦の模様は15:00から

前田育男チーム代表。カーデザイナーでありながらドライバーの顔も

尖ったセッティングで挑んだホンダ

ホンダは271号車のシビック Type R。Aドライバーの大津弘樹選手以外は毎回ドライバーを変えていくスタイルとなる。

今回はプロドライバー3人で、尖ったセッティングで臨んだ。大津選手は「かなりコントロール技術が必要だと感じるんですけど、乗りやすくするとタイムは落ちちゃうんですよ。平均としては、いろんな人が乗っても上がるところを目指して、いろいろテストしながら情報を収集しています」と語る。

「初心者に優しくしてくれないと」とジョークを飛ばす野尻智紀選手らとの掛け合いが楽しいインタビューは27:11から

プロでまとめたホンダ勢。左から武藤英紀、大津弘樹、野尻智紀

ドライバーへの試練が成長へのきっかけに

ルーキーレーシングの1台目は28号車。カーボンニュートラル燃料で走るGR86で、ドライバーは坪井選手らプロ2人と、佐々木栄輔選手らジェントルマン2人の体制だ。

「すみません、クルマを壊すところでした」と、予選の後に反省の弁を語っていたのは栄輔選手。予選でクルマをスピンさせてしまった栄輔選手に、大嶋和也監督兼選手は試練を与えた。決勝のスタートドライバーに任命したのだ。

スタート直後は、後続にオーバーテイクされていく状況が続いた。大嶋監督は「抜いていくクルマとの意思疎通だったり、経験を積んでいくしかないと思う。成長するきっかけになっているので、次のステージを期待したいです」と語り、予定になかった2度目のドライブを提案。

最後のドライバーも任された英輔選手は、計66周を走り切った。モリゾウ選手やチームの面々が出迎え、グータッチのシーンが印象的な28号車の戦いは33:20から

モリゾウとライバルたちのタイムバトル

32号車はDAT(Direct Automatic Transmission)のGRヤリスで参戦。なお、24時間耐久では水素エンジンのGRカローラで出場予定となっている。

こちらの楽しみは、チーム内でのドライバー同士のバチバチバトル。“永遠のライバル”であるモリゾウ選手と小倉康弘選手は、予選のタイムアタックから意地の張り合いを見せていた。

安定したタイムの伸びを見せて、「67歳まだ進化し続けます。世の中のシニアの皆さん 頑張ってください」と話していたモリゾウ選手。それを上回った小倉選手は「息を止めて走っていました。(勝つために)手段は選びません」とうれしそう。決勝のタイムはモリゾウ選手に軍配が上がり、今回は痛み分けとなった。

次戦の富士24時間では、さらにヤリ-マティ・ラトバラ選手に加え、近藤真彦選手がドライバーとして久々にレースに参戦する。楽しみが増すばかりのタイムバトルの模様は42:58から

チームワークでST-Xクラス連覇へ

ルーキーレーシングの3台目は、ST-Xクラスに出場。AMG GT-3は昨年のチャンピオンで、今年から1号車となった。

ナイスコンビネーションを見せたのが、新加入のジュリアーノ・アレジ選手とジェントルマンの鵜飼龍太選手。予選では2人とも速いタイムを出すことが重要だが、見事にポールポジションを獲得した。決勝でも、途中2位になりながら残り約30分で逆転し、開幕戦を制した。

ジュリアーノ選手は「全体的にチームワークがすごいバッチリだったからうれしいです」、鵜飼選手は「ジュリアーノさんがいつも心強い。『大丈夫だよ、僕が頑張るから』と言ってくれるんで、安心して自分は走れます」とお互いを称えていた。

映像を見ていた坪井選手は「2年前にジュリアーノとスーパーGTでコンビを組ませてもらったけど、あんな頼もしい言葉は1回もなかった」とうらやましがっていた。チームワークで連覇に挑む1号車のドラマは52:15から

タイヤの削りカスを縁石で落とす? プロの隠れた技術

森田京之介キャスターが気になったのは、鵜飼選手がインタビューで語っていたタイヤのピックアップ(カス落とし)の技術。スーパー耐久のように走る台数が多いレースでは、時間が経つとコースにタイヤカスが落ち、それが付いたタイヤのグリップが悪くなる。

タイヤカス落としが上手とされる坪井選手は「プロはみんな、それなりに落とせると思います。落とさないと、ずっとタイムが遅いので」と説明。山下選手は「わざとフロントタイヤを滑らした状態でガタガタの縁石に乗るとかしていくことで削れていく。ドライバー間で技術的な差があるので、そういうところも見てもらえると」と語った。

両選手によると、スーパー耐久ではレース中に知り合いのドライバーと出会ったら合図をすることが多く、2人はウィンカーでコミュニケーションをしているとのこと。レースを見る時の注目ポイントになりそうだ。

5月は坪井・山下コンビが富士で激走!

クルマごとの人間ドラマを見てきた今回の放送だが、ゲストの坪井選手と山下選手にも熱いドラマがあった。2021年のスーパーGT開幕戦で、2人は約40周にわたるバチバチのバトルを繰り広げた。穏やかな印象の坪井選手が、無線で熱くなっていたそうだ。

そんな同い年の2人はコンビで今季のGT開幕戦を優勝し、放送の2日前も鈴鹿からの帰りに伊勢エビを2人で食べたという。坪井選手のXにはその時の模様がアップされている。

仲良しコンビが連勝を目指すスーパーGT第2戦は富士で5月3・4日。そしてスーパー耐久の第2戦は富士24時間、5月24~26日に開催される。トヨタイムズでも生中継を予定しており、坪井選手や山下選手らドライバーたちの出演にも期待していただきたい。

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。ゴールデンウィークは1週お休みして、次回(2024年5月10日)は男子バスケットボールを特集する。5年ぶりの優勝を目指してポストシーズンに臨むアルバルク東京。放送日の夜から始まるチャンピオンシップの見どころや選手の意気込みなどを紹介する。ぜひ、お見逃しなく!

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