5年後、10年後も働き続けられる職場へ。正面から労使向き合う形で開催された労使協議会。職場ごとに異なる課題が浮かび上がってきた。
5年後、10年後の働き方をつくっていくために
それぞれの現場で対話を重ねてきたからこそ見えてきた職場の実態。それらは一律にリソーセスを増やせば解決するものばかりではない。東本部長は「人事の仕組みなどを柔軟に変えていかないといけない」と話す。
5年後、10年後も魅力ある職場であるために、ここまでの議論を受けて、佐藤社長、河合おやじ、鬼頭委員長がそれぞれ総括した。
佐藤社長
本日は本当に真剣な議論ありがとうございました。組合の申し入れでもある持続的な成長に向けて議論ができたと思います。
特に職場の実態についてさまざまな声をいただき、これから議論して深めていくべき課題がたくさん見つかったと思います。
私自身はプロジェクト、あるいは、生産に関する前提を見直すことで、「踊り場」をつくると申し上げました。
ですが、今日の渉外広報の職場の実態に、それらを踊り場のトリガーとしても、踊り場にならない部署があることを改めて強く認識しました。
職場ごとに状況が異なっていることにもっと真剣に向き合っていかなければ、会社全体として踊り場をつくることにならない。
そういう職場がたくさんあると思いますが、声を上げていただいた渉外広報の職場の実態から、担当役員に任せるのではなく、会社として対応を考えていきながら、それに類する職場が他にないかどうか、それぞれの職場に向き合った行動をとっていきたいと思いました。
また、前提条件や背景の説明不足、共有不足による過剰な現場の反応というようなことは本当に多く起きているんだろうなと思います。
できれば次回、幹部職の皆さんの本音も、この場で共有しながら、どうやって変えていけばいいのか、行動につなげていければと思います。
今日の議論を踏まえ、トヨタは本当に現場力が強い会社だと再認識しています。
厳しい中でも、本当に一人ひとりが頑張ってくれているから、なんとか回っている仕事が多いんだろうなと改めて感じました。
現場の皆さんの頑張りに改めて感謝を申し上げたいと思います。
その頑張りの後ろには販売店、あるいは、仕入先の皆さまの頑張りがあって、550万人の仲間に支えていただいているからこそ、今があるということも感じました。
今の収益は、そういう仲間の全員の頑張りによるものと再認識いたしました。
一方でこの状態がこれからずっと続けられるか、今こそ考えなければいけないと思います。
5年後、10年後を見据えて今の仕事を考える。言い換えるならば、10年先の働き方を、今つくっていくことが大切だろうと思います。
豊田会長が14年かけて築き上げてきた経営の基盤・土台があるからこそできることがあります。
そのチャンスを絶対に逃してはいけないので、話し合いで終えるのではなく、行動までつなげる。
サッカーで言えば、ボールをシュートまで持っていって初めて意味があると思うので、勇気を持って、みんなでやめかえを具体的な形にしていきたいと思います。
次回も足場固め、あるいは、職場の実態に対して、10年後の働き方をつくっていくために、今、何をすべきかという観点で話し合いをさせていただければと思います。
河合おやじ
今日、多くの職場の課題と、悩みながらも前進しようと、皆さんがやっていることがよくわかりました。
私たちは「一律」をやめたいと思っています。
持っている技能や特技も、やりたいこと、家族、趣味も、一人ひとり、みんな異なります。
それは働く職場も同じです。クルマづくりにおける役割も、ポスト長の経験も、人員、体制も設備も全て違います。人も職場も決して一律ではありません。
昔のように、ある程度決まった目指すべき形がある時代ではなく、それぞれ正解がわからない課題に取り組まなければなりません。
これまで、良いことはどんどん上乗せするというのが、トヨタとして当たり前でした。結果として、下の方へ行けばてんこ盛りになってしまう。
そして、(機能の)会議ごとに、安全、品質、原価、生産性、どれもが一番(大事)になる。
モノづくりは、安全・健康がベースで、その次が質・量・コスト。この順番を絶対に守らなければならない。これまでやってきたことを振り返り、何が問題かを労使で議論したい。
モビリティカンパニーへの変革、マルチパスウェイ。モノづくりも人も多様化する今、それぞれの個性と強みを生かして、一人ひとり、職場ごとに課題や未来へ挑戦できる。
それを阻害しているものが何かを本音で話したいと思います。
「風通し」とよく言います。下から風を入れても、どこかで蓋をすれば、上まで届かない。上から来たことも、途中で止まれば風通しは止まります。
私はこれまでいろいろな役職を経験してきましたが、自分がこの立場でいられるのは誰のおかげか。
それはすべて、自分の部下たちが仕事をやってくれたから。そこへ常に目を向ける。どのような立場になっても、自分を支えてくれている人たちを見ていれば、風は止まらないと思います。いろんな問題もわかってきます。
上を見たとたんに、風は止まります。長い経験でそう感じてきました。
このように一律ではない、職場ごとに多様な本音の話し合いができる労使関係の原点が、より一層大切だと思います。
職場で話し合いを重ね、現場で一緒に悩み、行動し続ければ、少しずつ未来はひらけていくことが、本日は確認できました。引き続き議論を進めていきましょう。
鬼頭委員長
河合さんからの「一律はやめるんだ」「人も職場も一律じゃない」というお話を受け、チームで支え合って、助け合って仕事をしていく大切さを、私自身も多くの職場で多くの方々から、学ばせていただいたことを、改めて思い出させていただきました。
これまでも様々な職場に伺い、皆さんと会話をする機会を設けていますが、みんなが笑顔で仕事ができている職場は、組合員、幹部職、基幹職問わず、しっかりとした対話を重ね、お互いを助け合って、チームで仕事ができていることが本当に多いと実感しています。
そうした職場を見るたびに、難しいけれど、対話を重ねていくことの重要性をひしひしと感じています。個性を活かして、多様性を強みに変えていけるような職場を、これから一つでも多くつくっていくために、私たちも引き続き、努力をしていきたいと思いました。
佐藤社長からは「5年後、10年後を見据え、今の働き方を本当に続けられるのか」「10年先の仕事の働き方を、今つくっていこうよ」というお話もございました。
みんなが本当に頑張ってくれているけれど、悲壮感漂う顔をしながら、仕事をしている。笑顔で仕事ができていない状態で、本当にいい仕事、誰かの笑顔につながるような仕事が本当にできるんだろうかと、本当に真摯に案じていただいて、投げかけていただいた言葉だと、私は受けとりました。
誰かの笑顔につながるものを提供していくためには、つくっている我々が、笑顔で仕事をしていく。同時に、トヨタがこれまで本当に大切にしてきた仕事のやり方、原点を見つめ直していこうとおっしゃっているんだなと感じました。
昨年は「多様な組合員の一人ひとりの成長につながるために何をしていくのか」ということに対して議論をしましたが、今年は働き方そのものをテーマに、働きがいや成長、やりがいといった観点で、どのようにこの足場固めの期間を使って、前に進めていくのか、徹底的に議論をさせていただくべきだと思いました。
本日議論させていただいた通り、ここ数年、各職場同士、本当に真剣に向き合ってきました。皆さんからも異口同音、お話がありましたが、本音の話し合いをしていくというのは、簡単なことじゃないんだと思います。
そして、すぐに答えが出せるものばかりでもないと思います。それでもお互いの立場に立って、“Iの視点”で声を投げ続けるのではなく、相手の立場に立って丁寧に向き合って、まずは話を聞く。これが本当に大事だと感じています。
次回の労使協では、本日議論しきれなかった課題や、ここ数年、労使で動いてきたからこそ見えてきた、職場や組合員が抱えている不安や懸念、苦しんでいる根深い課題も含めて、実態を率直にお伝えしていきたいと考えています。
労使で向き合って、解決に向けてどのように動き出していくのかという議論を通じて、職場に希望を感じられる話し合いにしたいと思っています。
次回の話し合いは2月28日に開催される。