連載
2022.04.28

#11「意志ある踊り場」

2022.04.28

それは2014年3月期の決算説明会の場だった。リーマン・ショック、リコール問題、そして、東日本大震災など、次々に降りかかる難局を乗り超えたトヨタに、アナリストたちは量的拡大を伴う反転攻勢を期待していた。しかし、トヨタが出した利益見通しは、市場の期待を下回るものだった。失望売りが広がってもおかしくない状況だったが、そうはならなかった。それは、会見に出席した豊田章男のこんな発言があったからだと言われる。

「将来に向けて経営資源を振り向けられる今こそ、思い切った変革や将来の成長に向けた種まき、仕込みを積極的に進めていきたい」
「今期は『意志を持った踊り場』。『持続的成長』が一番の目的であり、一時の踊り場はあったとしても、その後の成長にどうつなげていけるかを重視している」

経営における「踊り場」を停滞期ではなく、中長期にわたって成長し続けるために必要な変革期であるというメッセージを届けた。
2022年3月9日、トヨタ自動車本社で開かれた労使協議会。挽回生産と急減産が繰り返され、「仕入先はもう限界」という声が経営側からも出る中、豊田は次のように返答した。

「今の状況は、もはや“危機対応”。こうした実態を踏まえ、足元の生産計画を現実に即したものに見直すことを正式に決定し、4月から6月を『意志ある踊り場』として、安全・品質を最優先に、仕入先の皆様の状況を踏まえた基準となる計画をつくり、健全な職場環境を整えたい」
8年ぶりに使われた「意志ある踊り場」。今回の「踊り場」をどういう「意志」をもって過ごすのか――。

「私たちは、リーマン・ショックの後の赤字転落、大規模リコール問題を経験し、お客様の信頼を失わないためにも、何よりも安全・品質を優先すること、現場を支える人財育成をおろそかにしないこと、その大切さを、身をもって学んだ。仕入先、販売店の皆様とともに、全社一丸となって、この危機を乗り越えていきたい」

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