最近のトヨタ
2024.02.22

「人も職場も一律ではない」 再び対面した労使 見えてきた課題

2024.02.22

5年後、10年後も働き続けられる職場へ。正面から労使向き合う形で開催された労使協議会。職場ごとに異なる課題が浮かび上がってきた。

生産現場における能率とは

技能系職場から共有された課題は、能率など数値目標に縛られた風土。

これに対して、生産本部の伊村隆博本部長はコミュニケーションの重要性を説く。

伊村本部長

モデル職場をつくったりしてきましたが、どうしても根底に能率・生産性があり、なかなか1歩を踏み出せない。

両立支援、職場体制に加え、コミュニケーション。いい職場をつくるためには、コミュニケーションがしっかりできていないといけない。

その中で、課題がある点は、改善できる仕組みにしなければいけない。そうなると、もっと余力を持って運用できるようにしていく必要があります。

能率・生産性は悪いものではないと思います。これはお互いに認識しておきたい。

企業が繁栄するためには、生産性をしっかり上げていかなければならない。ただし、能率・生産性は日々の改善項目を見つけるアイテムなんです。

人を減らすことを目的にしているわけではない。だから、今回は思い切って、阻害する要因をしっかり出し、実行する年だと思っているので、しっかり話し合っていきたいと思います。

光田聡志書記長は「数字は職場によって違うのに、一律に課せられるので、結果として(現場は)数字をつくりにいくような仕事をしてしまうことがある(一方で)目標があるからやれたこともあると思うので、突っ込んで話をしながら、いいところを見つけていくべき」と加えた。

納期遵守で引けないアンドン

続いては、プロジェクトの日程が最優先され、安全に対して不安があることについて。

「短いリードタイムで応援者への作業教育と並行して試作し 、メンバーの安全確保ができるのか」「開発日程優先で、モノを出すことになる現状は異常ではないか」といった現場の声を紹介。

納期遵守への意識が強く働くと、アンドンの紐を引きづらい実情を訴えた。

江下圭祐副委員長も「プロジェクトや全社の機能をまたぐものに関して、おそらくマネジメントも、誰とコミュニケーションを取ったらいいのかわからず、モヤモヤされている現状もあるんじゃないか」と補足。

モノづくり開発センターの渡辺元喜センター長は、現場側、マネジメント側双方の心情を推し測

渡辺センター長

現場側については、非常にモチベーション高く、やりがいと誇りを持ってプロジェクトに向き合っているので、異常があっても頑張りたい、プロジェクトを止めたくないというマインドがあると考えられます。

マネジメント側は、チャレンジをやり遂げたいという気持ちが強く出て、やれる方法をギリギリまで考え続けてしまう傾向があると思います。また、高負荷の対応や現場の悩みごとをタイムリーに聞けていない側面もある。

これからも新規開発のプロジェクトはやり続けなければならないで、マネジメントがもっと現場に出て、メンバーの不安や異常を感じ取るセンサーを磨き続けることがますます必要になってくると思います。

中嶋裕樹副社長は、マネジメントの立場から意見を述べた。

中嶋副社長

私自身も日程をプレッシャーとして与えている側だと思っています。

安全や品質が担保されていない状況でのリードタイムは、正しいリードタイムではないと思います。

現場に行って、異常がないかお互いが察することができる関係性でやっていかないといけません。

綺麗事かもしれませんが、そういった行動を1つずつやっていくしか答えはないのかなと思い悩んでいます。

短期日程に悩む現場の声は、ほかにも次のようなものがあった

誤解がないよう申し上げたいのは、組合員からも、会社の競争環境を考えたときに、短期開発そのものが悪いという声は多くはないです。

とはいえ、今置かれた目の前の状況に、1つでも失敗やミスがあった瞬間、マイルストーンを満たせなくなる不安もあって、苦しんでいるのではないかと考えています。

マイルストーンの管理を変えることは、昨年から佐藤社長をはじめ、多くのトップの方々から発信いただいており、なぜ我々は認識を変えることができないのか組合員と徹底的に議論してきました。

その中で、開発やプロジェクトなど、一つひとつの前提を共有できていないのではないかという課題が見えてきました。

その前提が現場のメンバーまできちんと共有されていれば、トラブルがあった瞬間に声を上げればいいとなると思いますが、その前提が共有できていない結果、L/O(ラインオフ:生産開始)の日程は絶対なんだという価値観を引きずっているのではないかと思っています。

クルマ開発センターの菅原政好統括部長は、開発現場のたたき上げとして、現場の安全第一を力強く呼びかけた。

菅原統括部長

「安全に不安を持ちながら仕事をしている」という話がありましたが、現場を預かる者としては、絶対あってはならないこと。

綺麗事だと言うかもしれませんが、安全第一の精神が崩れると、すべてが崩れていきます。安全すら守れなければ、品質や日程などを守れるはずがない。

安全第一。組合員、従業員を守るのは我々の使命の一番にある。

職場を預かる課長や幹部職などは現場に降りて、自分の目で見て、今日出たような話が(現場に)伝わるコミュニケーションをもっともっと本日からやってほしいです。

品質を守る人は「品質が一番」と言うかもしれません。組合員の方々からは「口では安全第一と言うけれど、実態はそうなっていません」という話をよく聞きます。

もう一度、原点に返るという意味で、安全はしっかり担保してからやりましょう。皆で取り組んでいきたいと思います。

RECOMMEND