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走れば走るほどCO2回収 水素カローラが新技術に挑戦 最終戦富士

2023.11.28

水素エンジンは市販化7合目へ。レーシングカーとして、公道を走る実証車として、さらに進化した姿をレポートする。

水素エンジンハイエースを実証評価

2022年6月の富士24時間レースで、トヨタは富士登山になぞらえて、水素エンジンの市販化までの現在地を4合目と表現した。

そのときに使われた模式図を見ると、7合目に「実証評価」という項目がある。

最終戦に先立つ10日、豪州では水素エンジンを積んだハイエースで公道走行の実証実験を開始したことが発表された。

これは、レースで鍛えてきた水素エンジンがサーキットを飛び出し、日常の生活・ビジネスシーンで使われるようになったことを示している。

水素エンジンハイエース。写真は日本で公開されたもの。豪州では10月23日よりビクトリア州で実証を開始。建設会社、警備会社などで使ってもらい、課題を洗い出していく。エンジンサイズこそ違うが、水素カローラの異常燃焼を抑制するための技術や知見が生かされているという。

このハイエースでは、従来のエンジン車と変わらないパッケージの実現にチャレンジ。荷室のサイズ、乗員の数はそのままに、航続距離は200km前後を確保した。

レースは、エンジンの高出力・高回転領域を多用する非常に厳しい環境だ。しかし、商用車として使ってもらう場合は、さらに違う性能が求められる。

走ったり、止まったりを頻繁に繰り返すほか、空の荷室に重い荷物を積んだりと、負荷が急激に変わることもある。

それを、「世界の道の8割が存在する」と言われる豪州で試し、データを収集しながら鍛えていく。

豪州で実証実験を行う意義は、トヨタイムズニュースで詳しく紹介されているので、ぜひ視聴いただきたい。

もう一つ、公道を走るうえで必要なのが排気の法規対応だ。水素は燃やしてもCO2は出さないが、NOX(窒素酸化物)は出てしまう。

これを抑えるために、実証車両にはディーゼルエンジンにも搭載している尿素水を使った後処理装置を装備。

ユーロ6(自動車の排出規制値を定めたEUの規定)を満たす性能を確保した。

上が水素の、下が尿素水の充填口。双方を近くに置くなど、市販化を見据えてユーザーの使い勝手にもこだわった

従来のエンジン車と変わらない使い勝手を実現しているとなると、期待されるのは航続距離の伸長である。

取材の場で、報道陣から質問を受けた中嶋裕樹副社長は、航続距離を伸ばす技術として、(現状の円筒型ではない)異形タンクやハイブリッド化という選択肢の可能性にも言及。

また、水素エンジン車のコストを下げるには「量が大事」と強調し、「初めに商用車でやってみて、そのインフラを乗用車がうまく活用して、どんどん広がっていく構造に持ち込みたい」と意気込んだ。

アジャイル開発 さらに加速

2023年シーズンは、燃料が液体水素になったり、公道での走行実証が始まったりと水素エンジンにとって、大きな節目の1年となった。

しかし、レースへの出場数を見ると、今季は昨季に比べて数が減っている。

気体水素で出場していた昨季は開幕戦から全7戦を戦ってきたが今季は3戦。その理由をGRカンパニーの高橋智也プレジデントはこう語る。

「昨年までは、どちらかというと制御を中心に手を加えて、出力を上げてきた側面がありました。ですが、今年はハードもどんどん変えて、軽量化にも取り組んでいます。モノづくりにはまとまった期間が必要です。そう考えインターバルを設けました」

確かにタンク一つとってみても、燃料が気体のときはFCEV(燃料電池車)のMIRAIのものを活用していたが、液体になってからは、部品の大半が専用品となり、一からモノづくりを行っている。

「その間に、GRヤリスも3回走らせてもらいました。次にアップデートするGRヤリスの商品力向上にもつながっていきます。モータースポーツを商品につなげるために、どういう活動にすべきか、今年はこだわってやってきました」(高橋プレジデント)

アジャイル開発もテーマや課題に合わせて柔軟に見直す。さらに、新たな技術を並行して試すなど、S耐での挑戦は広がりを見せている。

モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりは、さらに加速している。

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