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走れば走るほどCO2回収 水素カローラが新技術に挑戦 最終戦富士

2023.11.28

水素エンジンは市販化7合目へ。レーシングカーとして、公道を走る実証車として、さらに進化した姿をレポートする。

進化2:航続距離の伸長

2つ目の進化は航続距離だ。最終戦の会場となった富士スピードウェイは、液体水素カローラの初戦となった5月の24時間レースの舞台でもあった。

当時は1回の給水素で最大16周だったが、今回は20周と半年で25%伸びた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

技術的なポイントは3つ。1つ目は燃料残量の測定精度アップだ。

-253℃という極低温の液体水素では、通常の燃料タンクに用いる液面センサーが使えない。したがって、液体と気体が帯びる電気量の差をとらえて液面を検出している。

しかし、境界層が曖昧になりがちで、燃料を満タンにしたつもりが満タンになっていないという事態が度々発生していた。

まだ、改良途中の技術ではあるが、その曖昧な部分が徐々に見える化されてきたことで、多くの液体水素が積めるようになった。

2つ目はタンクへの入熱の低減だ。-253℃を保つ液体水素タンク。しかし、ポンプとの接合部など真空層が途切れる部位からの入熱は避けられず、一定量生じるボイルオフ(気化)水素はタンク外に逃がさなければならない。

しかし、気化したといっても、水素は-200℃ほどの超低温。これを有効利用する方法を考案した。入熱箇所付近を水素が通って出ていくよう、進路を工夫することで、ボイルオフの進行を弱め、走行に使える液体水素を稼ぐことができた。

3つ目は走行時の燃料噴射量の適正化だ。気体水素でレースに出ていたころから継続して向き合ってきたテーマで、アクセルが全開でないときの噴射量の改善に取り組んでいる。

進化3:軽量化

水素エンジンの進化の3つ目は軽量化だ。7月のオートポリス(大分県日田市)のレースからは50kgも軽くなった。

これには液体水素タンクをつくり直したことが効いている。

タンクは断熱のため、真空二重層構造としているが、十分な安全性を確認したうえで、外側の板厚を薄くする改良を施した。

他にも、仕入先と一体となって、さまざまな軽量化に取り組んだ。アイシンが開発したタンクのボイルオフガス弁と第一安全弁もその一つだ。

ボイルオフガス弁は自然に気化していく水素を逃がすため、定常的に作動するもの。

他方、第一安全弁は、万が一、タンク内の圧力が異常に上昇した場合に圧力を逃がすためのもので、基本的には作動することのないバルブだ。

アジャイルに進められてきた液体水素システムの開発当初は、タンクの形状や運用圧が定まる前に、部品の設計を走らせなければならず、考え得る最悪のパターンに対応できる安全しろをとっていた。

しかし、開発が進む中で、安全を担保したうえで、部品の構造や肉厚で軽量化できることがわかってきたため、ボイルオフガス弁は74.5%、第一安全弁は50.7%ものダイエットを実現した。

この他にも、仕入先と一体となった1g単位の改善を積み重ねて、シーズン初戦と比較すると、100kg程度の軽量化が図れた。

進化4:エンジン性能の向上

4つ目の進化はエンジン性能の向上だ。液体水素の場合、燃料をくみ上げるポンプの性能がエンジン性能に直結する。

ポンプの改良が進み、安定して高い圧力で燃料を送り出せるようになったことで、最終戦では、気体水素のときに達成した出力に追いついた。

これはすなわち、ガソリンエンジンと同等の性能になったことを意味している。

進化した水素カローラに乗ったモリゾウこと豊田章男会長は「今年の富士24時間レースの予選タイムより、今回の予選タイムが(1周で)2秒短縮している。私の技能も上がっているが、クルマがそのくらい進化しているということ」とその改良幅を表現した。

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