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現場に息づく「もっといいクルマづくり」への想いが、不可能を可能に!?

2023.09.15

新しいセンチュリーの開発責任者およびチーフデザイナーによる開発インサイドストーリー。今回は、実車を前に「継承と進化」についてさらに掘り下げていく。

1967年に初代が登場して以来、日本を代表するショーファーカーとして、皇室をはじめ多くのVIPの移動を支えてきたセンチュリー。その一員として、この9月に新たなモデルが追加された。

今までと全く異なるフォルムでありながら、一目でセンチュリーだと感じさせるスタイリングをまとって登場した同モデル。

その開発インサイドストーリーについて、開発責任者の田中義和、デザイン全体のまとめ役を担ったデザイン部部長の園田達也という2人のキーパーソンに聞いた。

今回は実車を前に、田中や園田たちが新しいセンチュリーにおいて何を「継承」し、何を「進化」させたのか、具体的に掘り下げていく。

部署の垣根を越えて実現させたセンチュリーネス

「威風凜然」というコンセプトのもとデザインされた新しいセンチュリーの外形デザイン。セダンとは一線を画すフォルムではあるものの、誰が見ても紛うことなきセンチュリーだと感じさせる。

随所にあしらわれた鳳凰エンブレムを見ずともセンチュリーと感じられるのは、水平・垂直を基調とした堂々とした佇まいや、ボデーサイドに施された几帳面 など、歴代のセンチュリーによって築かれた伝統=センチュリーネスを新しいセンチュリーが継承しているがゆえだろう。

※平安時代、室内の仕切りや目隠しに使われた屏風や障子などの屏障具の柱にあしらわれた面処理の技法

園田とそのチームは、新しいフォルムに挑戦しつつも、センチュリーネスを継承するために、無数のデザインスケッチを描き、クレイモデラーが外形をつくり込む期間も、他のモデルより長期に及んだ。

そんな園田が、もっともこだわったのが、プロポーションとフロントグリルだという。

園田

ショーファーカーとしてのシルエット、後席スペースに焦点をあてたプロポーションにこだわり、全体として「凜とした佇まい」を表現しました。

フロントグリルは、セダンと同様、日本建築の伝統技法である組子細工をモチーフにしていますが、今回はアクリル新素材を採用することで、さらに進化させました。

アクリルの上部が塊で、下部にいくにしたがってハニカム状の形状に奥行き感が出る つくり込みのグラデーションにこだわりました。

また、見る位置や距離で表情を変える、光のうつろいを感じさせるデザインに仕上げています。

このグリルは、いわゆる「継承と進化」をうまく表現している意匠だと思っています。

園田によると、このアクリル製グリルは当初、実現不可能だと思ったという。形状が非常に凝っているため、アクリルを成形するのが困難だったからだ。ところが、協力会社である豊田合成との協業により、なんとか実現できた。

新しいセンチュリーでは、このように社内外を問わず生産技術サイドの協力を得て実現できた意匠や機能が、枚挙に暇がないという。

園田

ピラーサイドのシャープなキャラクターも通常のプレスでは再現できない鋭い角度でしたが、プレス生技担当者はこのデザインを見て、国宝にも指定されている平安時代の名刀「三日月宗近」のディテールから着想し試行錯誤しました。

その結果、プレス加工にレーザー加工を合わせて成形する工法(量販車初)を編み出し、なんとか課題を克服することができました。

デザイン、設計、生産技術、匠の技──全ての関係者が一丸となって開発したからこそ、新しいセンチュリーの意匠が実現できました。

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