自動車業界を取り巻く7つの課題解決へ、正副会長がオーナーシップをもって進める自工会。会見では業界を横断した取り組みが語られた。
2024年3月22日、日本自動車工業会(自工会)の記者会見が開かれた。
自工会は今年1月、豊田章男前会長(トヨタ)からタスキを引き継いだ、片山正則会長(いすゞ)を中心とする新体制が始動。
新体制最初の会見となったこの日は、片山会長のほか、6人の副会長も出席。昨年11月に設定した、物流の2024年問題など、自動車産業として特に注力すべき「7つの課題」に正副会長がオーナーシップをもって取り組んでいることが説明された。
オールジャパンで取り組み加速
冒頭のあいさつで片山会長は、副会長らを中心に、自動車業界の枠を越えてオールジャパンで課題に向き合っていると語った。
片山会長
まずは、本年1月1日に発生いたしました能登半島地震により犠牲となられました方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災されました全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。
いまだ避難生活を余儀なくされている方々も多数いらっしゃいますが、被災された地域の1日も早い復興復旧を、心よりお祈り申し上げます。今後も引き続き経済産業省や国土交通省様を初めとした国、そして被災された地域の自治体の方々とともに連携して、被災地域のニーズに基づいたご支援を行っていきたいと思っています。
本年1月より豊田前会長よりタスキを受けまして、自工会の会長職に就任しましたが、100年に一度と言われる自動車産業の大変革期において、カーボンニュートラルの実現や、物流の停滞が懸念される2024年問題など、さまざまな課題に正面から向き合い、副会長や理事の皆様方と一致協力し、全力でこの難局を乗り越えてまいる所存です。
また、会員企業の下請け法違反の勧告を受け、公正取引委員会から下請け法違反行為事例を周知し、違反行為の未然防止を促すとともに、今後の価格転嫁に関わる法令順守のあり方について原価低減要請のあり方等を検討し、業界全体の取引適正化を一層推進するように要請がありました。
自工会としても大変重く受け止めており、本日の理事会にて一層の適正取引の浸透に向けて、早急に法令遵守状況の緊急点検を行うなど、全会員企業で再発防止の取り組みを徹底することを申し合わせました。
あわせまして、公正取引委員会による調査で、協議を経ない取引価格の据え置きなどが確認された事業者として会員企業名が公表されました。
自工会としましても、(日本)自動車部品工業会とともに連携して、価格交渉における明示的な協議の実施や、労務費転嫁指針に則した価格転嫁をしっかりと図っていくなど、全会員企業への浸透を徹底していきます。
春闘交渉の結果についてですが、先日結果が概ね揃いました。自動車産業では、これまで厳しい経済下でも雇用を守りながら、大手製造業の平均を上回る水準の賃上げを継続してきました。
今回の交渉では、特に物価動向を重視した賃上げに取り組み、ほぼ全ての会員企業で満額回答を行いました。物価上昇が続く中、自工会各社は「成長・雇用・分配」に積極的に取り組むとともに、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁が実現するよう、一層の取引適正化を推進していきたいと思っています。
そして7つの課題についてですが、自工会では自動車産業がモビリティ産業へと発展し、今後も基幹産業として日本経済に貢献していくために、向こう2年程度をスコープに注力すべき7つの課題を取りまとめています。
その中でも物流・商用・移動の高付加価値化/効率化の課題につきましては、私自身がオーナーとなり、物流の2024年問題に対し課題解決に向けたデータ連携や自動運転の実用化などを目指し、少しでも貢献できるのではないかと検討を進めております。
その他の課題につきましても、ここにお集まりの副会長の皆様方と一緒にオーナーシップで取り組んでいますが、各副会長にて取り組む課題の調和を図り、自動車産業の枠を越えて、経団連モビリティ委員会、企業様との連携や官邸との懇談会などを通じて、オールジャパンでの取り組みを加速していきたいと考えています。
私どもが直面している課題は多岐にわたりますが、メディアの皆様方におかれましては、今後とも自工会の取り組みに、より一層のご支援をお願い申し上げます。ありがとうございました。
続けて、副会長もそれぞれが取り組む課題と今後の抱負について説明した。課題ごとに各副会長のコメントを紹介する。