トヨタアスリートの活躍を支える部署には、元トヨタアスリートが多く活躍しているという。彼らならではのサポート方法やスポーツ文化の活用方法とは?
スポーツ強化・地域貢献部とは?
トヨタ自動車には、7つの強化部と26の一般部、あわせて33の運動部がある。そんな選手たちの華々しい活躍を裏方として支えるのが、スポーツ強化・地域貢献部という部署だ。今回は、同部の渡辺哲也と尾田賢典のふたりから、トヨタ自動車がどのような形でアスリートを支援しているのかを聞いた。
渡辺は日本代表にも選ばれた元ラグビー選手、尾田も男子マラソンの日本代表として世界陸上に出場した経験をもっている。トップアスリートとして活躍したふたりは、自身の経験を活かしながら現役選手をサポートしているのだ。ふたりの話は、アスリートのセカンドキャリアを考えるという視点からも興味深いものだった。
まず現在の業務内容を、同部のスポーツイベントグループ長を務める渡辺から説明してもらう。
2021年2月にこの部署に異動したばかりだという尾田は、地域貢献グループ主任という肩書をもつ。
かつてのトップアスリートはなぜトヨタに入社したのか?
現役時代にトップアスリートとして華々しい活躍を見せたふたりは、どんな思いでトヨタ自動車に入社し、現在に至るのか。まずは入社の経緯を尋ねてみた。大学生の頃からラグビー日本代表に選ばれていた渡辺は、いくつかの企業から誘いがあったという。
全国高校駅伝から大学時代の箱根駅伝まで、長距離の花形選手だった尾田にも、さまざまな実業団チームからの勧誘があったという。
職場の先輩や仲間たちのおかげで今がある
現役時代、渡辺は元町工場の工務部原価グループで、尾田は田原工場の組立部技術員室(引退後は工務部原価グループ)で働き、午後3時、4時から練習に打ち込む日々を送った。ただし、ふたりとも競技と業務の両立は難しかったと語る。まず渡辺は、現役時代をこう振り返る。
尾田も、日本を代表する長距離の選手であることと、納得できる仕事をすることの両立に悩んだ時期があるという。
現役時代には気づかなかったアスリートへの手厚いサポート
2002年に入社した渡辺は大怪我もあって4年で引退、2012年まで元町工場で勤務した後に、2013年からスポーツ強化・地域貢献部の業務に就く。2003年入社の尾田は、2014年まで現役生活を続け、その後も田原工場に勤務、2021年にスポーツ強化・地域貢献部へ異動となった。
アスリートを裏方として支える立場になってみると、現役時代には気づかなかったことが見えてきたと、ふたりは口を揃えた。渡辺は言う。
元アスリートだからできること、やれること
現在、個人のアスリートをサポートする尾田は、現役時代の経験が大いに役立っていると語った。
この発言に渡辺は大きくうなずき、次のように言葉を続けた。
スポーツを通じた地域貢献のあり方
このようにアスリートをサポートするふたりは、さらに先を見ている。それはトヨタ自動車の運動部だけでなく、地域に貢献するという役割だ。たとえば2019年のラグビーワールドカップ日本大会にあたって、渡辺はレガシィ(遺産)を残したいと考えたという。
渡辺の取り組みは、地域貢献グループの後進にも引き継がれ、豊田スポーツアカデミーには今年から野球も加わり、今後他の競技にも拡大を考えている。また同じように、尾田も元陸上競技の選手としてのキャリアを、地域貢献に活かしたいと考えている。
スポーツが生み出す社内や地域の好循環
トヨタ自動車の運動部の選手として活躍し、そこで得た経験やノウハウを生かしてアスリートが思い通りに活動する環境を整える。さらには自社の運動部だけでなく、地域の活性化に貢献する。ふたりの話を聞きながら、こうした好循環が生まれていると実感した。
自分たちの仕事について、最後に渡辺は次のようにまとめた。
渡辺の言葉から、なぜトヨタ自動車というメーカーが運動部を持ち、それを支援するのかがわかるような気がした。アスリートをサポートすることは、最終的には、人々が明るく健康に暮らせる社会を作ることに寄与するのだ。
(文・サトータケシ、写真・小保方智行)
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