北の大地 士別試験場で行われている「もっといいクルマづくり」に潜入。厳しい環境の士別だから鍛えられることとは。
士別だからできること
これから力を入れたいと考えていることを尋ねると、大矢根担当部長はこう答えた。
大矢根担当部長
ランドクルーザーの開発に用いられる苛酷なオフロードコースのさらなる拡充です。
現行のランドクルーザーが世界的に高く評価いただいているのは、士別のオフロードコースの存在も大きいはずです。これからSUVの競争はさらに厳しくなるはずなので、絶対的な信頼性品質を備えた商品力を高める必要があります。
これだけの規模でオフロードコースを自前で運営できる場所はあまりないので、これからも士別の大きな武器になるでしょう。
最近はデジタルで開発する多様な領域が増えているという。そして、こういう時代だからこそ士別試験場の役割が重要になると、大矢根担当部長は続けて語った。
大矢根担当部長
士別試験場は10kmの高速周回路があり、充実したオフロードコースもあって、そこにデジタル技術を組込み走ることができます。
そのため、壊して、解析して、直すというサイクルが完結します。さらにレベルの高い開発が効率的にできるはずですし、もっと貢献できると思います。
町いちばんの士別試験場であるために
このように充実したコース設備を誇る士別試験場。
ここ3年は新型コロナの影響で出張者は減少したが、年間で延べ2万人がやって来る。
「クルマ屋」として地域で必要とされる存在、「町いちばん」の存在でありたいという想いを大切にしているという。
大矢根担当部長
我々は地域の皆さんに活かされています。冬期の除雪に地元の業者様にも入っていただくなど、地域経済にも少しでも貢献できればと思っています。
地域活動の一例として、士別試験場の敷地内での自然観察会をあげた。
大矢根担当部長
敷地には自然の河川が大きく4つ流れていますが、そこには希少なニホンザリガニやエゾサンショウウオが生息しています。士別市立博物館の学芸員の方と子どもたちを招いて、自然の豊かさに触れてもらいました。
ほかにも、春と秋には地元の方との懇談会を開き、士別試験場への要望を伺うなど、地域と共存共栄で一体になることを念頭に置いています。
最後に大矢根担当部長は、士別試験場の“マザー・テストコース構想”について語った。
大矢根担当部長
北海道内には部品メーカーも含めて同業他社のテストコースがいくつかあります。士別の利用価値をもっと上げて、他社の方々にも安全に使っていただける準備をしています。
実際に協業をしているスバルさんやマツダさんには3年前から使っていただいておりますし、士別をそういうフィールドにしていかなければと思っています。
約40年の歳月をかけて蓄積してきたノウハウを、トヨタ自動車のためだけでなく日本の自動車業界発展のために利用していただく。これからの士別試験場は、さらに大きな役割を担うことになりそうだ。
次回は、士別の冬季テストに潜入。
マイナス30度にもおよぶ厳しい環境の下、いかにクルマを鍛え抜いているのか、夏季とは何が違う?その真相に迫る。