本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は富士山の噴火!?
富士山は、どこから噴火するか。
この問いには「山頂」と答える人が多いが、答えは違う。過去の噴火口が「ふもと近く」に複数あるように、意外と民家の近くで噴火する可能性もある。
どこから噴火するかは分からないのだ。さらに過去の噴火周期からしても、富士山はいつ噴火してもおかしくない活火山。だからこそ事前の避難想定が重要になってくる。
Woven Cityの開発が進む静岡県裾野市では、溶岩の流れ方がなんと31パターンも想定されるという。また、多くの住民が暮らす須山地区では、溶岩到達まで24時間かかるとされていたが、調べ直すとたった2時間で到達するエリアもあったという。
こんな驚きのデータを解明し、住民に周知活動をしている部署があると聞き、我々はトヨタ東富士研究所を訪れた。
出迎えてくれたメンバーには、顔面に迷彩柄を塗りたくった男性や、富士山とギョーザをイメージしたゆるキャラ…。それらには“ある理由”があった。
なぜ、トヨタの社員ではない人が?
昨年3月、17年ぶりに富士山ハザードマップが改訂されたことで、富士山のふもとにある裾野市では、広域避難計画をつくり直す必要が発生。そこでトヨタが培ってきた技術が役立ったという。
未来創生センター R-フロンティア部 北浜謙一 主査
裾野市に「今だに課題として残っている」ものは「今まで解決できなかったこと」です。それを、トヨタの知見を活かして解決できないかと協業がスタートしました。
トヨタには、あらゆるシミュレーション技術があります。なかでも今回、マルチエージェントシミューレーションが役立ちました。「自動運転が普及する未来に、どれくらい渋滞を緩和できるか」を研究する技術として取り組んできました。
避難時の渋滞を“見える化”することから、官民一体の避難計画づくりはスタート。ここで、迷彩メイクを施した“マグマ大佐”が口を開く。メイクの謎は後半で明らかになるのだが、実はこの方、裾野市の職員である。
裾野市役所 危機管理調整監 山本泰男さん
裾野市だけではどうしてもICTの面で弱いため、避難計画策定にトヨタさんの申し出は大変ありがたかったです。しかもトヨタさんは、保険会社や研究機関とのつながりもあって、幅広い分析ができます。私たちだけではうまくいかなかったと思います。
トヨタのシミュレーションに「どこまで使えるか当初は疑っていた」と笑顔で話してくれた“マグマ大佐”さん。しかし、取り組みを続けるうちに確かな効果が生まれていく。裾野市長からはこのようなコメントも寄せられた。
村田悠 裾野市長
トヨタ自動車様の技術やノウハウを提供いただくことで、市だけでは難しいデータ分析や3Dシミュレーションによる可視化ができました。
この成果を、富士山火山避難訓練や小中学校の防災授業に活用させていただき、市民の防災意識も高めることができました。また、データに基づき政策立案をする市職員のスキルアップにもつながっています。
クルマ屋ならではの知見が、町のために活かされたこの事例。ただし、大きな問題があった。