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マイナス30度の世界がクルマを鍛える?!士別試験場の全貌に迫る

2023.03.23

北の大地 士別試験場で行われている「もっといいクルマづくり」に潜入。厳しい環境の士別だから鍛えられることとは。

冬はマイナス30度、夏はプラス30度、気温差は最大60度。

北海道北部の士別市に、東京ドーム約200個分の広大な規模を誇る士別試験場がある。

凍えるような寒さと、ひと晩で数十センチも積もる降雪量。極寒の世界だが、クルマを鍛えるという意味では絶好の条件なのだ。

今回は、トヨタのすべてのクルマを鍛え抜く、士別試験場を訪れた。

北の大地はクルマを鍛えるために不可欠

まずは、なぜこの士別の地が選ばれたのか。士別試験場の大矢根一仁担当部長に聞いた。

話は1960年代にさかのぼる。

大矢根担当部長

北海道のお客様から「冬場になるとエンジンがかからなくなる」というお話が発端だったと聞いています。そこで、寒冷地試験を行うことになりましたが、もちろん当時は士別試験場のような施設はありません。

販売店のヤードを基地としてお借りし、駐留隊と呼ばれた試験部隊がエンジンの始動性、暖房性能、ワイパー機能、足廻りの着氷の確認など、一般路の試験も並行してスタートしたそうです。

やがてクルマの電装品が充実し、お客様からの要望が多岐にわたるようになると、さらにレベルの高い寒冷地試験が必要となった。

そこで1979年に入ると、トヨタは旭川基地より60Km圏内と設定し候補地を探し始めた。

大矢根担当部長

候補地の条件はいくつかありました。気温がマイナス20度以下になる日がひと冬で15日以上、積雪が多くて冠雪期間が2ヵ月以上、そして高速性能試験のための直線コースが3km以上確保できる場所、という条件に合ったのが、ここ士別でした。もっといいクルマをつくるために、これほど適した環境はありません。

1984年に全長5kmの寒冷地周回路が完成、1987年には全長10kmの第一周回路も竣工。1992年には総面積930万㎡、200個の東京ドームがすっぽりと収まる広大な敷地の整備がほぼ完了した。

世界各地の再現路面で、クルマを鍛える

士別試験場は夏と冬とでは、まるで環境が異なるのだと大矢根担当部長はいう。

延べ人数で夏に1万人、冬に1万人の出張者を受け入れる士別試験場。

まずは夏の士別について教えてもらった。

大矢根担当部長

夏は主に12のコースを使いますが、世界的に見ても類がないのが全長10kmの第1周回路で、ここは速度無制限。実際に250km/hを超える走行テストを行っています。

1周回路の直線は4kmにおよび、バンクの傾斜角はなんと最大45度。日本はもちろん、北米やヨーロッパなど各地の路面も再現し、世界の道が集められている。

大矢根担当部長

1989年にデビューした初代セルシオが世界的に高く評価いただいたのも、このコースで高速性能を磨き上げ、200km/hオーバーからのブレーキテストなどで鍛えたからです。

当時のセルシオの広告では「このクルマのためにまず私たちがつくったのは、全周10kmにも及ぶ巨大なテストコースでした」というキャッチコピーのもと、士別試験場が紹介されていました。

より信頼性の高いクルマを開発するために昼夜を通して耐久試験を行う第2周回路。主に低速から高速域までの操縦安定性評価を行い、運転訓練の場としても使用する16kmの第4周回路。(=サーキットコース)

ヨーロッパの田舎道のアップダウンやうねり、日本では見られない舗装を再現し、乗り心地・振動・騒音などの評価を行う第5周回路。(=カントリー路)

運転訓練の場としても使用される第4周回路は低速から高速までさまざまな曲率のコーナーを備え、まさにサーキットそのもの

国内のマンホールや橋などの段差を忠実に再現した路面で、世界中のお客様に満足いただけるクルマづくりに日々取り組んでいるのだ。

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