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クルマ好きがどっぷりハマるエンジン音って何?

2024.07.11

クルマ好きを惹き付けてやまないエンジンの音に焦点をあてた新連載。第1回は「基本の"キ"」であるエンジンの仕組みと音の関係について解説。

マフラーが奏でる音

ところで、市販車からマフラーを外した、いわゆる直管仕様のチューニングカーの音をサーキットなどで聞いたことはあるだろうか。

排気系以外にもチューニングが施されているとはいえ、同じエンジンとは思えないほどの荒々しい爆音、まさにモリゾウが大好きな「音がいっぱい出るクルマ」になる。

現在市販車に採用されているマフラーの多くは、内部にある複数の部屋の中で排気を膨張・減圧したり、部屋を仕切る隔壁の反射や共鳴を利用したりして音を吸収する仕組み(多段膨張室型)を持つ。

マフラーの仕組み(多段膨張室型)

音を抑えるためのものではあるが、共鳴体を持つ点では楽器のような仕組みだから、その構造や素材によって音量の大小だけでなく、音質も変化する。

たくさんの空気を送り込むために、エンジンに圧縮した空気を送り込む方法を取れば、過給機による音も加わる。

レーシングカーやスポーツカーからの「シュパーッ」とか「キュロロロ」といった不思議な音を聴いたことがあるだろうか。

これらは、アクセルを踏んだり戻したりしたとき、排気の流れでタービンを回し、その回転で吸気側のタービンも回して空気を圧縮、過給するターボチャージャー装着車ならではの音だ。

ターボチャージャーの仕組み

「シュパーッ」というのは、アクセルを戻したときに過給して余った圧縮空気が抜ける音。

さらに抜けきらなかった圧縮空気がタービン側に戻ったときに「キュロロロ」と音が鳴る。

エンジンの種類が違うと音も違う?

ちょっと話を戻そう。前述の通り、より大きな力を得るためにクルマのエンジンは複数のシリンダーを有する。

そのため現在のクルマでは、この10年ほどでコンパクトカーの中心的エンジンとして躍り出た3気筒が最少、次に従来から多くの車種で搭載される4気筒、ドイツの自動車メーカーのみが搭載する珍しい5気筒、直列とV型、水平対向がある6気筒、ここからは特にマルチシリンダーといわれるハイパワー・高性能エンジンの世界で、8気筒、10気筒、12気筒がある。

それら複数のシリンダーがどう並んでいるかを表すのが、直列・V型・水平対向といった言葉だ。

クランクシャフトの上に1列に並ぶのが直列、クランクシャフトを中心にV字型に並ぶのがV型、左右に水平に置き、対向するシリンダーのピストンが逆相(例えば右方向に対してなら左方向)に運動する構造が水平対向型となる。

V型エンジンは2列のシリンダー列を持つが、この列をバンク、V字で挟んだ角度をバンク角と呼ぶ。

ではそれらが音にどう影響するのか考えてみよう。

まずシリンダーの数だ。乱暴に言ってシリンダーの数が多いほど滑らかな音がする。ここで思い出してほしいのは前述の4サイクルエンジンの仕組みだ。4サイクルエンジンはクランクシャフト2回転の間に1回燃焼(爆発)をする。

これをアイドリングより少し高めのエンジン回転数(1000rpm)で考えると、3気筒エンジンは1分間に1500回、4気筒なら2000回、12気筒なら6000回のビート(爆発音)を打つことになる。シリンダー数が多いほど細かくビートが刻まれ滑らかに、また前のビートと重なってより厚みのある音になる。

次にシリンダー数は同じでも並び方が違う、直列6気筒とV6気筒を比べてみよう。直6エンジンは構造上、「吸気と圧縮」状態のシリンダーと「燃焼と排出」状態のシリンダーが、常に対になって動く。

これによって起きる縦揺れと横揺れが振動を打ち消し合い、自らバランスを取っている。このことから直列6気筒エンジンおよび、直列6気筒を2バンク組み合わせたV12気筒エンジンは「完全バランス」と呼ばれ、振動から生まれる雑味のないクリアなエンジン音だといわれる。

エキゾーストマニホールド(配管)を集合させても、排気同士が干渉し合わずにスムーズな排気が可能となる。排気管の取り回しの自由度が高いことも澄んだ音につながる。

一方、V6エンジンは完全バランスを持たないため、縦揺れと横揺れが合わさってよじれるような振動が出てしまうため、振動を抑える構造が必要になるほか、構造上、部品点数が多くなることもメカニカルな音が増えてしまう要因だ。

V6エンジンはシリンダーを2列にすることでギュッとコンパクトになるが、V型に開いた構造のため、限られたエンジンルーム内でのスペースは少なく、配管の取り回しの自由度は低い。つまり抜けのいい音をつくる難易度が非常に高い。

次に、ちょっと不思議なのがV8エンジンだ。同じバンク角のV8でも、クロスプレーンとフラットプレーンという2種類のクランクシャフト形式のどちらが用いられているかによって、前者はアメリカンV8タイプの「ドロドロドロ」といういかつい音になり、後者はレーシングカータイプの「カーン」と抜けるような音がする。

クロスプレーン型とフラットプレーン型の違い

これはクロスプレーンのV8は、8気筒トータルでは等間隔で燃焼しているものの、片方のバンクだけで見ると不等間隔で燃焼することに由来する。

不等間隔で燃焼した排気は、配管内で干渉し合ってスムーズに抜けていくことができない。そんな空気のギクシャクした動きが、「ドロドロ」という音となって伝わってくるというわけだ。

ただいま取材進行中!

エンジンの形が変わると奏でる音も違ってくるのか。

ボクサーエンジンこと水平対向エンジン、レシプロエンジンとは構造の異なるロータリーエンジンについてもSUBARUやマツダに協力を仰ぎ紹介したいと思う。

ここで本企画ならではの録って出し、GRヤリス専用に開発されたG16エンジンの音をお届けしよう。車外音ではなく、ベンチで回して収録したエンジンそのものの音になる。ボリュームに注意して聴いていただきたい。

さて、この野趣あふれるむきだしのエンジン音が、どうやってより心躍るエンジンサウンドへと昇華していくのか。理想のエンジンサウンドを求める者たちの想いとともに、これからお伝えしていきたい。

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