クルマ好きを惹き付けてやまないエンジンの音に焦点をあてた新連載。第1回は「基本の"キ"」であるエンジンの仕組みと音の関係について解説。
ガソリン臭くて、うるさいクルマが好き
5月28日、SUBARU、マツダ、トヨタの3社は電動化時代に向けた新エンジンの開発について発表した。
そこでは、各社のトップがカーボンニュートラル社会の実現に向けた手段のひとつとして、エンジンにも重要な役割があると熱く語った。
そして半年前の1月12日、東京オートサロンでのモリゾウこと豊田章男会長が「普通のクルマ好きのおじさん」としてステージに立ち、このように話した。
モリゾウ
カーボンニュートラルへはバッテリーEVだけじゃないと、3年前から水素エンジンにも取り組んできました。
昨年は、液体水素に挑戦したり、ル・マンで走らせたり。なぜ、ここに力を尽くしてきたか?
それは、仲間と一緒じゃないと未来をつくっていけないからです。
(自動車産業)550万人の中にはエンジンの部品をつくっている仲間たちもたくさんいます。
日本を支え、これからの日本を強くしていく技を持った人たちです。
この人たちを失ってはいけません。
ですが、エンジンに携わる人たちは、最近、銀行からお金を貸してもらえないこともあるそうです。
そんなこと、絶対にあってはならない、なんとかしていきたいと思いました。
そこで、モリゾウは、トヨタに、あるお願いをしました。
カーボンニュートラルに向けた現実的な手段として、エンジンにはまだまだ役割がある!
だから、エンジン技術にもっと磨きをかけよう! そういうプロジェクトを立ち上げよう!
佐藤恒治社⾧以下、経営メンバーたちも、その提案に共感してくれて、新たにエンジン開発を進めていくプロジェクトが、トヨタの中で動き出しました。
この時代にエンジン? 逆行しているように聞こえるかもしれませんが、決して、そんなことはありません。
未来に向けて必要なんです。
エンジンをつくってきた皆さん、エンジンをつくり続けましょう!
また東京モーターショー2019のトークショーでは、どんなクルマが好きかと問われ、「僕はね、やっぱりガソリン臭くてね、燃費が悪くてね、音がいっぱい出てね、そんな野性味あふれたクルマが好きです」と本音を語ったことが大きな話題になった。
モリゾウをはじめ、クルマ好きを虜にするエンジン。その魅力のひとつが、サウンドだ。
音楽にも好きなジャンルがあるように、エンジン音の好みも人それぞれだ。
V型多気筒エンジンの「カーン」と甲高く抜けるレーシングサウンド。
小排気量の直列エンジンの「ブーン」という音。
「ドコドコドロドロ」というアメリカンV8や不等長ボクサーサウンド。
「バギバギバギ」というバブリング音や「キュロロロ」というターボのバックタービン音。
微かに聞こえるラグジュアリーカーのエンジン音で有り余るパワーのエンジンに想いを馳せる人もいる。
そんな、なぜか心に響くエンジンサウンド。次のページからその魅力を探っていく。