クルマ好きでも「気づかないデザイン」?奥深いUXデザインの裏側を公開

2023.02.24

あらゆる業界で注目されるUXデザインだが、トヨタのUXデザイナーが取り組んでいた驚きの内容とは。

クルマ屋のUXデザインとは

学生時代、美術大学でグラフィックを専攻していたUXデザイングループの多賀柊子は、こう話す。

多賀

自動運転化の先に、自宅のエンタメ環境を車内に再現することは、さほど難しくないんです。でも、モビリティのあるべき姿は、人それぞれ異なるはず。

クルマ屋として「なにか楽しいプラスワンの価値があって選ばれる」。そんなブランドでありたいですね。

コモディティ化ではなく、一人ひとりの愛車として、ユーザーにとって移動+αの価値を提供できるかが今後は重要。「人とクルマの新たな関係性のデザイン」にチャレンジしています。

あたり前ではあるが、何に幸せを感じるかは、人それぞれ違う。だからこそ、同じものを大量生産するのではなく、多様化に向き合い、多品種少量を量産にもっていく。これこそがトヨタが目指す「幸せの量産」なのだ。

「もっとクルマが好きになる」ことをデザインする

UXデザイナーたちは、日々、どんな体験をつくることができるかを追求している。

加藤主任

完全自動運転のクルマをマイカーとして保有したときに、そこに愛着って湧くのかな?という想いがあって。仮に運転しないクルマだとしても、何かしらユーザーが関わることがないと、そのクルマに愛着を持てないんじゃないかなと思っています。

上記のFine-Comfort Rideや、Concept-iといったコンセプトカーでは、人とクルマと新たな関係性のデザインに挑戦した。

加藤主任

「自動運転だからこその体験価値」をつくれないかと考えました。特にFine-Comfort Rideでは天井や足元を光で演出し、瞑想空間のような新たなリセット体験ができる仕掛けや、サイドウィンドウを使った新しいコミュニケーションの形を提案しています。

UXデザイナーが日々悩み、つくり出そうとしている体験デザイン。それは「もっとクルマを好きになる」ためのデザインともいえる。

クルマからモビリティへ大きく変化する時代だからこそ、多様なスキルを持つメンバーが融合し、総合的にデザインスキルを高めることが求められる。

市川

100年に一度の大変革期に、技術がどんどん進化していく中で、できることもどんどん増えていく。自発的に提案しないと置いていかれるような状況はすごく刺激的です。

「その空間を買うためにトヨタ車に乗ろう」みたいな感じになればいいなと思って。それがどんな空間なのか、早くに見つけたいし、絶対に見つけなきゃいけないと考えています。

終始、自分たちの役割を楽しそうに話すUXデザイナーたち。未来へとあらゆることが変わっていく。しかし、トヨタのデザイナーは「人を中心」に考えることはぶらさない。

心地よさや安全性の追求だけでなく、無意識のワクワクを掻き立てる。そして、常にクルマへの愛着が育まれるために奮闘する。

今日もUXをデザイナーたちは、試行錯誤しながら、誰よりも楽しそうに「まだない何か」を探求している。

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