本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は森の学校!?
リアルな場だから感じ取れる「多様性」
昨年参加し、今年もOGとして参加した3人の学生からは、人や場所が変わることで、心境にも変化があったと話す。
参加者OGの大学生 阿部桃子さん
普段はおしゃれして学校に行きますが、白川郷は寒くてそれどころじゃない(笑)。だから考え方や内面に目がいきます。場所が変わることで、ふだん都会にいるときと価値観も変わることに気がついて…。多様性について考えるキッカケになりました。
荒川緑さんは、最近、SDGsという言葉をよく耳にするものの明確に理解できず、正解を求めて参加したという。
参加者OGの大学生 荒川緑さん
知らなかった人に意見を話すことで、新しい視点が得られました。(大学と違って)年齢もバラバラで、いろんな出身地の人と焚き火を囲んで話すうちに、自分の考えが構築されていくことがおもしろかったです。
自然のなかだと本音で話しやすいし、違いも言いやすい。昨年の冬は、白川郷の真っ白な雪で悩みも浄化されたような気がします。
小久保樹さんは「オンライン上」ではなく「リアルの場」で議論することの意義を語る。
参加者OGの大学生 小久保樹さん
SNSは仲間もつくりやすいけど、対立も起こりやすい。対面だと人間味も含めて相手を知れるから、意見が違っても前向きに議論できるし気まずくない。この講座のように同じ場所に集まって語ることが大事だと気づきました。
いろんな体験で考えの幅が広がり、まわりの子どもたちにもSDGs を具体的に説明できるようになりました。
議論はいつも盛り上がり、露天風呂に場所を移してトークが続くこともあるという。
取材中にカメムシが飛んできたが「虫は苦手だけど、ここだと不思議と嫌じゃない」と3人は笑顔で話す。これも、場所が変われば受け止め方が変わる一例かもしれない。
成長は自分で感じづらいから…
今回の「SDGs担い手育成講座」の狙いを山田學校長が説明する。
トヨタ白川郷自然學校 山田學校長
人の成長はすぐには見えないし、自分では感じづらいもの。突然ではなく、いつかどこかで花が咲く。(多くのことを感じ取った)彼女たちの話を聞いて、少しは貢献できたかなと嬉しく思いました。
SDGsは義務ばかりです。だからこそ取り組みは楽しく。そのほうがゴールへ向けて協力されやすい。例えば多様性の大切さを頭で理解するだけでなく、実際に世の中のいろんな人に会い、いろんな意見があることを実感することで、初めて多様性を認められるようになると思います。
「SDGs担い手育成講座」でプログラムディレクター兼ファシリテーターを務めるのが黒坂真さん。プログラムには3つのポイントがあるという。
トヨタ白川郷自然學校 黒坂真さん
それぞれの感性や自分の言葉でSDGsを語れるようになることを目指し「実感」「納得」「本音」に重きを置きました。いきなり行動するのは難しい。だから自分がどうありたいか、どう生きていきたいか、今後の人生の軸や方向性が見つかる機会を届けようと考えました。
これだけ地域性も、世代も、考えも違った人たちが、一堂に集まって意見交換できる講座は全国でも珍しいと思います。
多くの人と接するなかで、いちばん嬉しかったことも教えてくれた。
トヨタ白川郷自然學校 黒坂さん
アウトドアクッキングというアクティビティ体験に3世代で参加いただいた時、80代のおじいちゃんが『人生でこんな楽しいことは初めてじゃ』と喜んでくれて、幸せな空間づくりに関われたことです。
魚を怖がっていた子が、素手で掴めるようになったり、翌年の参加時には捌けるようになったり。親御さんが子どもの成長を楽しみにしてくれていることも嬉しいです。
豊かな自然は、美しくもあり、厳しくもある。だからこそ日常では気づけなかった価値観に気づける。一人ひとりの意識が変わることこそが、未来を変える力になるのだ。
今日も白川郷の山奥で「自ら考え、行動する」ことができる人づくりは進む。