アジア最大のパラスポーツの祭典、第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)が閉幕。GTTAは、金メダル19個、銀メダル10個、銅メダル14個という結果に。ここではアスリートが生んだ数々の熱狂を振り返っていく。
日本で初めて開催されたアジア最大のパラスポーツの祭典、第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)が10月24日に全ての日程を終えて閉幕した。トヨタイムズスポーツは、開会式の生中継をはじめ、出場したGTTA(グローバルチームトヨタアスリート)の活躍を毎日お伝えしてきた。
最終日にはメダリストらが生出演。歓喜や悔しさを感じながらも、最後まで諦めずに戦い抜いた選手たちの姿を振り返った。
超人たちの挑戦と熱狂は、これからも続く!
パラバドミントン梶原大暉、200連勝に向けた最後の試練
大会の終盤に、信じられないような熱狂の光景が待っていた。パラバドミントンの車いす(WH2)のクラス、男子シングルス決勝で、絶対王者の梶原大暉選手が相手にマッチポイントを握られ、国際大会で6年ぶりに敗れる寸前まで追い込まれていた。
勝てば国際大会200連勝を達成しての金メダル。相手は梶原選手に次ぐ世界ランキング2位の選手だが、ダイハツの大応援団が心強い味方となって後押しする。第1ゲームを21-10で制し、記録達成の瞬間はまもなく訪れるはずだった。
異変は第2ゲーム、ダブルスを含む連戦の疲れからか、粘ってつないでくる相手に、苦しげな表情を見せる梶原選手。四隅を正確に狙うショットに狂いが生じて18-21。ゲームを落としたのは約3年ぶりだ。
第3ゲームもリードするも追いつかれ、逆転を許すと、場内は異様な雰囲気に。この時の梶原選手は、ラケットを振る右手に続き、チェアワークに欠かせない左手もつってしまった。腕を思うように伸ばせず、「負けを覚悟した瞬間が何度も何度もあった」という。
終盤は一進一退の攻防で、デュースの展開が続く。力を振り絞って相手のマッチポイントをしのぎきり、最後は相手コートの左奥ギリギリにシャトルが落ちて24-22。勝利の瞬間、梶原選手は両手で少しだけガッツポーズを取り、すぐにコーチの元に駆け寄った。
試合後のインタビュー、梶原選手の涙が止まらない。
「本当に負けると思ったので、たくさんの方に背中を押されて最後まで戦い抜くことができた。皆さんのおかげだと思います。とにかく勝ててよかったです」
王者にしか経験できない試練を乗り越えて偉業を成し遂げた、梶原選手の決勝のダイジェストはこちら。
観る人、仲間、そして伝える人も熱狂
閉会式の直前に生配信された熱狂ライブのゲストは、ダイハツのパラバドミントンの4選手。仲間たちも、梶原選手が負けるかもしれないという恐怖を感じながら声援を送り続け、勝利には涙したという。
最も泣いていたのは、200連勝の現場で実況で声をからしていた森田キャスターかもしれない。インタビュー後に「マジでかっこよかったよ、最高だ」と梶原選手にハグせずにいられなかったMCは、翌日の生配信でも死闘を思い起こし、目にはこみ上げるものがあった。
放送では、梶原選手が「ここでは負けられない」と踏ん張れた理由や、限界を迎える中での攻防などを深掘りして聞いた。都市対抗野球の始球式を任されてから交流のある硬式野球部からも、祝福のメッセージVTRが寄せられた。
藤原大輔、今井大湧、友寄星名にとってのアジアパラ
その他のダイハツの選手たちも、アジアパラでは数々の熱狂シーンを見せてくれた。
下肢障害(SL3)の藤原大輔選手は、ポーカーフェイスと積極的な攻めを巧みに切り替える戦術に、取材ディレクターも驚いたほど。2年前のパリ大会で敗れた相手に競り勝ち、喜びを爆発させたのが印象的だ。
「最後はもう何も考えないというか、記憶がなくて。自分の苦手ショットが決まりだしたんですよ。それって技術とかじゃなく、大きな大会になればなるほどパッションで乗り越えられるものがあるんだなと気づかされました」
上肢障害(SU5)の今井大湧選手は、愛知県津島市の出身。地元の声援を受けての銅メダルで、いつも以上のパフォーマンスが発揮できたそうだ。「 1分1 秒でも長くコートにいて楽しもうと臨みました。総合競技大会は5大会目でメダルを獲ったのは初めてで、自分の中で特別なメダルになりました」と振り返った。
車いす(WH1)の友寄星名選手は、20歳になったばかりで急成長中。準決勝で苦手な相手に敗れて銅メダルに終わったが、驚異の粘りを見せた。「声を出して自分を奮い立たせながら、死に物狂いで取った感じです。 2 ゲーム目を自分でしっかり取ることができたのは、今後の自分に活きていくので良かったです」と語る。
パラバドミントンの3選手の戦いぶりとコメントは20:06から。
あの半谷静香が表現できなかった「金」の感覚
大会序盤のハイライトとなる金メダルは、全盲の柔道家であるトヨタループスの半谷静香選手。パラ柔道の女子52kg級(J1)で、悲願の金メダルを獲得した。
決勝では、相手に先に有効を取られたが、得意の一本背負いで技ありを奪って逆転。残り時間が少なくなっても攻める姿勢を崩さず、相手の巴投げもかわして勝利した。
前回のアジアパラやパリ大会は、決勝で敗れて銀メダルだった。金メダルを手にした気持ちをインタビューで聞かれて、「純粋にうれしいと思ったのは初めてで。え、どうだったんだろう。すがすがしいかな? なんか正しい単語が浮かばないですけど」と話していた。
競技のときの感覚を、視覚の代わりに豊かなボキャブラリーで的確に表現してきた半谷選手が、うれしさと安堵が入り混じった感情を言葉でうまく説明できなかった。それでも、「たくさんの日本語、知っている人の声を聞きながらだったので、すごく勇気と元気が出ました」と、応援してくれた人々に感謝を伝える。
「相手を見失うことが今回は1回もなかったので、チャンスは絶対に来ると思っていました」と話す半谷選手。初めての金が、これからの成長につながっていくはずだ。
半谷選手のアジアパラでの活躍はこちら。
陸上は石田駆と石山大輝がメダル獲得
熱狂ライブの後半には、パラ陸上(T47)の石田駆選手が登場。100mでは4位に終わり、「一番出してはいけない結果だった」と悔しさをにじませていた。400mでは後半にキツそうな走りだったが、粘って3番目で入線。2着の選手が失格となり銀メダルを獲得した。
愛知県で国際大会が開催されたことについて、石田選手は「自分の競技人生のうちに次はやってこないと思っています。9年前にインターハイ予選が行われた瑞穂競技場で、アジアという舞台を味わうことができてメダルも獲得でき、本当にうれしかったです」と語る。
見据える先は、2年後のロサンゼルス2028パラリンピック。そのために必要なのは、まず自身が持つ日本記録の更新だ。「400mは47秒台が出せないとロサンゼルスで戦っていけないし、100mも10秒6台とかのレベルになってきた。この2種目でしっかり戦うことが大事なポイントだと感じましたので、冬季練習で磨いていきたいと思います」と意気込む。
クラス(T12)は異なるが、同じ距離を走ったのが石山大輝選手だった。100mでは銀メダル、走幅跳では銅メダルを獲り、最後の400mではゴール前で追い込みを見せて金メダル。試合後は「最後名古屋だから勝てたと思います」とインタビューに答え、生放送中もチャット欄に「三色ビンゴできました!」と降臨した。
GTTAが活躍! 金19、銀10、銅14
今回のアジアパラ大会で、アジア各国からのGTTAは、金メダル19個、銀メダル10個、銅メダル14個という結果を残した。パラ水泳の南井瑛翔選手は200m個人メドレー(SM10)などで、宣言通り3つの金メダルを獲ってみせた。
砲丸投のファイサル・ソルール選手(クウェート)は、パリ金メダリストの力を見せて優勝。座位バレーボールの横田利沙選手は、大会前に応援したアジア大会ビーチバレーボールの水町泰杜選手・黒澤孝太選手と同じ銅メダルを獲った。
パラフェンシングでは中国代表が圧倒的な成績を残し、特にグ・ハイヤン選手はサーブル・フルーレ・エペの三刀流で計7個の金メダルを獲得した。
これからのGTTAの試合の模様などは、Youtubeチャンネルの「熱狂ハイライト」で紹介していく。
心に刻まれる愛知・名古屋2026のレガシー
6年前の東京大会が原則無観客だった悔しさに始まり、2年前のパリ大会で感じたスポーツの昂ぶりを受けて、トヨタイムズスポーツはアジア大会とアジアパラ大会の熱狂をお伝えしてきた。
アジアパラの開会式では、セレモニーや選手団の入場、パラアルペンスキーの村岡桃佳選手らによる聖火台への点火などを、ノーカットで生放送した。
開会式の聖火ランナーを務めた河合純一スポーツ庁長官は、開催前にトヨタイムズスポーツのインタビューに答え、大会の意義などについて語った。その中で、自らがパラリンピックのメダリストという立場から、パラスポーツの楽しみ方について4つの観点を紹介していた。
(1)人間の可能性の祭典
(2)強さより、しなやかさ
(3)パラだから生まれる掛け算
(4)ハードじゃなく、ハート
限界に挑み続けるアスリートたちが生み出した数々の熱狂は、支える人、応援する人、今回のアジアパラに関わった全ての人々の心に刻まれた。ハートに残された熱狂はレガシーとなり、この先へとつながっていくはずだ。それは遠い未来ではない。今週末もどこかのスポーツ会場で、熱狂に触れるチャンスはやって来る。
涙を流しながら梶原選手の試合を実況していた森田キャスターは、以下のように大会を総括した。
「勝った負けたじゃない、心を動かしてくれる存在がアスリートであり、スポーツなんだというのをすごく思いました。そんなシーンをたくさん見せてくれたGTTA、全てのアスリートに最大限のリスペクトと感謝を送りたいと思います。本当にありがとうございました」
次回もパラスポーツ特集、南井瑛翔が登場!
愛知・名古屋2026を終え、YouTubeのトヨタイムズスポーツも毎週金曜日11:50からの通常放送に戻るが、アジアパラの熱は冷めていない。
次回(2026年10月30日)の特集には、3つ目の金メダルの直後に「まだまだ熱狂は続きます」と語っていたパラ水泳の南井瑛翔選手が登場。「日本でもっと伝えたいパラスポーツの力と可能性」と題し、その奥深さや知られざる可能性をあらためて探り、アスリートを食の面からサポートしている味の素株式会社の蘆名真平氏にも話を聞く。
これからもトヨタイムズスポーツは、熱狂と共にパラスポーツを応援し続けていく。ぜひ、お見逃しなく!