「問題意識はあったけど、進め方が分からなかった」。長年積み残された課題にトヨタと仕入先はどのように挑んだのか。
「どうしよう…」から「やれる!」に
かつてTPSの研修を受けたことがあった黒田社長。その時の経験もあって、最初はグル連活動への参加に不安があった。
黒田精機製作所 黒田社長
昔のトヨタ生産方式の指導会って、何というか、ものすごく負担というか…。改善後はすごくいいものが得られるんだけれども、そこに行くまでの負担がすごいというのを我々も少し経験していまして…。
トヨタさんによるTPSの指導と聞いたときには、ちょっと私も「どうしよう…」と思いましたね。
でも、今回は全くそういうことがなくて、本当にトヨタ、アイシンの方々も、うちの社員と一緒になって、改善に取り組んでもらって。時代が変わったと思います。
失礼ですが、これまではアイシンさんがお帰りになられた後、自分たちで維持できなかったんです。いったんはいいんですけど。
今回はそうじゃなくて、弊社の現状を見て、どうやって生産性を上げればいいか、私たちのレベルまでトヨタさんもアイシンさんも(目線を)合わせていただいて、一緒になってやってくださいました。
アイシンのグループ調達本部 調達統括部 仕入先体質強化支援室の苅谷祐之介室長も、「トヨタさん含め、すごく寄り添えるようになってきたのかな」と変化を感じ取る。
アイシン 苅谷室長
「こういうデータを揃えてください」、「こうやっておいてください」といって、これまでは定点観測しかやれていなかった。
それに対して、「このままではいけない」と考え直すようになって、どれだけでも入り込んで、寄り添っていくやり方に変えたとき、初めて仕入先さんからお声をいただけるようになりました。
「ありがとうね」「大変だったけど良かったよ」と言っていただけるようになって、我々も変化してきたかなと思っています。
活動を通じて現場の従業員が「自信を付けた」と語るのは、黒田崇裕 執行役員。
黒田精機製作所 黒田崇裕 執行役員
何か大きなことをやろうとするとき、初動にすごく力がいります。
その初動をトヨタさんにぐっと押してもらったことによって、「動くじゃん!(私たちにも)やれる!」となったんじゃないかと感じています。
養老工場内には、海外工場(タイ・メキシコ)の研修生や実習生、新入社員向けの教育エリアもあり、活動で得た知見も展開している。
黒田崇裕 執行役員は、「『変えてもいいんだ』みたいな雰囲気、『どうしたらもっと良くなるのかな』と自分で考えること。それが(改善の)推進力につながっているように思います」と力を込めた。
上から目線も下から目線もなく
今回、トヨタイムズでは2回にわたってトヨタと林テレンプ・アイシン(Tier1)、そして梅村工業・黒田精機製作所(Tier2)が、一緒になって改善に取り組んできた事例を、一部ではあるが紹介した。
最初はトヨタとの改善活動に不安を感じていた、それぞれの現場。
しかし、「膝をつき合わせて」(梅村工業・梅村恒次社長)、「(目線を)合わせて」(黒田社長)改善に取り組む中で、その不安は払しょく。結果が表れるとともに自信に変わっていった。
グル連活動に参加した各社の間には、豊田章男会長が言うような、「上から目線」も「下から目線」もなく、ただ目の前の困りごとに一緒になって取り組む関係が生まれつつあるようだった。