「カーボンニュートラル」と「移動価値の拡張」。新経営陣が示した2つのテーマを、一問一答で掘り下げる。
変革の根底にある強い意志
盛りだくさんの発表となった今回の会見。質疑も多岐にわたったが、最後の質問者が投げかけたのは、冒頭で紹介した極めてシンプルな質問だった。改めて口元を引き締め、佐藤社長は答えた。
――今回、さまざまな発表があったが、ズバリ、一番伝えたいことは?
佐藤社長
私から一番お伝えしたいのは「クルマの未来を変えていこう」という強い意志です。
モビリティ・カンパニーへ変革しようとさまざまな取り組みをやってきました。
その中で気づいたことは、やはり我々はクルマ屋であり、クルマが原点にある会社だということです。
クルマが好きで、その魅力を大切にしながら、付加価値を高めていって、より社会と一体となったクルマの価値を創造していく。
それは誰かがやってくれることではなく、今、正解があるわけでもなく、自分たちで汗をかいて探しながら、挑戦していくことでしか見つからないと思います。
自分の意志で未来を変えていく。それがきっと自動車産業、モビリティ社会の実現につながるはずだという想いを持って、これからグローバルトヨタ37万人の力を合わせて経営にあたっていきたいと思います。
続けて、佐藤社長の両脇に座る副社長2人の個性を掘り下げる質問が投げかけられた。緊張した雰囲気がふとやわらぎ、それぞれが想いを語った。
――新体制でチーム経営と語っているが、執行役員はどのようなクルマ好きなのか?
中嶋副社長
私はクルマを開発するのが大好きです。部屋には、大きな図面が何枚も貼ってあります。
この部品を変えると、今まで見たことないクルマができるんじゃないか? BEVでも、バッテリーの配置をこうしたら、どんな性能になるだろうか?
そういったことを考えるのが大好きで、若い人たちにも、クルマづくりを好きになってほしいです。
そういった想いはクルマを通じて、必ずお客様に届くと考えています。
宮崎副社長
クルマをお届けすることで、お客様に喜んでいただける。そのようなクルマ好きが、私の近くにはいっぱいいますし、私もその一人です。
これからも佐藤新社長を筆頭に、中嶋副社長のチームがいいものをつくってくれたら、我々はその価値をしっかり伝えて、お客様に喜んでいただく。
こういうサイクルを各地域CEOの皆さんと一緒に回していく。そんなクルマ好きのチームになっているのではないかと思っています。
宮崎副社長が回答を終えると、佐藤社長が再びマイクを手に。「正式な回答はそういうことですが…」と今度は表情を緩ませて、話を続けた。
佐藤社長
ご質問は「本当はどんなクルマが好き?」というもう少しプライベートなものなのかなと思います。
先日、入社式がありました。どのように新入社員を歓迎するか考え、我々が本当に乗っている自分の愛車を展示したんです。
会長として、モリゾウとして、マスタードライバーとして、多面的な豊田章男の愛車と一緒に我々も展示しました。
10、20年前であれば、クラウンがたくさん並んだ時代もあったと思いますが、一つとして同じクルマが並ばない。トラックから、スポーツカーまで多様なクルマが並びました。
そこでも、「我々はフルラインナップメーカーだ」と実感しましたし、多様化するニーズそのものが我々の愛車にも表れていると感じました。
一人ひとりがそれぞれのクルマ愛を持っている会社です。そういう多様性の中からイノベーションは生まれると思います。
今のチームの多様性、バラエティに富んだクルマ愛は、トヨタの柔軟性やイノベーションが起きやすい環境を示していると思います。