国内外から多くの注目を集めたトヨタの新体制方針説明会。壇上の佐藤恒治新社長が語ったモビリティ・カンパニーへの変革の道筋とは。
4月7日、佐藤恒治社長をキャプテンとする新経営体制による“これからの方針”を説明する発表会が開かれた。
佐藤社長は、目指すモビリティ社会のあり方を「トヨタモビリティコンセプト」としてまとめ、2本柱を示した。それが「カーボンニュートラル」と「移動価値の拡張」だ。
しかし、事後の報道では「2026年までにBEVを10モデル追加」「BEV販売台数を年間150万台に」といった数値を前面に出した報道が目立っていた。
たしかにそれらの数値も発表されたが、会場では、佐藤社長に続いて中嶋裕樹副社長と宮崎洋一副社長も登壇し、それぞれが商品軸と地域軸で、より具体的に「トヨタモビリティコンセプト」を説明している。
最後に再登壇した佐藤社長が「クルマの未来を変えていこう!これが、モビリティ・カンパニーを目指す私たちのテーマです!」と締め括った一連のスピーチを、トヨタイムズではノーカットでお届けしたい。
「商品で経営する」クルマ屋トヨタの一丁目一番地
佐藤社長
4月から、新体制がスタートいたしました。まず私からは、新体制の経営ビジョン、目指す未来について、お話ししたいと思います。
新体制のテーマは、「継承と進化」です。継承とは、自分たちのブレない軸を明確にして、未来に向かっていくことだと思います。
「もっといいクルマをつくろうよ」。これが、この13年間私たちが培ってきた最も大切な価値観です。
「現場」でクルマを語り、お客様の笑顔のために、必死に努力する。トヨタはこのクルマづくりの原点を大切にしています。
マスタードライバーでありモリゾウである会長の豊田とともに、もっといいクルマを追求し続けていくこと。
それが、これからも、「商品で経営する」クルマ屋トヨタの一丁目一番地です。
この写真は、私の最初の愛車です。私は、小さいころからクルマが大好きでした。
そして、トヨタでクルマづくりに長年、携わり、クルマづくりの楽しさを学びました。
その楽しさを多くの仲間に伝えたい。
そして、仲間と一緒にお客様がもっと笑顔になるクルマをつくりたい。だから、私は「クルマをつくり続ける社長」でありたいと思っています。
そして、もうひとつ、社長としてこだわりたいことは、「チーム経営」です。
クルマづくりはチームプレーです。世界37万人のトヨタの仲間と、仕入先、販売店の皆様と一緒に、全員でクルマをつくっています。このクルマ屋のチーム力を生かした経営を実践したいと思っています。
今のトヨタには、価値観を共有する、しかも個性豊かな経営メンバーがたくさんいます。
今のような環境変化が激しい時代は、肩書ではなく役割で、機能を越えて動くこと、それにより、何倍ものスピードで、実践の量を増やすこと。これが何よりも大切です。
だからこそ新体制では、「チームで、同時に、有機的に動く」新しい経営スタイルで、未来への挑戦を加速してまいります。
これから私たちはモビリティ・カンパニーへの変革を目指していきます。
トヨタの使命は、「幸せの量産」です。
美しい地球を守り、世界中の人々の暮らしを豊かにしたい。マイナスをゼロに、そして、ゼロを超えた価値を生み出したい。それがグローバル企業である私たちの想いです。
クルマがこれからも社会に必要な存在であり続けるためには、クルマの未来を変えていく必要があります。
クルマのライフサイクル全体で2050年カーボンニュートラル実現へ
佐藤社長
そこには、2つの大きなテーマがあります。
1つ目はカーボンニュートラルです。
私たちはクルマのライフサイクル全体で2050年カーボンニュートラルの実現に全力で取り組んでいきます。
クルマづくりにおいては、エネルギーの未来と、地域ごとの現実に寄り添って、マルチパスウェイを軸に、今後も、多様な選択肢を追求していきます。
まずは今すぐにできる電動化を、徹底的にやっていきます。足元から着実にCO2を減らすために、プラクティカルに電動車の普及を進めます。
新興国も含めてHEV(ハイブリッド車)の販売を強化し、PHEV(プラグインハイブリッド車)の選択肢も増やしてまいります。
重要な選択肢のひとつであるBEVは、今後数年で、ラインナップを拡充します。
同時に、将来への仕込みも大胆に進めていきます。そのひとつとして普及期に向けた次世代BEVの開発、新しい事業モデルの構築に全力で取り組んでまいります。
そして、その先の水素社会の実現に向けたプロジェクトも加速してまいります。
タイや福島での社会実装や、商用FCEV(燃料電池車)の量産化、そして、モータースポーツの場を活用した水素エンジン技術の開発など、産業や国を越えたパートナーの皆様と一緒に、水素を「使う」領域の拡大を進めていきます。
さらに、エネルギー産業と連携し、カーボンニュートラル燃料の技術開発も進めてまいります。
私たちは、新興国も含めて、誰ひとり取り残すことなく電動車の普及やCO2の低減に取り組んでまいります。
こうした全方位での取り組みにより、全世界で販売するクルマの平均CO2排出量は2019年と比べて、2030年には33%、2035年には50%を超える削減レベルを目指します。
2050年に向かってグローバルで、着実に、脱炭素を進めてまいります。
社会インフラとしてのクルマの新しい価値を提供
佐藤社長
クルマの未来を変えていくもうひとつのテーマが「移動価値の拡張」です。
これからのクルマは電動化、知能化、多様化が進んでいくことで、社会とつながった存在になってまいります。ヒトの心が動く、感動するというMOVEやヒトやモノの移動に加えて、エネルギー、情報のMOVEを取り込み、データでひとつにつながっていきます。
それにより、他のモビリティと連動したシームレスな移動体験や、社会インフラとしてのクルマの新しい価値を提供できるようになってまいります。
そして、社会とつながったクルマは、通信や金融など人々の暮らしを支えるさまざまなサービスとも密接につながり、モビリティを軸にした新しい付加価値の輪が広がってまいります。