2025年11月に行われたS耐最終戦。会場ではNASCARが走るなど、いつものS耐とは違うアメリカンな雰囲気でいっぱいになっていた。そんなモータースポーツを通した文化交流を取材した。
創設された「ST-USA」クラス
S耐最終戦では、NASCAR SHOWRUNだけではなく、レースでも新たなクラスとして「ST-USA」が創設された。
このクラスでは、アメリカ製車両およびチームの招聘を通じて、日米両国のモータースポーツおよび自動車文化の交流促進を狙うという。
さらに、従来のS耐にはなかったアメリカ製車両の魅力を通して、観客層の拡大や新規参戦チームの増加、国内外への発信力、国際的な耐久レース文化の普及推進とともに、日米の自動車産業連携の深化も目指す。
S耐最終戦では2台のクルマがこの「ST-USA」クラスにエントリーした。1台は アメリカのレースシリーズを開催する団体 International Motor Sports Association (IMSA)公認のマスタングチャレンジに出場するTechSport RacingのFord Mustang Dark Horse R。
もう1台が、SRO GT World Challenge Asiaにシボレー・コルベットで参戦しているBINGO SPORTSのCallaway Corvette C7 GT3-R。
S耐では見慣れない2台のアメ車が、レースにもアメリカンな風を吹かせた。
自動車関税のニュースが世間を賑わせた年に始まったモータースポーツの日米文化交流。メディアからは高関税下において、自動車文化を交流させる意味についての質問があり、豊田会長はこのように答えた。
豊田会長
(メディアのみなさんは)関税の話ばかりしていますが、関税がいいとか悪いとかではなく、自国の自動車産業を守りたいというのは、どこの国の長も同じだと思います。
どうやって守るかの手段の一つが関税で、関税をかけても、みんながWINNERになれる方法を我々は模索しています。
一番、WINNERになってもらいたいのはお客様。それでアメリカの政治家も、日本の政治家も、スポンサーも、それから、それぞれのステークホルダーも、自動車産業があってよかったと全員をWINNERにさせるような動きを、我々は始めたとご理解いただきたいと思います。
関税ばっかり話題になっている感じだけど、現場ではお互い基幹産業である自動車産業をこうやってちゃんと育てていこうよと。
これこそが安定的な雇用と、持続的な投資を生み出す。国にとっては、大変なビークル(手段)だと思うんですよね。
国のリーダー(にとって)は当たり前、今はそういう手段に来ているけれど、誰かだけをWINNERにするんじゃなく、お客様をはじめ、すべてのステークホルダーをWINNERにしたい。そういう動きの一つがこれだとご理解いただきたい。
さらに、この日米の交流は長期的に続けていくのかと聞かれると、このように説明を続けた。
豊田会長
そう思います。だから、そういう質問をしてくれて、本当にありがたいと思います。
何かやったら、すぐに正解がわかるものじゃないんです。自動車産業に期待されているのは、過去も現在も、そして、未来も国の支えになる産業であること。
それは雇用を生み、長期的な投資(をすること)でしょ。そのためには、ある程度の利潤も必要。
利潤を何に使うか、利潤のない世界は持続的じゃないですから、その使い方をメディアは監視すればいいのであって、利潤を持っていることをけなしたら、この国は終わりますから。それを何に使うか、ぜひ報じてください。