共に楽しみスーパー耐久シリーズ(S耐) ST-Qクラスに挑む自動車メーカー5社。第2戦、富士24時間の会見で各社の代表が語った未来にエンジンやモータースポーツを残すための挑戦を取材した。
ターボエンジンを残すために
SUBARU取締役 専務執行役員 藤貫哲郎CTOは技術進化のモチベーションはエンジニアが持つ負けん気だと説明する。
SUBARU 藤貫CTO
エンジニアってものすごく負けず嫌いなんです。やっぱり競争の中で、技術は進歩するんです。
僕はインプレッサWRX STIの運動性能開発をずっとやってきました。2001年に出した丸目の2代目をやっていましたが、あれを出した後、三菱 ランサーエボリューションVIIに、こっぴどくやられました(笑)
「これはまずい」ということで、1年後にインプレッサWRX STI スペックCでクルマのホイールベースを変えて、フロントのジオメトリーも変えたりしました。
そのときのモチベーションは、やっぱり「負けちゃいられない」ということでした。
レース活動は、やりたかったのですが、なかなか敷居が高く、自分たちでできるレースがありませんでした。
このST-Qが開始されて、「これはいいぞ」と思っていたら、偶然にもトヨタさんから声をかけてもらって、S耐に参加しようと決めました。
レースでは、クルマを鍛える意味もあるし、エンジニアを鍛える意味もあります。
会社のなかでは分からないんですが、レースをやると「この人、こんな特技を持っていたんだ」ということがいっぱい出てきます。
これからいろいろなことをやらなくてはならないなかで、レースを通した育成と人材発掘は、すごく意味があったと思っています。
S耐では2年間、BRZで戦ってきましたが、もっとリミッターを外してやって欲しかったと思っています。
次は、やっぱりSUBARUなので、ターボエンジンをいかに残していけるかにチャレンジしようと思います。
このまま規制とか、課題があっても「難しいね」でやめてしまうのではなく、本当に可能性はないかということを探るために今年はクルマを変えます。
本当は、この24時間レースに間に合わせたかったんですが、次回のオートポリスから水平対向ターボ、四輪駆動を鍛えて、将来にどうつなげていくかという活動にしていきたいと考えています。
伝説となった787Bと同じ55号車として挑むマツダ
S耐で走るMAZDA3 Bio Dieasel Conceptのゼッケン55番。この番号の意味についてマツダエグゼクティブフェロー ブランドデザインを務めるMAZDA SPIRIT RACINGの前田育男代表はこう説明した。
MAZDA SPIRIT RACING 前田代表
マツダは2台体制です。1台はMAZDA3のBio Dieasel Conceptで、もう1台はロードスターで参戦しています。
このMAZDA3のゼッケン55番というのは、実はル・マンで1991年に優勝したときと同じゼッケンです。
結構、重たいゼッケンを使わせてもらって30年ぶりにワークス活動を復活させたというのが一番大きなところです。
そういったことで、この共挑の5社の一員にしていただけていることは、すごく幸せだなと思っています。
レースの活動をするなかで、いくつかの考え方があります。そのひとつが「人を育て、技術を鍛える」。これをスローガンにしております。
CN技術や車両の運動技術をこういった速さを競うスポーツの場で鍛えるという意味はすごく大きいです。
くわえて、そこに毎戦マツダのトップエンジニアを20〜30名を連れてきているんですが、彼らの目つきが大きく変わってきました。
レースは瞬間的にいろいろなことを判断しないといけないですし、いろいろな引き出しを持っていないと、不測の事態が起こったときに対処できません。
このような緊張感のなかで、何日も過ごさないといけないのは、量産開発と相当違います。そういった視点でも彼らが育っていってくれているなと思います。