共に楽しみスーパー耐久シリーズ(S耐) ST-Qクラスに挑む自動車メーカー5社。第2戦、富士24時間の会見で各社の代表が語った未来にエンジンやモータースポーツを残すための挑戦を取材した。
60年間続く走る実験室
昨年2023年より参戦するホンダ・レーシング(HRC)四輪レース部レース運営室 桒田(くわた)哲宏室長はホンダのレースは常に「走る実験室」だと語る。
HRC 桒田室長
去年からS耐のST-QクラスにCIVICで参戦をさせていただいております。
これからのレースの持続性を考えて、CN燃料を使ったレースで技術的な開発、これからの課題を明確にして将来的に我々の市販車、あるいはレースの世界につなげていこうとスタートしております。
1964年にホンダはF1に最初に参戦しました。RA271というマシンで1.5リッターのV12という、今ではちょっと考えられないようなエンジンでチャレンジが始まった年になります。
それから、この60年間、我々はこのレースという場を「走る実験室」としてやってきています。
去年から参加させていただきましたS耐でも、実験室ということをしっかり、心に置いて、やってきています。
今年のマシンは60年前にF1に参戦したRA271の、日の丸のデザインをオマージュしたデザインとなっております。
ホモロゲなしでレースができるST-Qの魅力
日産モータースポーツ&カスタマイズ(NISMO)の石川裕造常務執行役員は、CN燃料の開発だけではなく、開発中の車両が他の市販車両とレースができることの魅力について話した。
NISMO 石川常務執行役員
3年ぐらい前に、Zがターボをつけて発売されました。そうするとモータースポーツに使いたいので、GT-Rで発売しているGT3とは変わってしまいますが、GT4クラスのクルマをつくろうとしました。
どうやって開発するかと考えたときに、ST-Qというちょうどいいクラスができていました。
レースをしながら開発できるじゃないかということで、2022年に何とかクルマを間に合わせて、24時間レースに参加させていただいたところが始まりです。
2022年はウイングとかがついていますが、量産車に近い形のクルマでまず出ました。
ドライバーもジェントルマンドライバーとプロのドライバーにも乗ってもらいました。
このレースで一番いいのが、ST-Qであれば、ホモロゲーション(自動車レースなどに出場する車両に必要な認可)が取れていなくても、もうできあがっているクルマたちとレースができることです。
2023年はアップデート開発として、いろいろな物を変えました。空力、冷却、シャシー、エンジン、コックピット、ほぼ全部を見直しました。そういうことがこのST-Qクラスでは可能です。
よくモータースポーツはアジャイル開発と言われますが、それが紙の上だけじゃなくて、レースをやりながらどんどんできました。
今年はGT4がリリースできたので、そのクルマをさらに改良していこうとしています。
それと、もう一つがCN燃料です。スーパーGTのGT500でもCN燃料を使い始めています。
やがて趣味でラリーを楽しむとか、スピード競技を楽しむとか、そういうところにもCN燃料をどんどん使っていくことが必要だろうなと思っています。
そのための勉強と、燃料自体の改良を皆さんがいるここで行っています。このCN燃料もだいぶ良くなってきていると感じています。