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液体水素車2年目3つの進化 航続距離は1.5倍に 第2戦富士

2024.07.02

液体水素カローラで臨んだ2度目の富士24時間レース。トラブルで長時間のピットインもあったが、クルマの進化には目を見張るものがあった。そのポイントを3つの観点でまとめた。

進化③CO2回収装置

もう一つの進化が、昨年の最終戦で導入されたCO2回収装置の改良だ。

基本的な仕組みの説明は割愛するが、川崎重工業が開発したCO2の吸着剤(アミン)が塗られたフィルターを使って、大気中のCO2をキャッチ(吸着工程)。そこに熱い空気を流すことで、CO2をリリース(脱離工程)させ、回収液に溶け込ませる(回収工程)仕組みだ。

昨年の最終戦では、ピットインのたびにメカニックが吸着と脱離のフィルターを手動で入れ替えていた。

今回は、この2つのフィルターを1つにし、フィルターの入れ替え作業をなくした。
新型CO2回収装置
従来型CO2回収装置

具体的には、フィルターを大径化し、分速2回転の速さでゆっくり動かす。フィルターの4分の3の面積にエンジンに吸い込む空気が当たるようにし、残りの4分の1にはエンジンオイルで熱した空気を当てる。

フィルターの回転により、CO2を吸着した部分が、熱い空気が当たる箇所にところにやってくるとCO2を放していく。これが走行中、連続的に繰り返されるので、CO2の回収率が上がるのだ。

今回のシステムでは、フィルター面積の拡大に伴い1周当たり4gCO2を回収。これは、従来型の2倍の量に相当する。

低燃費と言われるクルマでも、1kmを走行するのに100g程度のCO2が出るので、まだ微々たる量ではあるが、フィルターの吸着と脱離の面積や回転スピードを調整するなどして、環境への貢献を図っていく。

走れば走るほど、CO2を回収する。何かと悪者になりがちなエンジン車のイメージも変わってくるかもしれない。

“水素山”の先に見えたもの

水素エンジンの開発が進むたびに話題となるのが、「市販化に向けた現在地」だ。

昨年の最終戦では、水素エンジンを積んだハイエースの公道走行の実証実験が豪州で始まることが発表され、トヨタも「市販化7合目」と表現していた。

著しい進化を遂げた今季、進捗のアップデートへの期待が高まる中ではあったが、高橋プレジデントは「去年、『7合目』と話したが、実はそこが7合目だったかどうかも、今はわからない」と慎重だ。

「今までは“水素山”を登ってきたと思います。でも、今回の24時間レースで痛感したのは、“水素山”だけじゃなくて、いろいろな山を制覇しないと、もっといいクルマにはならないということでした。どこかの山を登り切ることがお客様にとってのいいクルマじゃないと言えるのかなと思います」

山を登ってみたからこそ、新たな景色に出会い、次の登るべき山が見えてきた。頂を目指すにつれ、厳しくなるのが山登りの常。一歩一歩踏みしめるように、地道な技術開発を重ねていく。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
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