トヨタ、ダイハツが会見を開き、ダイハツの新体制を発表。「企業をつくり直す覚悟」で刷新した経営陣はどのように同社を再生するのか。会見でのコメントを通じて迫っていく。
新体制で目指す両社の関係
――歴代社長はトヨタ出身者がたくさんいた。新たに井上社長が就任することで、トヨタとダイハツの関係はどう変わるのか?
ダイハツ 井上次期社長
先日、現社長の奥平さんとお話しする機会がありました。
トヨタ時代から、エンジニアと海外の事業・販売担当の立場で交流がありました。
奥平さんからは「ダイハツは技術力、競争力があって、本来は大変良い会社だ」というコメントがありました。
小型車、軽をつくる技術力、競争力の高さは、新興国に身を置く私も「こういうクルマがほしい」という実感をもっており、わかっているつもりです。
その中で今回の不正が起こりました。海外の小型車については、佐藤社長と会話をしながら、問題を再発させないよう改革をし、トヨタとダイハツの強みを合わせて、すべてのステークホルダーにとって良い方向になるよう進めていきたいと考えています。
――ダイハツの改革に向けては、トヨタとダイハツが深く連携していくことが重要。トップとしてどうコミュニケーションをとっていくのか?
トヨタ 佐藤社長
井上は地域CEOを務めており、トヨタの新体制が立ち上がった後、毎週のように会話を続けています。非常にフランクに話ができる関係です。
選任の理由ではありませんが、井上はいつも「迷ったら前へ」という、行動哲学を持っており、私とも非常に感覚が近い。まず行動することで課題と向き合い、解決していく人間です。
特に新興国をずっと担当していたので、認証関係に非常に明るく、今回起きていることに対しても、一定の理解を持っています。
ダイハツ 井上次期社長
豊田社長の時代から商品と地域の2軸で経営が進められてきました。
ほぼ毎週、地域CEOとトップが集まり、今起こっていること、将来起こりそうなことについて会話を続けています。週に30分は必ず話すという関係です。
リスペクトをしながら言いたいことを言い、現場で起こっていることを伝え、経営判断してもらってきました。
立場が変わっても、そうした平時のコミュニケーションを大切にしながら、有事に備える。これが大事だと考えています。
私は関西出身で、父が自営業をしていたこともあり、軽トラックでモノを運ぶ姿が原体験の中にあります。
業販店の油の匂いの中で育っており、ダイハツで働けることに対しては、非常にうれしく思っています。
――ダイハツからトヨタに対してモノが言いにくい面もあると思う。これまでの課題も踏まえ、トヨタとしてどう支援していくのか?
トヨタ 佐藤社長
現場経営を徹底することが、風土改革につながると思っています。
我々、どうしても会議室で仕事をしがちです。そこでは何もわからない。現場に行って、会話して、何が起きているのかを見て、一緒に悩む。
これが私自身、十分ではなかったと思いますし、我々が意識的に始めることがスタートだと思います。
本音を言ってもらうまでにはものすごく時間がかかります。それをこれからやっていくことが必要です。
実は不正の発覚以降、トヨタグループ全体の問題だと捉え、豊田会長の名代として、トヨタ自動車東日本会長の宮内(一公)がダイハツの現場に張り付いて、何が起きたか、丁寧に声を拾っています。
豊田会長が言う「主権を現場に戻す」活動をやっているわけですが、我々も実践していかなければならないと思っています。
井上と私の関係も、「佐藤に話せば、大変さがわかってもらえる」「改善に向けたサポートが得られる」と思える会話ができるまで、自分が現場に行くことが大事で、井上も同じような覚悟でいると思います。