トヨタ、ダイハツが会見を開き、ダイハツの新体制を発表。「企業をつくり直す覚悟」で刷新した経営陣はどのように同社を再生するのか。会見でのコメントを通じて迫っていく。
新体制の狙い
――井上次期社長を選任した狙いは?
トヨタ 佐藤社長
まずダイハツが取り組まなければならないことは、先日、国土交通省にご報告した再発防止策をしっかり実行していくことです。
その内容には3つの柱があります。経営の改革、風土の改革、モノづくり・コトづくりの改革です。
これは時間のかかることだと思います。現場の人が思ったことをしっかりと話すことができ、会話をしながら「ダイハツらしさ」を取り戻していく長期視点の改革が必要です。
井上は新興国を中心に、言葉の壁も乗り越えながら、かなり厳しい事業環境の中でもコミュニケーションを大切に取り組んできたリーダーです。
現場で対話をしながら、一緒になってダイハツの向かうべき方向へ、従業員と取り組んでくれるだろうと考え、人選しました。
――ダイハツ内部からでなく、トヨタから次期社長を送る狙いは?
トヨタ 佐藤社長
トヨタから、ダイハツからということより、現場で経営を指揮することを第一に考えて、グループ全体で適任者を人選しました。
副社長として経営に参画する桑田は、現トヨタ自動車九州副社長で、毎週現場で(従業員と)対話をしながら、モノづくりの現場の空気感、考え方を身につけています。
そういう人間が井上をしっかりサポートすることで、グループ全体でダイハツらしさを取り戻していきたいと考えています。
先日、豊田章男会長がお話ししたように「現場に主権を戻す」ことが本当に大事で、いろいろな目で見て「正しい仕事とは何か」を確認し合っていく必要があります。そういう観点で経営陣のフォーメーションチェンジをしていきます。
なお、ダイハツには非常に前向きに、本当にダイハツのことを考えて、情熱を持って、頑張ろうとしてくれている社員がたくさんいます。ダイハツの将来を考え、若い人材を育成していくことも新体制の大きなミッションの一つだと思います。
星加は42年にわたってダイハツを見ており、ダイハツの原風景を感じさせる話をよくします。
ダイハツは助け合える会社、お互いを思いやれる会社だということを、自分の目で見ています。
経営陣だけではなく、全従業員でダイハツらしさにもう1回向き合い、答えを出していくべきだと思い、新体制の人事を考えています。
ダイハツ 井上次期社長
問題となった認証制度はエキスパートの柳がしっかり見ながら、ダイハツを一番よく知っている星加、組織づくりのプロである桑田、そして、コミュニケーションをしっかりやらなければならない私、井上の4人が1つのチームとなって、再生することがミッションだと思います。
そういう理由で送られたのだと理解し、3月1日からフルスピードで、走っていきたいと思います。
――今回の次期社長の人事をいつ、誰から聞かされ、どう感じたのか?
ダイハツ 井上次期社長
話があったのは今から2週間半ほど前です。ペルーのリマに出張に行っており、突然、会議案内が来ました。
豊田会長、佐藤社長の2人との会議で驚きました。真夜中だったので、目覚まし時計をかけて、起きて参加し、今回の話を伺いました。
(寝起きで参加したので)「夢なんじゃないか」とも思いましたが、伺ったときは、責任の重さに身震いしました。
けれども、ダイハツの皆さんとは仕事の付き合いもありました。新興国においても、小さなクルマで競争力を持つ皆さんと仕事ができることをうれしく感じました。
――井上次期社長はどうして自分が選ばれたと思うか? 自身の経験がどのようにダイハツで生かせると思うか?
ダイハツ 井上次期社長
内示を受けたウェブ会議の際に、章男会長からメッセージをもらいました。
私は現在、5年間、南米に駐在しています。(中南米には)40の国・地域がありますが、「販売や製造の現場の皆さんと会話をし、ワンチームにするために頑張ってくれた。そういう功績があるし、強みじゃないか」という言葉をいただきました。
現在のダイハツの課題、これからのチャレンジを考えると、トップダウンというより、トップダウンとボトムアップの2つがベストミックスされた組織になるべきじゃないかと思いました。
そういう経験をしてきた私が適任じゃないだろうかと選んでいただいたように思います。
私は海外での生活が半分。製造もやってきましたし、営業の第一線でも働いてきました。皆さんの気持ちを理解して、会話ができると思っています。
ダイハツの皆さん、ステークホルダーの皆さんとお話ししながらやっていける個性、コミュニケーション力を買っていただいたんじゃないかと思っています。
――会長、社長は引責辞任なのか?
トヨタ 佐藤社長
再発防止を徹底しながら、ダイハツらしさを取り戻していくために必要な体制変更を行うという人事で、引責辞任ではありません。
決定するにあたっては、今後のダイハツの再生をどういう体制でやっていくべきか、現社長の奥平とも、かなり時間を使って話をしました。本人からは辞任の申し出もありました。
また、今回副社長として留任する星加からも、自身の想いとして、辞任の申し出がありました。
経営の責任を感じている当人たちの想いもしっかり受け止めた上で、話し合い、考えています。
けれども、特に星加については、豊田会長からも「現場に主権を戻す取り組みをしっかりやってほしい」という言葉もありました。
ダイハツをずっと見てきたからこそ分かる課題があるはずで、本来のダイハツを取り戻すことに全力を傾けてほしいと考え、こういう人事案になっています。
繰り返しますが、今回の人事は引責ではありません。