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2024.01.23
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「決断と責任を取るのが私の仕事」 豊田章男がリーダー200名に伝えたこと

2024.01.23

企業経営者や役員200名にトヨタ生産方式の講演を行った豊田章男会長。Q&Aセッションでは、リーダーの心得や経営判断について、寄せられた質問に答えた。

決断と責任を取ること

――トップリーダーの心得を教えてほしい

豊田会長

私はご教示できるような立場ではないと思いますが、経営者としてやってきたことは2だけです。決断と責任を取ること。この2つこそが、経営者の仕事だと思ってやってきました。

(社員が)自分のところに相談にきたときには、最後の砦としてきたんだろうなと思っています。

ですから、私の部屋を出たときには「こうすればいいんだ」とわかるような回答をしてあげようと考えています。

ただ、私も未来予言者ではないので、その回答が正解とは限りません。ただ、少なくとも私の部屋を一歩出て、何かやりだしたことで、より多くのことが見えるようになればと思っています。

間違いをしたら、責任を取ってあげる口で言うのは簡単ですが本当にやってくれるかどうかなんです。

何か厄介な話が来たときに、自らが動く姿をお示しされれば、いろんなことが変わると思います。

私のときは、「早く赤字の責任取って辞めなさい。それがあなたの役割だ」という感じだったと思います。

ですが、ここまで続いたのは、危機が続いたからです。危機が続き、誰も解答がわからない。覚悟を持って、「どんな結果になってもいいからやってくれよ」と言い、うまくいかないときに表に立ったからだと思います。

そういう態度を、一つずつお示しいただくことが重要なんじゃないかと思います。

昨今、日本のメディアに対してですが、あまりに分断や誹謗中傷を煽るな…と感じております。

未来は子どもたちとか、これから先が長い人たちのもの。どんな大人の姿を見せるかも大事になってくると思います。

今の大人が、まず率先して動き、ありがとうと言い合える助け合えるそして、笑顔が多くなる。そんな世界をつくらないと、子どもたちは、どんどんこの国から逃げていくんじゃないかと思います。

何か困ったことがあったときには、自分が表に立ってあげる行動を示すと、きっと多くの応援団が得られるんじゃないかと思います。

企業経営の過去・現在・未来

――日本の製造業に対して、あるいは、後世に対してどのようなことを伝えたいか?

豊田会長

企業経営には、過去・現在・未来があると思います。過去があるから今がある。今、やっているから、未来の世界は変わるということがあると思います。

仕事でも、過去の処理をしているグループもあれば、現在の稼ぎをあげている部署もある。未来の先端・先行の研究開発をやっているところもあると思います。

ですが、企業経営で大事なのは、それぞれが「ありがとう」と言い合える関係をつくることなんじゃないかなと思います。

先端、先行をやっている人たちは、「過去こういうことをやってきて、現在こういうことやってくれているから、俺たちは未来のことができるよ」。

過去、現在をやっている人たちは、「自分たちの未来のために頑張れよ。しっかり稼ぐから、リソーセスを持っていってもいいよ」。

お互いがお互いに助け合う感覚になったとき、企業は非常に強いものになっていくんじゃないかなと思います。

「未来をやっている人、新プロジェクトをやっている人がいい」としないことこそが、経営者の仕事だと思います。

私はすべての仕事に意味があると思っています。これはいい仕事、これは悪い仕事というのはないわけです。

やる以上は、多くの方を幸せにしていきたいという気持ちで、私はやっています。

モノづくりのリーダーたちからの質問に回答していった豊田会長。それは、いずれも自ら行動を起こし、現地、現物、現実を見て、導いてきた答えだった。

「現場を知っているものが一番強い」「たゆまぬ改善」「自分以外の誰かのために」「異常で止める」「人の持つ考える力を尊重する」「モノづくりは人づくり」――。

豊田会長の回答一つひとつから伺える価値観には、やはりTPSの教え、ものの見方があった。

*参考:NPS/NPS研究会とは?

NPSとは「The New Production System」の略で、環境の変化に柔軟、迅速に対応して、効率よくモノづくりを推進するマネジメント手法を指す。

同研究会は、新しい生産方式(NPS)の確立を目指して、ウシオ電機の木下幹彌(きのした・みきや)氏、オイレス工業の川﨑景民(かわさき・かげたみ)氏、紀文食品の保芦將人(ほあし・まさひと)氏らが中心となって始めた自主研究会を起点として1981年に発足。

TPSを自動車以外のいかなる業種にも応用できる経営哲学ととらえ、現在、45社以上の会員企業(1業種1社)が参画する。

トヨタでは1982年、TPSを体系化した大野耐一 元トヨタ自動車工業副社長が同研究会・初代最高顧問に就任。昨年からは第4代最高顧問として、友山茂樹エグゼクティブフェローが在任している。

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