国内の商用大手2社が経営統合へ。親会社のダイムラートラック、トヨタを加えた4社が目指すのは、脱炭素時代を生き抜き、商用車の未来を変える競争力強化だった。
5月30日、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車が経営統合に基本合意したことが発表された。
開発、調達、生産を共同で行い、スケールメリットを発揮。それぞれの親会社であるダイムラートラックとトヨタ自動車のCASE技術を活用し、輸送業界での脱炭素を加速する。
なお、統合にあたっては、持株会社を設立。ダイムラートラックとトヨタは、同割合で株式を保有する。
三菱ふそう、日野は新会社の100%子会社となるが、両社のブランドや販売網は国内外で維持する。今後は、最終契約を2024年3月期中に締結し、同年12月末までに経営統合の実施を目指すという。
4社のトップが一堂に会し、協業の狙いや想いを語ったスピーチを中心に、記者会見の模様をレポートする。
重点領域は水素 佐藤社長(トヨタ)
佐藤社長
本日、ダイムラートラック、三菱ふそう、日野、トヨタの4社は商用車事業の強化に向けた協業を進めていくことに合意をいたしました。
三菱ふそうと日野はグローバルな競争力を強化するために対等な立場で統合し、さらに、ダイムラートラックとトヨタのCASE技術を生かして、4社で商用車事業の新たな可能性を追求してまいります。
本日は今回の協業の狙いや想いをお話しさせていただきます。
この協業の背景にあるのは、「商用車の未来をともにつくる」という私たち4社の強い想いです。
人やモノの移動を通じて暮らしを支える商用車は、まさに「社会インフラ」ともいえる重要なモビリティであり、社会システムに組み込まれることで、移動の価値をさらに高めることができます。
カーボンニュートラルに向けては、世界の自動車CO2排出量の4割を占める商用車を、環境にやさしいモビリティへ進化させていくことが不可欠です。
すなわち、商用車の新しい未来をつくっていく挑戦が、豊かなモビリティ社会の創造に重要な役割を果たしていきます。
そのカギを握るのが、電動化や自動運転などのCASE技術です。CASE技術は、広く普及してこそ社会の役に立ち、そのためには技術開発力が必要です。
そのようなCASE時代を生き抜くうえで、日本の商用車市場は、世界と比べて規模が小さく、各社が単独で戦うことは難しい状況です。
豊かなモビリティ社会を創造していくためには、競争のみならず、みんなで力をあわせて未来をつくっていくことが強く求められています。
こうした想いで、今回の4社での協業を通じてCASE技術の普及を加速していきたいと考えています。
三菱ふそうと日野は、統合により、両社のシナジーを高め、開発・調達・生産における事業の効率化を図ることで、CASE技術に取り組む事業基盤、競争力を強化していきます。
ダイムラートラックとトヨタは、両社の強みを持ちより、CASE技術で統合後の会社を支えながら、両社の間でも、さらなる技術力の強化に取り組んでいきます。
この4社が集うことで、新たな未来の可能性も広がっていきます。
中でも、水素領域の取り組みは、豊かなモビリティ社会を実現するために、4社で力を入れて協力していく大きなテーマだと考えています。
ダイムラートラックとトヨタは、早期から、水素エネルギーの持つ可能性に着目し、燃料電池や水素エンジンの技術開発を積極的に進めてまいりました。
そして、普及に向けて、商品の実用化や水素インフラの整備にも取り組んできました。
今後、三菱ふそう・日野も含めた4社で、水素モビリティの普及を商用車から加速させていきたいと考えています。
こうした未来にともに取り組んでいくためにも、まずは、三菱ふそうと日野の統合により、世界で戦える事業基盤を整えていきます。
そして、健全な競争を通じて、より良い商用車の未来に貢献してまいります。
ダイムラートラックのダウムCEOとは、「商用車の未来を変えていくこと」「CASE技術の普及にはスケールが必要であること」そして「未来はみんなでつくるもの」。
こうした想いと価値観を共有しながら、パートナーシップのあるべき姿について、議論を重ねてまいりました。
そのプロセスの中でお互いのビジョンを確認し合うことができ、大変有意義な話し合いをすることができたと思っています。
ぜひ、ダウムさんからも、協業に込めた想いをお話しいただきたいと思います。