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水素エンジンでル・マンに挑戦!?豊田章男がフランスで語ったモータースポーツへの想い

2023.06.09

100周年を迎えたル・マン24時間レース。その現場で豊田章男会長は"将来のル・マン参戦も見据えた新しい水素エンジンレースカー"を披露した。

2023年のル・マン24時間レースは6月10日(土)から11日(日)にかけて開催される。決勝を翌日に控えた9日(金)に、ある記者会見が開かれた。登壇したのはレースを主催する団体「ACO」のピエール・フィヨン会長。

フィヨン会長は “ベールに隠された謎のトヨタ車”がサーキット内に展示されていると紹介した。そして「その謎を解くゲストが来てくれている」と告げると、豊田会長を壇上に招き入れた。

豊田会長はマイクを預かると「私から謎を解かせていただいてもよろしいでしょうか?(I would be happy to solve the mystery for you! )」と話をはじめた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

今回、豊田会長が明かした “謎の答え”は「将来ル・マン24時間への挑戦も見据えた水素エンジンの新しいレースカー」。

カーボンニュートラルを目指しながらも音や迫力も守っていきたい…、ル・マンという世界的かつ伝統的なレースの現場で豊田章男が語ったスピーチの全文を紹介していきたい。

豊田章男 会長

I would be happy to solve the mystery for you!
私から謎を解かせていただいてもよろしいでしょうか

But before I do that, let me take a moment, to congratulate you on the 100 th anniversary of Le Mans!
その前に一言…、ル・マン100周年おめでとうございます!

What an amazing achievement to both create… and sustain… this legendary event, at the highest level for so many years!
ル・マンという、こんなにも最高で…レベルが高く、伝説的な大会を、何年も続けてきていらっしゃるということ、本当に素晴らしいと思います。

There is no race car driver in the world, past or present …who hasn’t dreamed of winning Le Mans… including… yours truly.
昔も今もレーシングドライバーたちの憧れであり、ル・マンでの勝利を夢見ないドライバーはいなかったのではないかと思います。私自身の夢もそうだったかもしれません。

Le Mans is a very special place for Toyota…
そして、ル・マンは、トヨタにとって、大変特別な場所だと思っています。

a place where we not only compete in one of the world’s most celebrated races…but a place where we can push the boundaries of technology… a place… where we can realize the future.
世界で最も有名なレースということだけではありません。
我々が技術の限界を超えていける場所…、そして未来を実現していける場所がル・マンだと考えているからです。

Ladies and Gentlemen, introducing… our GR Hydrogen concept race car for WEC!
では、皆さん、ご紹介いたします!未来のWECを戦う“GR Hydrogen concept race car”です!

Not only are we re-imagining the race car, we’re doing it with zero emissions.
これは単なる新型レースカーではありません。ゼロエミッションで戦うレースカーです。

Of course, one of the other major benefits of hydrogen fuel over gas, is just how light it is… less BoP which, as we all know…is one of the biggest advantages you can have in racing.
もちろん、水素燃料がガソリン燃料に勝る大きなメリットのひとつは、その軽さです。これは、ご存知のように、レースを行ううえでの最大の利点の一つです。ただ、BoP(性能調整)は入ってしまいますが…

In fact, two weeks ago I drove a Corolla fueled by liquid hydrogen at the Super TEC 24 Hours race at Fuji Speedway.
2週間前、富士スピードウェイで行われたスーパー耐久24時間レースで、私は液体水素で走るカローラでレースに出ておりました。

This was a world first for a race car…and not only did we successfully finish the race… we learned a lot.
液体水素のレースカーは世界初です。24時間を無事に走り切り、私たちは多くの学びを得ることができました。

Personally, my goal is to achieve carbon neutrality in motorsports…without sacrificing anything in terms of performance or excitement.
モータースポーツでカーボンニュートラルを実現すること…、それも、レースでのパフォーマンスや興奮を犠牲にすることなく、それを実現することが、私にとっては大切なことです。

And by the way, we wouldn’t be investing in this technology if I didn’t think we could win with it!
ちなみに、私たちは、「これは実現できる!」と思っていたからこそ、この挑戦をはじめました。

I mean, I do have my priorities, after all!
無理だなんて思っていませんでした。だから、このやり方を選んだのです。

I really want to encourage our competitors to consider hydrogen…not just because it’s good for the environment, but because it’s truly an exciting option.
私は、ライバルメーカーにも、水素をおすすめしたいと思っております。環境に良いからという理由だけではありません。水素は本当にエキサイティングな選択肢だからです。

The sound, the torque, the dynamics… it’s all there.
音も、トルクも、迫力も…、すべてがそこにあるから…

In the end, when it comes to carbon neutrality and motorsports, we believe in pursuing every option…
あらゆる選択肢を信じて進んでいくことが、カーボンニュートラルとモータースポーツのためには大切なのではないでしょうか

from battery electric vehicles and beyond…and that’s why at Toyota, hydrogen… is just one… of the many paths that we are taking.
バッテリーEVだけでなく、その先にあるなにか…、水素は、たくさんある“その可能性”のひとつだと思っています。

We are grateful to the ACO and Le Mans to provide this unique opportunity to share our efforts with the world…
私たちの想いを、世界の皆さまに知っていただく機会を与えていただいたACOとル・マンに心から感謝いたします。

and we look forward to our new GR H2 race car in view of the new Le Mans H2 class in the future.
そして、この新たな水素レーシングカーは、ル・マンに新設されるH2クラスに参加することも見据えています。

So again, thank you.
本当に、ありがとうございます。

This is, indeed, a special day for Toyota, and an even more meaningful one for Le Mans.
トヨタにとって、今日は特別な日になりました。そして、ル・マンの歴史においても、より意義深い一日になったのではないでしょうか。

Congratulations… and here’s to the next 100 years of checkered flags!
100年先のチェッカーフラッグに向けて、また走り出していくことに、改めて、敬意を表します!

Thank you very much.
ありがとうございました。

スピーチの後半に「less BoP」という一言がある。BoPとはBalance of Performanceの略。レースにおける性能調整のことである。

ル・マン24時間レースがはじまる直前(531日)、レース主催者は新たなBoPを突然発表した。それによりトヨタは+37kgの重量がハンデとして課せられた。1周あたり1秒以上遅くなる計算だ。(フェラーリは+24kg、キャデラックは+11kg、ポルシェは+3kg、プジョーは0kg

これはレースに向けてチームが拠点を出発した後からの発表であり、チームとしてはなんの対応も取れない。スピーチに挟んだ「less BoPBoPはあるけどね…)」は、そんなBoPに対する言葉であり、その一言に会場からは温かい笑いが起きた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

欧米のライバルメーカー達と戦った今年のル・マン。TOYOTA GAZOO Racingは、最後までフェラーリと僅差での首位争いを展開したが、惜しくも及ばず2位でフィニッシュとなり、目標の6連覇には届かなかった。皆さま、応援ありがとうございました。

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