国内の商用大手2社が経営統合へ。親会社のダイムラートラック、トヨタを加えた4社が目指すのは、脱炭素時代を生き抜き、商用車の未来を変える競争力強化だった。
スケールこそが鍵 ダウムCEO(ダイムラートラック)
佐藤社長によると「世界市場でみると中・大型の商用の台数規模は、300万台~350万台ぐらい」「そのうち日野が25万台、三菱ふそうが15万台、合計40万台」という。
トラックメーカー世界最大手であるダイムラートラックのマーティン・ダウムCEOもポイントに挙げた「スケールメリット」。
日本の商用車大手2社が統合する意義と課題意識を補足した。
ダウムCEO
私は、この業界で30年以上働いています。そのキャリアの中でも、今日という日は間違いなく最も特別な日の一つです。
それは本日、私どもがお届けするのが本当に素晴らしいビッグニュースだからです。
私たちは2つの素晴らしい会社の未来を結び付け、商用車業界の未来を日本で、アジアで、そして、それ以外の地域で形づくっていきたいと思っています。その背景をお話しさせてください。
ダイムラートラックは私たちの製品に大きな誇りを持っています。2022年に販売した52万台の一台一台が、私たちの誇りなのです。
北米ではフレイトライナーのブランドで、ヨーロッパではメルセデスベンツのブランドで、アジアでは三菱ふそうのブランドで展開しています。
壇上のパートナーの皆さまも、同じ想いをそれぞれの製品に対して持っていらっしゃるはずです。それは、トラックとバスがある特別な役割を果すものだからです。
私たちの車両によって、お客様はスーパーや工場、工事現場を動かし続けることができます。また、私たちの車両が人々を職場へ、学校へ、お気に入りの場所へと運ぶのです。
つまり、トラックとバスは世界を動かし続けます。それは、今日も、明日も、変わりません。
しかし、一つだけ変わることがあります。トラックとバスはゼロエミッションでなければならないということです。ということは、私たちの製品はより素晴らしいものになるということです。
トラックとバスはただ世界を動かし続けるだけでなく、サステナブルにそれを行うのです。なんとしても取り組まなくてはならない未来が迫っており、その未来を実現するのが待ちきれません。
私たちは技術的な変革をリードし、気候変動に対して全力で立ち向かいます。2020年末の時点で既にダイムラートラックはゼロエミッションの量産トラックとバス8種類を有していました。
その筆頭が三菱ふそうのeCanter(イーキャンター)です。私たちは、このeCanterを真のパイオニアとして2017年に発売しました。そして、つい先日、eCanterの新型を投入しました。既に70種類が利用可能なのです。
ここまでは順調です。しかし、ゼロエミッションに向けて加速していく中で、一つ大きな課題があります。投資が必要だということです。
同時に複数の新しい運転技術に投資しなくてはなりません。バッテリー、燃料電池、また、将来的には水素エンジンです。
これを全て同時に行うのは、この業界におけるトップ企業にとっても非常に大変なことです。これを経済的に成り立たせる方法は一つしかありません。規模の経済、スケールです。スケールこそが鍵なのです。
そして、私たちは今日大胆な行動に出ています。日本の商用車大手3社のうち2社の力を結集させます。
そして、これが劇的なスケールアップにつながります。三菱ふそうと日野の事業統合で、大型トラックにおけるダイムラートラックの全ての技術にアクセスすることが可能になります。この統合はまさに決定打になりえます。
私たちが全く同じ分析を行い、同じビジョンを持つパートナーに出会えたということを本当にうれしく思っています。
本日発表した内容は、単に私たち自身が企業として成長する可能性を秘めるだけではありません。真の国内トップ企業をつくることは、日本の経済を活性化する可能性があるのです。
お客様の成長に貢献するだけではなく、強固な製品ラインナップをつくることができます。
ゼロエミッションの輸送への変革を加速するために、今日の協業は4社全てにメリットをもたらします。
アジアの輸送をリード デッペンCEO(三菱ふそう)
佐藤社長、ダウムCEOは、それぞれスピーチの中で、CASE、水素技術の普及には、商用領域での大きな連携が必要であると指摘した。
特に、水素技術においては、商用、乗用それぞれで、燃料電池をはじめとする技術に強みを持つダイムラートラックとトヨタ。対応する車両の面でも、補完関係が見込まれる。
今回、日野と統合する三菱ふそうのカール・デッペンCEOは、協業で生まれる可能性へ期待を寄せた。
デッペンCEO
当社の視点から改めてお話をさせていただきます。まずは背景をお伝えします。
社名にもあるように、FUSOブランドは今から90年以上前、三菱グループから生まれました。その後、2003年にダイムラーが株式を取得し、現在では89%を所有しています。
当社は、およそ170の市場で商用車を販売しています。三菱ふそうの製品は、効率性、信頼性、そして優れた安全性で知られています。
小型電気トラックのリーダーとして、先日は新型のeCanterを発売しました。このような素晴らしい、輝かしい歴史がありながら、なぜ私たちは今、日野と手を結ぼうとしているのでしょうか。
一言でいえば、世界は変わりつつあるということです。それとともに、私たちの業界も変わらなければなりません。
日本の経済と社会は、最先端の輸送技術を必要としています。アジアの経済社会も同様です。同時に、日本は2050年までにカーボンニュートラル化にコミットしています。
私たちは、輸送のカーボンニュートラル化のためのソリューションとなることを目標としています。
コネクティビティ、自動運転、電動化といった物流を安全に、効率的に行う。そして、お客様は、収益につながり、その上で環境への負荷を最小限に抑えるために、さまざまな先進的なサービスや技術を求めていらっしゃるのです。
こういったものの開発には莫大な投資、資源、専門性・知見が必要です。
率直に申し上げましょう。私たちのような伝統ある会社でも、お客様に価値を提供し、成功し続けるためには単独ではできる範囲を越えております。そのためには規模が必要なのです。
そうして、当社と同じように商用車業界に貢献してきた日野以上に、よりよいパートナーがいるでしょうか。
手を結ぶことで、私たちは力を得ます。相互補完的な製品ラインアップを持ち、広大な販売ネットワークを有し、世界中に熟練の従業員がいる強大な日本のトラックメーカーとなります。
この大胆な行動によって、私たちは資源を倍以上にできるのです。
つまり、より高度な知識や専門性にアクセスし、より多様なサプライヤーやインフラのネットワークを持ち、そしてより多くの人々と、技術開発を加速するために一緒に働くことができるようになります。
お客様に対してもより良い価値を提供し、サプライヤーやディーラー、そして従業員の皆様にさらなる機会をもたらします。そして、株主の皆様に対しても、しっかりと還元していくことにつながります。
この統合によって、アジア地域の輸送セクターにおける業界をリードする存在となります。新しいブランドが続々と市場に参入する中でも、十分に戦えると信じています。特に海外で明らかなことです。
この協業によって生まれる新しい可能性の全てが、今から本当に待ち遠しくてたまりません。
もう一つ、私にとって重要なポイントは、この協業の性質そのものです。議論が始まったときから、私は全ての関係者にとってWin-Winとなる解が必要であると思っていました。
長く競合関係であった2社が統合することは、もちろん大きな挑戦です。
この協業は、両社が対等な関係で、互いの長所を尊重し、それぞれが単独で歩んだ場合よりもさらに輝かしい未来を手にするために協力することによってのみ、成功すると考えています。
だからこそ、ここで発表する内容に本当に満足しています。
1つの会社。2つの強力な対等なブランド。トヨタとダイムラートラックの専門性と資源による支援が得られるのです。
言うまでもなく、やるべきことは山積しています。ここ日本でも、それ以外の全てのマーケットでも、答えを出さなくてはならない問題がたくさんあります。
だからこそ、きちんと時間をかけて、正しく進めていきます。
今後約18カ月の間、このプロジェクトの全ての側面を慎重に確認します。そして、2024年末までに統合を完了することを目指します。
気の遠くなるような作業ではあります。しかしダイムラートラックや三菱ふそうの素晴らしいメンバーだけでなく、新たな友人であるトヨタと日野に対して、大きな自信、確信を持っています。
改めてトヨタと日野に向けて「ありがとう」「ようこそ」とお伝えして、ご挨拶とさせていただきます。
これから数年の間、ともに成し遂げていくことが本当に楽しみです。一緒に成長していきましょう。