全国の販売店代表者が集結した会場。そこでトヨタが語った内容を、包み隠さず公開する。
全国から集結した225社のトヨタ・レクサス販売店トップに、豊田章男社長らがメッセージを発信した。
登壇したのは、ほかに国内販売事業本部の友山茂樹本部長、そして佐藤恒治次期社長の3名。後半は新しい経営チームでのトークセッションも行われた。
とある販売店トップから佐藤次期社長が厳しく切り出された裏話や、トヨタがクルマを直販するかの言及まで。2023年3月9日に開催された「全国トヨタ販売店代表者会議」の内容をお伝えする。
約8,000文字の長文記事。これを読めば、トヨタと販売店の今後の関係が見えてくる。
自動車産業を壊されてたまるか
まずは豊田社長が登壇。先の見通せない時代、次々と訪れる「危機」をどう捉えているかが示された。
豊田社長
本日は、全国販売店代表者会議にお越しいただき、ありがとうございます。こうして皆様とお会いするのは、2021年秋の代表者会議以来になります。本当に嬉しく思います。その間、世界各地域で発生する自然災害やロシアによるウクライナ侵攻、コロナの影響や半導体不足など、思うように「クルマがつくれない」「お客様にお届けできない」状況が続いております。
厳しい環境の中、目の前のお客様お一人おひとりに真摯に向き合っていただいている販売店の皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
なお、明後日は3月11日です。東日本大震災の発生から丸12年になります。「復興には時間がかかる。モノづくりを通じて、東北復興の原動力になりたい」。そんな想いを込めて生まれた会社が、トヨタ自動車東日本です。
これからも東北の地で、もっといいクルマをつくり、自分以外の誰かのために行動できる人を育て、東北の復興に貢献してまいりたい。そう思っております。
一昨年、私たちは「未来への約束」 * を誓い合いました。
*トヨタが販売会社との約束をとりまとめた冊子。ブランド構築や地域で信頼されるための7つの約束を盛り込んだ行動指針
お互い「100年に一度」という、生きるか死ぬかの闘いに身を投じるわけですから、「トヨタは、みんなの幸せのために存在する」という原点を共有できる方と未来をともにしたい。それが私の想いでした。
私は3代目です。皆様の中にも、3代目、4代目の方がいらっしゃると思います。私たちは、生まれたときから当たり前のように「トヨタ」がありました。でも、それは最初からあったものではありません。
皆様の先代が、豊田喜一郎をはじめとする創業メンバーの意志と情熱と行動に共感され、先の保証など何もない中で、「国産車トヨタに賭けてみよう」。そう「覚悟」を決めていただいたから今があるのだと思います。
私たちは、いま、先代たちと同じように大きな危機に直面しております。「カーボンニュートラル」です。
美しい地球と豊かな暮らしを次世代に残すことは、私たちの世代の責任だと思っております。しかし、やり方を間違えると、自動車産業そのものが根底から崩れてしまうかもしれない。そうなれば日本はどうなってしまうのか。
自動車は、日本の未来のために、私たちの先人が命をかけてつくり上げた産業です。ここにいる私たちは、全員がその継承者です。
「自動車産業を壊されてたまるか」
それぐらいの強い危機感と当事者意識をもって、世の中をリードし、自らを変革しなければ、先人にも次世代にも合わせる顔がありません。
「危機」という字は「危険」と「機会」という言葉でできています。私は、皆様と心を合わせて、この危機を、モビリティ・カンパニーへの変革の機会にしたい。そう思っております。
今から13年前。私たちは、ともに会社存亡の危機に直面いたしました。大規模リコール問題です。米国の公聴会に向かう前、当時、ト販協(トヨタ自動車販売店協会)の理事長だった守川さんはこう言ってくださいました。
「日本のことは任せてください」
この言葉にどれだけ助けられたことか。今でも鮮明に覚えております。またその後の、オールトヨタ緊急ミーティングでは「百雪(ひゃくせつ)に耐えて、梅花(ばいか)、潔(いさぎよし)」「オールトヨタの総力を結集し、厳しい試練に打ち勝ち、トヨタ本来の姿を、一日も早く取り戻しましょう」と力強いお言葉をいただきました。
あれから13年。「百雪」に耐え、販売店の経営体質は確実に強くなったと思います。ここで、私とともに長年、業務改善に取り組んできた本部長の友山より、国内の状況についてご説明いたします。