宇野昌磨が語った「クルマづくりの会社」との特別な関係って?

2023.07.27

フィギュアスケートの宇野選手には、とある名古屋のモノづくり企業と特別な関係があるという・・

トヨタ社員の印象は●●だった

トヨタの社員は、しっかりとサプライヤーの方に寄り添えているのか。寺西社長に恐る恐る聞くと・・

山一ハガネ 寺西社長

初対面は、ソフトウェアの使用法のレクチャーでした。弊社の担当者に丁寧に接していただいていたことが印象的です。

新しい領域のモノづくりなので、課題だらけ。お互いに一緒に悩んで挑戦。今は金属だけでなく樹脂でのお付き合いも増えました。

一方、目指されている技術レベルは非常に高く、たとえば燃料電池用のセルの金型を試作させていただいたときも、スペックの厳しさが尋常ではなかったのを覚えています。

トヨタイムズの取材なので、当然、忖度いただいているだろう。しかしプロジェクトで窓口役を務めた担当者も、事前に抱いていたイメージとは違ったと笑いながら話してくれた。

山一ハガネ 小林祐太 マネージャー

正直トヨタさんは“とっつきにくい方々”なのかなとも思っていました()

でも技術的課題に対して一緒にゴールを見つけてくださり、皆さん本当に気さくでした。わざわざ弊社の現場まで来てくださり、一緒になって汗をかいていただいたので助かりました。

トヨタの創業者、豊田喜一郎が記した購買規定には「仕入先との共存共栄」の思想があり、こんな一文が記されている。

「仕入先は当社の分工場と心得、その工場の成績をあげるよう努力すること」

安いモノを買うのではなく、仕入先の生産性を上げるため、トヨタも自分事として知恵を出し、一緒になって汗をかく。それがトヨタにおける調達の基本的な精神なのである。

自分たちだけではクルマづくりはできない

では実際に、サプライヤーと一緒にクルマづくりに励むトヨタのエンジニアは、どう感じているのか。今回の取材に同行したトヨタ技術会の3人に聞いてみた。

トヨタ技術会 藤田浩文 主幹

正直なところ、自分たちだけではクルマはつくれません。会社からも「外に出て勉強してこい」とも言われています。高い技術力を持つ仕入れ先様の存在があって初めてクルマづくりが可能だと感じます。

トヨタ技術会 佐藤豊幸 グループ長

我々は材料メーカー様と二人三脚で開発をしています。最終的には材料を生産いただいて部品にし、クルマに使わせていただく。つまりクルマづくりに欠かせないパートナーなんです。

トヨタ技術会 辻智之 主任

大勢の仲間が同じ方向を向いた時のパワーはすごい。日々の業務でもサプライヤー様に助けていただくことが多く、底力を実感することが多いですよ。

一様に「自分たちだけではクルマづくりはできない」と答えたことが印象的だ。ところで、3人が所属するトヨタ技術会とは何か?

藤田によると、1947年に発足した有志団体で「人と技術の力で未来を切り拓いていこう」という想いのもと、会員の技術力向上や地域社会への貢献を目的として活動を行っているという。

専任を含め100名ほどの実行委員により運営されており、会員数はなんと2万人を超えるそうだ。

藤田 主幹

メンバーは社内のあらゆる部署から集まっているので、業務で知り合うことのないつながり、そして競争が生まれます。

部署の壁を越え、社内に横のつながりが生まれることが、トヨタ技術会の大きな役割だと3人は口を揃える。

「上下の関係」ではなく「対等の絆」

トヨタ技術会は、毎年8月に「技術者の一日」という社員向けの技術展示イベントを開催している。

例年2日間で約2万人が参加するそうだが、今年は「社外技術の展示」に山一ハガネが出展予定。山一ハガネの皆さんと対談する、宇野選手の貴重な映像も放映される。

寺西社長

日本経済が下降気味のなか、中小企業はますます“存在意義”が大事になってきます。

新たな付加価値として挑戦してきた「3Dプリンター」や「ブレード製造」で、世の中の役に立てる。それにより会社も生き残れ、社員も幸せになれる。

「山一ハガネは世の中にとって必要な会社か?」と問われたときに「そうです」と答えられる会社にしたいと考えてきたからこそ、お声掛けは非常にうれしかったです。

550万人の仲間に支えられているトヨタのモノづくり。取材の最後に宇野選手にも「仲間」の重要性について語ってくれた。

宇野選手

フィギュアスケートも、仲間がいなくては成り立ちません。自分一人だと思っていても、周りにはたくさんの人がいる。

今の時代「目につきやすい部分」が注目されがちですが、「目には見えない、支えてくださるたくさんの人たち」に感謝しています。

トヨタとサプライヤーの間にあるのは「対等の絆」。トヨタのモノづくりは、多様な仲間とともに進んでいく。

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