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"速く走るプロ"が警察官に運転を教えた

2022.12.16

ラリーとレースで活躍するプロドライバーが講師となり警察官やNEXCO中日本の職員らに運転を指導する安全運転講習会が開催された。この異色の組み合わせともいえる講習会を取材した。

クルマの機能をしっかり理解して使う

2つ目の実技はブレーキスピン。こちらの講師はラリードライバーの勝田範彦選手が担当した。

スタートから40メートルの地点にあるパイロンを目指してフル加速をし、そのパイロンでフルブレーキをする。ブレーキングポイントにはクルマの左タイヤだけ雪道のように滑りやすい低ミュー路が用意されており、左右の車輪の滑り度合いが違う道でブレーキを踏むと車両が回転しやすくなるということだ。

ここでも2回、同じ運転をしてもらう。1回目と2位回目の差は、クルマの電子制御の有無。1回目は、ABS(アンチロックブレーキシステム*)をオフ、2回目はオンにして走るということだ。

*急ブレーキ時やすべりやすい路面でのブレーキにタイヤのロックを防ぎ、スリップを制御する機能。


1回目のフルブレーキでは、簡単にスピンしてしまう。

勢いよくスピンする車両に、順番待ちをする参加者からは、どよめきが起こっていた。

ABSなしで低ミュー路でのブレーキング。ドライバーの意志に関係なく車両はいとも簡単に横を向いてしまう。

2回目のABSオンの状態では、フルブレーキでも車両はスピンすることなく、まっすぐ走り、スムーズに止まっていた。

ABSオンでブレーキを踏むと、ペダルが小刻みに揺れたり、「グググ」といった作動音を感じる。この機能を使い切るには、車両が停止するまで、とにかくブレーキを奥まで踏み続けることが重要なため、助手席の勝田選手から「踏み続けて!」とブレーキを緩めないように指示が飛ぶ。

ABSが作動すると、さきほどのスピンが嘘のように、まっすぐ停止する

【受講者の感想】

ABSオフでは、コントロールできなかったのですが、ABSオンではブレーキをしながらもハンドル操作が効いたので安全に感じました。

ABSが作動するとブレーキが跳ね返される感覚がありました。(事故でも)スリップするとびっくりしてブレーキから足を離してしまい『まっすぐ走っていたのに、クルマが反対向きになってしまった』といわれるドライバーさんもいます。

今回ABSの有無を体験させてもらって、しっかりブレーキを踏めないと、ABSが作動せず、パニックになり事故につながるんだということが分かりました。

クルマの機能が向上し事故が防止されていると感じましたが、せっかくクルマが進化しても、それを理解していないことがありそうだと思いました。

普段はすることのないフルブレーキやスピンを体験した受講者からは、このような声が聞こえた。

勝田選手に安全運転のポイントを聞いてみた。

勝田範彦

今の新車には、ABSや、横滑り抑制(VSC)など、いろいろな機能が付いています。

一つ言えるのは、クルマに付いている全ての機能を知っていても、使っていないことがあります。

ABSでも、ブレーキングの途中で踏む力を弱めてしまうと作動しないこともありますので、機能特性をよく知って使うのが理想的です。

日頃からこのようなことはなかなかできないと思いますが、向上心を持つことはできると思います。

単に、街中走るのではなく、上手くなろうという気持ちが一番大切です。僕も、交差点を曲がるとき「どうやったらスムーズに曲がれるんだろう?」と今でも考えます。そう考えることで常に発見があります。

そういう気持ちを日頃から持っていれば、運転もどんどん上手くなります。向上心は、何に対しても大事だと思います。

まだまだ、この歳になっても、もっと上手くなろうと思っています。モータースポーツをやっている以上、常に進化していないといけないんです。

見た目は地味でも最難関!?

3つめの実技は転回。入るとなかなか出られないことから、通称タコ壺と呼ばれる。こちらは今回トヨタと一緒に主催を務めた山梨トヨペットの社会貢献活動社内チーム「TREAM(トリーム)」のメンバーが担当した。

転回はパイロンで囲われた縦横6メートル平方のスペースに前から進入し、何度か切り返しをしてクルマの向きを変えて、脱出する。今回はその秒数が計られているというプログラムだ。

スムーズに行うには、車幅や長さといった車両感覚とタイヤの向きを把握する感覚がカギとなる。

普段はミニパトに乗っている受講者も多く、いつもと違うクルマのサイズに苦戦する様子も見られた。

【受講者の感想】

外から見ていたら(囲われたスペースが)結構広く見えたので、3回くらい切り返せば、簡単に出れると思ったのですが、実際にやってみたら狭く感じて、車内から見るのと、外から見るサイズの違いを改めて感じました。

自分では、もうぶつかるかなと思っても、外から『もっと前いけるよ』と言われるので、運転席から見た感覚より前が空いていて、車両感覚の難しさを感じました。

今回の車両(カムリ)も普段業務で乗るクラウンやマークXと同じくらいのサイズだと思うのですが、狭いところに入ると、こんなにも車幅がシビアなのだと改めて感じました。

転回で参加者が苦戦した、クルマのサイズ感を掴むコツを佐々木選手と勝田選手に教えてもらった。

佐々木雅弘

自分がクルマに乗って、目で見えている距離の感覚がありますよね。ギリギリだなと思ったら、他の人から距離を教えてもらうよりも、実際に自分で降りてみる。それで、あとどれぐらい隙間があるのかを確かめるのが大切だと思います。

スラロームやったときにも、パイロンを通過した後、そのパイロンを後ろで引っ掛けないか目で追っていた方がいました。

だいたいフロントタイヤがここを通ったら、リヤタイヤは、ここを通るという感覚をステアリングを切って、止まって、降りて、目で見るというのが大切だと思っています。その中で感覚が研ぎ澄まされると思います。

勝田範彦

僕は、初めて乗るクルマであれば、パイロンを立ててもらって、そのパイロンに当たるところまでクルマを動かします。当たったところで、目で見た感覚を覚えます。

ラリーの場合だと、ものすごく細い道を走ります。だから、タイヤがどこを通るのかが重要です。

例えば、細い道で、どれぐらいまで入れるのかとか、コーナーのイン側に石があったり、砂があったりとか、それらに引っ掛けてしまうと、(タイヤの)バーストにつながります。

フロントはパイロンを置いて感覚を確かめ、リヤタイヤは、ミラーを下まで見えるように倒しています。それで、フロントタイヤをレールに乗せたときに、リヤタイヤは、どれくらいのところを走るのかをミラーで確認しています。

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