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空気、自動販売機、食、コーヒー、教育...幸せの量産へ"発明家"たちの挑戦

2025.02.20

ウーブン・シティでの掛け算は、どんな未来を描き出すのか? 5社のインベンター(発明家)へのインタビュー、後編です。

UCCジャパン:“コーヒークレイジー”がコーヒーの潜在価値を引き出す

突然だが読者の皆さんは、どんな時にコーヒーを飲むだろうか?

休憩する時、商談前に気合いを入れたい時、さまざまなシチュエーションがあるだろう。コーヒーを飲むことによる、リラックスや集中力アップといった効果は、これまでも検証されてきた。

だが、コーヒーの価値はそれだけではない。個人作業の生産性向上や、ディスカッションの質を高めたり、会話を弾ませたりする効果もあるのではないか――

そんなコーヒーのあらゆる潜在価値を探求しているのが、UCCジャパン。

「まだ潜在的な価値があるんじゃないかと強く信じている、コーヒークレイジーって感じなんです、我々は」と話すのは、今回実証実験の責任者を務める里見 陵さん。

同社はウーブン・シティでカフェを運営し、お客様の会話量や表情などの変化を解析する中でコーヒーの潜在価値を実証していく。まだ見ぬ価値をお客様にも体験してもらうことから「未来型カフェ」と呼んでいる。

同社では以前からさまざまな実証を行ってきたが、試験室ではないリアルな生活環境でデータを確認できるのが、ウーブン・シティの利点。

また、画像認識や会話の量、話すスピードなどの測定と分析には、WbyTが持つソフトウェアのスキルを生かしたツールにも期待がかかる。

ただ、里見さんはウーブン・シティの実証実験で得られるものは、「データ分析だけではない」という。

里見さん

私がすごく良いなと思っているのは、(トヨタが開発や生産などを)進めながら改善して、最後の量産品まで最短距離で良いものをつくっているところ。

そこにはデータ分析だけでなく、もっと上位の概念で学ぶものが多数あるんじゃないかなと。

ウーブン・シティは(クルマとは)違う領域のテストコースでもあるので、我々もその一端に触れられるんじゃないかと思います。

「こうやって改善するのか」とか、「こういう現場の見方をするんだ」という期待感があります。

これまでも水素焙煎コーヒーを一部のレクサスのラウンジで提供するなど、実証実験においてもトヨタと何かと縁がある同社。ウーブン・シティでの実証の話もスムーズに進んだのかと思ったが、そんなことはなかった。

この話が立ち上がった当初は、「コーヒーの潜在的価値を見出す」という大きなテーマこそあったものの、現実的にその価値を実証していくためには、どのような実験が可能なのか、WbyTとの間には技術的な理解度の差もあり、なかなか話がかみ合わなかった。

2024年にプロジェクトに加わった里見さんは、この状況を「ちょっとまずいな」と感じたという。そこで同社の研究開発施設「UCCイノベーションセンター」のメンバーも加え、実験の具体的なイメージが固まるまで、WbyTとディスカッションを重ねた。

ウーブン・シティでの実証実験が始まる以前から、トヨタとの関係があったからこそ、「中途半端なことはできない。意志を持ってしっかりやらないと」という想いが強かったと里見さんは振り返る。

ただ、里見さんを駆り立てたのは、それだけではない。両社はもっと原点のところで共通する想いがあると感じている。

里見さん

トヨタさんがおっしゃっている「自分以外の誰かのために」のような、創業精神は我々もパーパスとかバリューとは別にありまして、「いつでも、どこでも、一人でも多くの人においしいコーヒーを届けたい」というものです。

それは、少し(見方を)変えると利他そのもの。「誰かのために何かをしたい」という想いをコーヒーで具体的に言った言葉が、創業会長(上島忠雄氏)の想いです。

いよいよ今秋に迫ってきた実証開始。ワクワクも不安もあるが、新たな価値を創出するため、コーヒークレイジーな仲間とともに準備を進めていく。

里見さん

原点の部分で我々の歴史や想いみたいなところは(トヨタと)重なるところがあるのかと思います。とはいえそれだけだと現実として何も生まれないと思いますので、運営とかはしっかりやらないと。相当チャレンジングだと思っています。

ただ私はチャレンジングなことに対して結構楽観的ですし、「よしやるぞ」というのは好きなので、あまり失敗を恐れずしっかりやりたいなと思います。

最初は、失敗したらいいかなとは思っているんです。「倒れるなら前に倒れろ」というタイプなので、そういう精神で(臨みたい)。