トヨタの各工場の歴史と、目指していく進化を紹介する連載シリーズ「トヨタ工場の継承と進化」。今回は、本社工場の現在と未来への挑戦を紹介。
【機械部】TPSの伝承者
初代プリウスからHEV(ハイブリッド車)に携わってきた部署であり、TPS(トヨタ生産方式)の伝承者。そんな一面を持つのが機械部だ。
鍛造部と同じく1938年からある機械部では、プリウスに使われているハイブリッドトランスアクスル(走行状況に応じてエンジンとモーターの駆動を調整、最適化する部品)を生産してきた*。
*現在、ハイブリッドトランスアクスルの生産については衣浦工場(愛知県碧南市)などに移管。
そして現在、機械部が軸足を置いているのが電池。2009年にリース販売されたプリウスPHEV(プラグインハイブリッド)を契機に電池パックの生産がスタート。
近い将来には、BEV用の大型電池パックの生産も予定されているほか、全固体電池についてはセル(単電池)の試作にも挑戦中だ。クルマ以外でも大型定置電源など可能性を広げている。
そして、機械部の重要な役割の一つが、TPS発祥の地として「TPS基本ライン」を有し、ノウハウの伝承を請け負っていることだ。
1953~57年の間、ここの部長を務めていたのが、TPSを体系化し、トヨタ自動車工業(現在のトヨタ自動車)の副社長も務めた大野耐一。
そんな大野の教えを受け継ぐ機械部の「TPS基本ライン」では、からくりや改善によって作業の正味率向上に取り組んでいる。
このTPS基本ラインについて、第4機械課 今井博志 組長はこのように語る。
機械部 第4機械課 今井組長
TPSを後世のトヨタに残さなくてはならない。その想いとともに、実践的な学びの場として生まれたのがこの基本ラインです。
このラインにはあえて必要最低限の設備のみを入れており、機械に頼らない手作業が主体の部分もあります。やみくもに機械に頼るのではなく、人にできることを模索する。トヨタの先人たちがそうしてきたように、我々にもそんな機会が必要です。
昨年は社外からの来場者も含めて約300名が見学に来ており、社内の人材育成に留まらず、多くの人がTPSの知見を持ち帰っています。