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全部やっちゃえばいい!挑戦はアスリートの原点 セカンドキャリア座談会

2024.06.26

引退を発表したばかりの宇野昌磨をはじめ、トヨタに在籍する元アスリートや現役選手ら計6名が集まりセカンドキャリアを考える座談会を開催。その模様をお伝えしていく。

多くのアスリートにとって、現役でいる期間よりも残りの人生の方が長い。選手たちは競技生活に別れを告げた後、第2の人生をどのように過ごすべきなのだろうか。

引退を発表したばかりの宇野昌磨をはじめ、トヨタに在籍する元アスリートや現役選手ら計6名が集まり、セカンドキャリアを考える座談会が開かれた。

初の試みとなる座談会に出席したのは、オリンピックなどで実績を残した元アスリート4名と、現役真っ只中の選手たち2名。トヨタイムズスポーツの森田京之介キャスターによる進行のもと、過去・現在・未来の自分について和気あいあいと語り合った。

左)寺尾悟さん(スケート⇒監督⇒ラリードライバー)48歳

冬季オリンピックに4回出場、世界選手権2回優勝、スピードスケートショートトラック界のレジェンド、現在はラリーに挑戦中。

右)三好南穂さん(バスケットボール⇒キャスター)30歳

東京2020オリンピック銀メダリスト。トヨタの選手の情報発信を支え、アスリートキャスターとしても活躍。

左)六埜雅司さん(野球⇒モータースポーツ)33

2016年の都市対抗優勝に貢献した左腕。現在はルーキーレーシングのマネージャー。

右)宇野昌磨さん(フィギュアスケート⇒?)26

冬季オリンピック2大会連続出場し3つのメダルを獲得、世界選手権2連覇。今年5月に引退を発表。

左)マルキ・ナシム選手(ビーチバレーボール部)26歳

身長194㎝、期待の若手。部内結婚した妻の溝江明香さんは今年引退し、セカンドキャリアを踏み出した。

右)福井章吾選手(野球部)25歳

大阪桐蔭高校、慶応義塾大学で主将としてチームを率いてきた頼れる若手。

寺尾悟、三好南穂らの挑戦のきっかけ

——まずOBの皆さんのセカンドキャリアに至った経緯を教えてください。

六埜 もともとクルマが好きで、現場に出て一番身近なところでクルマを見たいなというのがあったので。野球部のOBを通じて、ルーキー(レーシング)に行きたいですという話をさせていただきました。

三好 現役中もメディアに出ることが多く、コーチのときも選手がメディアに出るのを調整する仕事をやっていたこともあって。トヨタスポーツ推進部という部署でメディアの仕事に挑戦してみたいと伝えて、願いが叶った感じです。

寺尾 引退してから最低5年は社業を一生懸命頑張ると決めていました。5年間いろいろ経験を積んでいく中で、監督だとできないことが多分ここにつながってきていると思います。スポーツとモータースポーツの垣根をなくして、それが選択肢の一つになるといいかなと思ってます。

宇野 (引退した)実感はまだまだ湧いてないですけれども、 特に今は何もしていないです。本当に部屋でダラダラ・ゴロゴロって感じが主なセカンドキャリアです。22年間スケートをやってきたんですけど、それ以外の生活を全くしてこなかったので、何から手をつけたらいいかわからない。でも今が一番動かなければいけない時期っていうのも自覚してはいるんですけど。

宇野昌磨がイメージする「新しい道」

——現役の方は「セカンドキャリア」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

マルキ 今は何となく、ビーチバレーボールをメジャーな競技とか日本でもっと盛り上がるスポーツにしたいという思いがあるので、そちらの方に進みたいというのはあります。

福井 やっぱりこれまでスポーツの世界で学んだこと、自分の長所を生かして、新しいキャリアにもつなげていきたいという思いは持っています。

宇野 僕もここから数年間はフィギュアスケートに携わっていきたいと思っているんですけれど、もっと新しいものに取り組んでみたいという気持ちの方が強いです。小さいときは球技の方が好きだったけど、スケートをやるために例えばこれはやらないでおこうとか考えて生活してきたので。他のスポーツを楽しむとか、自分の新しい道が見つかったらいいなと思います。

チャレンジへの不安に、六埜雅司の回答

福井 特に六埜さんは野球部の先輩なので、全く違うところに飛び込んで仕事をされているのを聞いたときは、すごいなと思いました。トヨタという会社が多くの受け皿を持って、いろんなことにチャレンジできる環境であるのも確認できたので、セカンドキャリアの幅も広いんだろうと思っています。

六埜 トヨタって、これだけっていう仕事じゃなく、多岐にわたるので。自分にあった選択肢がいろいろあると思うし、自分がやりたいこともあるだろうし。ただ、そこにいけなかったからダメだとか、けっして思わないで欲しいなというのはあります。

——現役時代を上回るような刺激を受けることはありますか?

三好 選手をやっていると、一定のレベルまで行くと、小さい成長を取るために頑張るじゃないですか。社業に入るとゼロからのスタートだったので、パソコンすら打てない状況から、毎日の自分の進歩が大きいというのはすごい刺激で楽しいと思いますね。

マルキ ゼロから学び直すのは、自分に伸びしろしかないとポジティブに思いながら生活できるときもあると思いますけど、周りに完成された人(同僚)が職場にいる状況で、負い目に感じたりしないのかなと、ぼんやりとした不安も持っていて。その辺はどうなんでしょうか?

六埜 それはちょっと思いました。でも、今まで勉強してきた人の時間を、僕らは全部練習に費やしてきたわけです。だからスキルが低いのは仕方がない。わからないんだったら「わかりません」と聞くこと(が解決手段)だと思うんです。それこそスポーツをやっている人は、コミュニケーション能力であったり、そういうところに長けていると思うんですよね。

なりたい自分を見つけるために

——宇野さんは引退会見のときに、競技生活に向けていたエネルギーを向ける次の先を見つけたいと言っていました。その先を見つけるのは難しいですか?

宇野 スケートは引退した後もアイスショーという貴重な場があるので、そういったところに力を注ぎたいという気持ちもありつつ、それが何年も続くとは思っていないので、その先に果たして自分に何ができるのか。僕が集中力を発揮して高いパフォーマンスを出せるときは、自分から進んでやりたいとか楽しいと思えている瞬間。すごく毎日充実しているという実感を持って取り組めていると思うので、そういった何かを見つけられたらいいなって。これから先自分が何になりたいかと、本当に僕は今そんな気持ちです。ただ、僕はフットワークが軽くないですし、コミュニケーション能力も本当にないんですよ。

三好 私はとりあえず、依頼されたり求めてもらえることは、何でもやってみようとチャレンジをして、その中で「あ、これ自分に合っているな」とか、今の自分にしかできない方を選んできました。

寺尾 迷ったら全部やっちゃえばいいんですよ。

福井章吾が計画している40年後の自分

——セカンドキャリアを歩み出したときに、アスリートであったがゆえの弱点はありましたか?

寺尾 現役時代は先を計画して逆算してやってきたので、先を読みすぎると、時代と合うか合わないか、わからないところがあるんですよね。今想像しても解決しないことがたくさんあるのに、2年後5年後10年後のことを不安に考えるというのは、スポーツ選手の弱点かもしれない。なるようになると思いながらも、先を計画して考えていくと人生が楽しくなってくるので。それはそれでアリかなと思います。

福井 自分の人生ビジョンみたいなのは、40年後ぐらいまで計画があります。寺尾さんがおっしゃったように、自分でこうなりたいというのがないと、今何をやるべきかという選択が 曖昧になってしまうことはあるので、僕は決めてそこに向かってやっていくスタンスです。40年後だったら会社的には定年。野球に育ててもらったということは絶対に揺るがない思いなので、野球界の発展、特に社会人野球の発展に貢献できる取り組みをできればと思っています。

——競技の指導者になってみたい?

宇野 ないです。指導者は本当に素晴らしいものだし、難しいことだとわかっているからこそ、僕には向かないと思います。

マルキ ビーチバレーボールの競技の特性だと思うんですけど、今でもパートナーにコーチングとかしながら2人でやっている部分もあります。インドア時代には感じなかった将来コーチをやってみたいと思うことがあるので、引退後にトライできたらしてみたいなと思います。

三好 私は指導者に向いてないなと思っているんですけど、結果的にコーチを1年やっていたり、今もアルバルクユースのコーチやっています。全然思い描いたのと違うことをやっているなと思いますね。

マルキ・ナシムが妻の溝江明香から感じた引退後のキャリア

マルキ 皆さんが(セカンドキャリアを)決断した決め手は何でしたか?

六埜 「誰かが言ったからこの道に行きました」となったら、いい成績を残せなかったときに「あの人が言ったから流されちゃった」というのは嫌い。自分で決めて自分で突き進む。僕はそういうスタイルでした。

三好 キャスターも、東京オリンピックを経験してやってきたことを今度はパリで伝えられるようにとか。そういった、今の自分だからできることを優先して選ぶかなとは思っています。

——マルキさんも(妻の)溝江さんが隣でセカンドキャリアを歩み出しているのを見て、どうですか?

マルキ 会社では周囲のサポートをいただきながら、ゼロから業務をやって。本人がやりたいと思っていたスポーツキャスターの仕事も前向きに取り組めているのは、いいセカンドキャリアのスタートを切れたんじゃないかなと。僕も今からビジョンを持って、そのときが来たときに、できることをチョイスできればと思います。

宇野昌磨に「なるようになる」と先輩も太鼓判

——宇野さんのセカンドキャリアを探す旅をお手伝いするためには、強引に連れ出した方が良さそうですね。

宇野 僕は何年先の計画とかを現役のときから全く作らずに、毎日のことしか考えずにスケートしてきたんです。もちろん計画する良さもあれば、計画しても何が起こるか分からないのもあると思いますし、僕もこれから自分がどうなっていくかわからないですけれども。今日お話を聞いていたら、なるようになるかなって思えてきました。自分がやりたいことでもやりたくないことでも、やるって決めたら自分は後悔しないと思うので、気楽にゆっくり考えたいと思います。

寺尾 なるようになると思うんですよね。僕は3つポイントがあると思っていまして。1つは、挑戦するという気持ちは忘れない方がいいと思います。あとはタイミング。やりたいことをいつやるかって、けっこう重要だと思いますので。最後に、始めるのに年齢は関係ない。挑戦することはアスリートの原点だと思います。


——最後に、三好さんと福井選手に総括をお願いします。

三好 一人ひとりいろんな選択肢があって、その中で自分にあったものを選べばいいんだなというところで、トヨタアスリートは本当にいろんなセカンドキャリアの種類があります。そういった意味では素晴らしいなと思いますし、私もセカンドキャリアが始まったばかりなので、皆さんと一緒に頑張っていければと思っています。

福井 OBOGの皆さんが)現役をやり切ったという雰囲気がすごいありました。セカンドキャリアに進んで新しいことにチャレンジしているのをひしひしと感じたので、まずは現役をやり切ることが大事だと思いました。僕たち現役は、まず結果を残して会社の方に恩返し。そして、終わった後に会社員として恩返しできればいいと思うので、今の自分たちのスポーツに全力で向き合っていきたいです。

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