ミスター社会人野球がユニフォームを脱ぐことになった。今夏の都市対抗野球をもって19年間の現役生活に幕を下ろす。長年、社会人野球の第一線で闘ってきた佐竹功年が最後の大舞台にかける想いを語った。
1月26日、トヨタイムズスポーツの緊急生配信に出演した硬式野球部レッドクルーザーズの佐竹功年。今年の都市対抗を最後に現役を引退すると表明した。
自身の引き際を語る
「自分で辞めますとは言わない、辞めろと言われるまではやる」かねてから自身の引き際についてこう語ってきた。引退の経緯について、去年の12月、野球部の部長に呼ばれ「佐竹には来年の夏で引退してもらう」と言われたと説明。「わかりました」と答えたそうだが、「自分でもビックリするぐらい感情の起伏がなかった」と振り返り、むしろそのこと自体に驚いたという。
一方で、引退する選手はシーズン終了後に告げられることが通常の流れで、「本来、その日から野球がなくなるのが普通。僕の場合、ありがたいことに事前に言ってもらった」と感謝を口にした。実際、佐竹には大事な闘いがまだ残っている。
ミスター社会人野球がやり残したこと
佐竹はよく「ミスター社会人野球」と形容される。彼が社会人野球で残してきた実績を見れば、そう呼ばれることに違和感はない。
社会人野球における二大大会、日本選手権優勝は6回、都市対抗優勝は2回。それぞれでMVPや最優秀選手賞を受賞し、チームを日本一に導いてきた。19年目のシーズンを迎え、その集大成として今年最後の都市対抗で自身初の「連覇」に挑戦することになる。
都市対抗野球にとって連覇は高い壁だ。2000年代に入ってからは、1チームしか成し遂げていない。前年優勝チームに対するマークが厳しいことに加え、地区予選免除で試合間隔が空くことによる調整の難しさ、都市対抗名物の補強選手がいないことなどが要因として挙げられる。昨年の優勝に大きく貢献した松本健吾と補強選手がいないことを踏まえると、連覇に向けて佐竹の力は不可欠だ。有終の美を飾るに申し分ない舞台が夏に控えている。
トヨタ運動部における存在感、豊田会長との絆
佐竹の引退は、硬式野球部にとってだけでなく、トヨタの運動部にとっても大きなニュースだ。昨年夏、都市対抗前に行われたトヨタアスリートが勢ぞろいするBBQ大会。豊田章男会長の「トヨタアスリートは勝つことが使命」という言葉を受け、会の最後に音頭をとった佐竹が「まずは野球部が日本一になるんで、皆さん頑張ってください」と発破をかけた。実際、野球部は優勝し、女子ソフトボール部のJDリーグ、陸上長距離部のニューイヤー駅伝と日本一の栄冠が続いた。
トヨタアスリートのみんなのお父さん、豊田章男会長との絆も強い。番組内で紹介した「引退報告の電話」は、こんな会話で始まっていた。
佐竹:もしもし佐竹です
豊田:豊田です
佐竹:会長、お久しぶりです、ご無沙汰しています
豊田:戦力外通告されたんだって?(笑)
佐竹:そうです。肩叩かれました。お前は要らないって(笑)
豊田:要らないって言われたの?「誰にもの言ってんだ!」って言い返した?(笑)
佐竹:言わないです(笑)
豊田:言えよー(笑)
会長も、佐竹の「自分で辞めますとは言わない」という引き際への思いを知った上での会話である。その後、佐竹は、豊田の社長在任と自身の現役期間が重なることを引き合いに、オートサロンでのモリゾウの言葉を借りて「僕も野球好きのおじさんに戻ります」と告げた。
豊田会長は番組のチャット欄にも登場し、佐竹がやり残したこととして「都市対抗連覇」を口にした際、こんなコメントを入れている。
普通のクルマ好きのおじさんからの親心を感じた。
“ミスター社会人野球”が“普通の野球好きのおじさん”に戻るまで、トヨタイムズは全力で応援を続ける。