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愛知と岐阜の街がラリー色に染まった4日間ーー『ラリージャパン2023』ハイライト【前編】

2023.11.30

豊田スタジアムを起点に愛知と岐阜の一般公道を駆け抜けた「ラリージャパン2023」のDAY1 / DAY2の模様をダイジェストでお届け!

ヨーロッパやアフリカ、南アメリカなど世界中の道を駆け抜けたラリーの最高峰・世界ラリー選手権(WRC)。その最終戦となる第13戦日本ラウンド『フォーラムエイト・ラリージャパン2023』が、11月16日から19日まで行われた。
豊田スタジアムを起点に愛知と岐阜の一般公道で行われ、“ラリーのまち”として盛り上がった4日間の様子を、唯一の日本人ドライバーであるTOYOTA GAZOO Racing WRTの勝田貴元選手の活躍を中心に前・後編に分けてお伝えする。

ラリーは観客と最も近いモータースポーツ

世界トップレベルのドライバーとコ・ドライバーの9組(WRC1クラス)で行われるWRCシリーズ最終戦。22箇所あるSS(スペシャルステージ)は全行程およそ970kmあり、その合計タイムで勝敗を競い合う。

TOYOTA GAZOO Racing WRT(以下、トヨタ)はすでに、10月の第12戦のセントラル・ヨーロピアン・ラリーで年間マニュファクチャラー、ドライバー、コ・ドライバー部門の三冠を獲得。総合順位が確定したことでチームオーダーは存在しないため、各ドライバーが自分らしい走りをいかんなく発揮できるラリーとなる。さらに、王者トヨタの地元での凱旋イベントということも加わり開催前より大きな注目を集めた。

本大会に参加するドライバー/コ・ドライバーは以下のペア。もちろんマシンはいずれもトヨタGR YARIS Rally1 HYBRIDだ。

今回のイベントの起点となるのは、特設コースとラリーカーを整備するサービスパークが設けられた豊田スタジアム。DAY1の11月16日に行われたスタジアム内特設コースでのスーパーSS(SSS)を皮切りに、一般道や公園など全行程をターマック(舗装路)でおこなう市街地ラリーとなる。

およそ1ヵ月をかけサッカーグラウンドからラリーコースへと改修された豊田スタジアム。剥がした芝生は富士モータースポーツフォレストなどで再利用されている
豊田スタジアムの特設コースでセレモニアルスタートを待つラリーカー

豊田スタジアム周辺に集まった多くのファンが注目するのは、去年のラリージャパンで3位表彰台に上った勝田貴元選手の存在だろう。
イベント前には「最初から全開でプッシュし、ファンに楽しんでもらえる走りをしたい」と意気込みを語った勝田選手。愛知で生まれ育ち、祖父と父に続く3代目のプロラリードライバーの彼にとって本大会はホームラリーという特別な意味を持つ。

初心者でも楽しめた 街全体がお祭りムードの4日間

豊田スタジアムの周辺にはモニュメントやイベントスペースが設置され、街全体がラリーというお祭りを楽しんでいる様子が伝わってくる。

お祭りといえば、2日目と3日目のスーパーSSに先立って行われたスペシャルデモランに、なんとWRCを4度制したユハ・カンクネンが登場。1993年にグループAラリーでトヨタに初タイトルをもたらしたST185型トヨタ・セリカGT FOURを駆り、技術の伝承のため今回レストアされ復活した三菱・ランサーエボリューションIIIとともにスタジアムのコースを走行した。

どちらも当時活躍した本物のマシンとあって、往年のファンはもちろん伝説として知る若いファンも大興奮となった。

「トヨタ・セリカGT FOURには、サファリラリーで勝利するなど素晴らしい思い出が詰まっている。ここで再びドライブすることができ最高の気分だ」と走行後にカンクネンが語ると、今年春に豊田章男会長がセリカ復活を願うコメントを出したことで再び注目が集まっているせいか、会場からは一際に大きな拍手が沸き起こった。

展示エリアには、トヨタ自動車が開発中の水素エンジンを搭載したカートとカーボンニュートラル燃料で走るカートも登場。水素エンジンカートでは、小林可夢偉選手や平川亮選手、中嶋一貴氏らによるデモランも行われ、脱炭素社会の実現という未来へ向けたトヨタの取り組みを、モーターファンが楽しめるエンターテインメントとしてアピールした。

スタジアムで観戦していたトヨタスケート部の横山大希キャプテンが「1番迫力がありました!」と話すのが、日野レンジャーのデモラン。スタート地点のゲートに迫る巨大な車体と、ダカール・ラリーでクラス12連覇を達成した菅原照仁氏によるパワフルな走りは他のクルマとは一味違う強烈さ。モータースポーツのレジェンドをはじめ、クルマの未来へのビジョンをも感じさせてくれる、まさしく“スペシャル”なデモとなった。

DAY1 豊田スタジアムでのデュアルマッチからスタート

初日となる11月16日(木)のDAY1、『ラリージャパン2023』最初のタイムアタックは、今年から取り入れられたスーパー・スペシャルステージ(スーパーSS)。通常はサッカー場として使われるフィールドを一ヶ月かけてラリーコースに改修した立体的なサーキットで、2台同時スタートのデュエルマッチ形式を採用する。

客席からコースまでの距離が近い大迫力のスーパーSSを制したのは、昨年のラリージャパンの覇者であるヒョンデのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組。今季のチャンピオンを決めたトヨタのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組と競り合い、1:47.6という好タイムを叩き出し総合トップを獲得した。

観客席の目の前をラリーカーが激走!

ヌービル選手と約3秒差で5位となった勝田選手は、「プッシュしすぎてミスを招いてしまった。明日以降のステージはより整った走りで良い走りを見せたい」とコメントし、DAY2への期待感を高めてくれた。

DAY2 午前のループはクラッシュ続出の大波乱

山岳コースでの本格的なタイムアタックが始まるフルデイ初日となったDAY2。

オープニングは、本大会最長の23.7kmの伊勢神トンネルを通るSS2。車両一台分ぎりぎりの幅しかない細く長いトンネルを時速200kmに迫る全開で走行するラリージャパン屈指の注目SSだ。

このSS2で勝田選手は、スタートから11.8kmの地点でトラクションを失いスピン。路肩の立木にヒットして右フロントを大きく損傷してしまう。

比較的グリップが良好なターマックといえど、日陰の林道コースには苔が生え、レコードラインの外側には落ち葉が積もる。そのせいか、後続のダニ・ソルド選手(ヒョンデi20 Nラリー1)や、アドリアン・フルモー選手(フォード・プーマ・ラリー1)も同ポイントでクラッシュしてしまう。道路下の沢に転落したものの、幸い大きな怪我はなかった。

勝田選手の18号車は、ラジエーターにまでダメージを受け停車してしまう。アタック中は外部のサポートを受けられないため、雨のなか勝田選手自ら応急処置をおこない、用水路の水を漏れた冷却水の代わりに補充して、なんとか走行できるまでのリカバーに成功する。

続くSS3は、内燃機を使わないEVモードでしのいだ勝田選手。大雨のためキャンセルとなったSS4をスキップし、豊田スタジアムのサービスパークに帰還するなど、選手には気の毒だが、ドライバー自らがトラブルシュートをおこなう姿をファンは目に焼きつけることができた。まさに、ラリーの醍醐味といえる展開だ。

「スタジアムに戻って来られただけでも幸いだった」と話すほどのダメージを負った18号車だったが、メカニックの奮闘によりサービスタイムの40分間ギリギリで新車のように蘇ると、サービスパーク前で作業を見守っていたファンから大きな声援が生まれ、午後のループに向かうことができた。

リフレッシュして午後のループに向かう18号車

勝田選手はリフレッシュされたクルマで危なげなくSS5、SS6へと繋ぎ、愛知県北東部の山間部を抜けるSS7まで、3セクション連続のトップタイムをマークする離れ業を見せた。

波乱含みのフルデイ初日のDAY2だったが、終わってみればトヨタ勢が上位三位を独占。

勝田選手はDAY2ラストの豊田スタジアムでのSS8では1秒差の2番手につけるなど、クラッシュを乗り越えトップと総合タイムで5分7秒差に迫る猛チャージを見せ、9位でフルデイ初日を終了。進化した走りでファンを魅了した。

SSをつなぐ移動区間のリエゾンにも多数の観客がつめかけた

DAY2までの総合リザルトは以下の通り。

DAY3と最終日DAY4の模様は「後編」でレポートする。

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