トヨタの強化運動部、アスリートたちを指導する3人が集まり「人材育成」に関する座談会を開催!さまざまな組織運営に役立つ、トヨタ流の人材育成方法とは?
選手からの評価に苦笑い続出
座談会では事前に、硬式野球部の北村祥治選手、女子バスケットボール部の山本麻衣選手、スケート部の横山大希選手ら各部のキャプテンから、監督たちについてどう思っているかのインタビューVTRを収録。予告なしにVTRを披露された3人の表情からも、選手との関係性が伺える。
【VTR】北村祥治選手(硬式野球部)
藤原監督は、監督というよりかは先輩というような感じで、選手主導ですべて任せてくれる心の広い監督です。すごくやりやすい環境で野球をやらせてもらっていると思います。直してほしいところは、都市対抗とか日本選手権で監督がTVで抜かれることがあるんですけど、「眠そうな顔をしてる」と言われています。リラックスしてベンチにいてくれる方が選手としてはすごく助かるのかなと思いながらも、たまには気合いの入ったキリッとした顔を見せていただけるとうれしいかなと思います。
藤原
北村、ありがとう。 試合中(カメラで)抜かれるとき「なんて顔しているんだ」と思いますけど。飲み会とかでも「眠そうですね」ってよく言われます。
【VTR】山本麻衣選手(女子バスケットボール部)
大神HCは選手のときのイメージと変わらず熱い方です。シュートを決めときのガッツポーズだったり、 一緒にワッとなってくれるので、本当に熱いなと思います。顔に表情が全部出るので(笑)。熱すぎるのは良いんですけど、たぶん空回りして噛んじゃうっていうのは直してほしいと思います。いつ会っても常に明るいシンさん(大神HC)で、自分も声掛けでポジティブなことを言おうと思っているので、そこは意思疎通できて、いろんな言葉に変えながらできているなと思います。
大神
うわ〜、 バレバレですね。明日会ったらビッグハグしますよ。
【VTR】横山大希選手(スケート部)
寺尾監督は、現場が好きな人。2週間くらい練習に来られなかった後、「やっぱ現場はいいな!」って、いっぱいしゃべってたんで。日本のショートトラックと言えば「寺尾悟」というのがあって、 僕らの中ではレジェンド。アドバイスが頂けることと、W杯とかに行ったら役員の席に見知った顔が座って見ているのは、ある意味プレッシャーですけど、安心感もあります。たまにツッコミに困るボケをしてくるところがけっこうあって、そこは直していただきたいです。
寺尾
(レーダーチャートに)「ワイン」と書いたじゃないですか。 あそこを最初「親父ギャグ」って書こうとしてたんです。時代がやっぱりズレているんですよね。知らない芸能人だったり歌手だったり出てきちゃうので、たぶんその辺が困ってるんだろうなって。
チームの目標は具体的に設定すべきか
チームが目指すべき姿を、具体的に説明するのか、抽象的なイメージで伝えるのか。その目標設定や表現の方法について聞いた。
寺尾
僕は今年、ゴールへ一直線というよりも、多少ガタガタであっても、少しでも右肩上がりで行きたいっていう話を選手にしました。4月にシーズンが始まって、世界選手権は1年後なんですよね。うまくいかなかったときに頑張ろうと来年3月に気付いても遅いので、早いうちに試合に近い気持ちにいかに持っていくかが大事かなと思っています。いったんプレッシャーを与えて、そこは押し切っていきたいというのが僕のストーリー。そこを意識すると、目標設定が明確な部分と抽象的な部分、その両方が出てきてしまうのかなと思います。
藤原
都市対抗3連覇は、就任当初からブレないところ。その先に何をやるか、社会人野球でどういう価値を出すのかまでを話しているつもりです。子どもたちに憧れられるような、抽象的な目標もすごく大事だと思っていて。年初には抽象的なことを話し、みんなでいろいろチャレンジしようというイメージ。細かいことはコーチが数値や方針を出して、それを選手が自分ごとに落とし込んでいく感じですかね。
大神
チームでティップオフ(スタート)のミーティングをするときには、明確な目標を出すんですが、そのゴールは1つじゃなくていいと思っています。もちろん、チームとして2冠を獲るという優勝目標と、人としてどうしていくのかという2つのゴールがあったうえで、目標は思い切って高く掲げますね。
間違えちゃいけないのは、方法や手段がゴールにならないこと。必ずチームの結果目標は最初に伝えて、そのために自分たちがどうしていかなきゃいかないかは、方法や手段なので。
藤原
いろんな考え方があっていいと思うし、目標に向かっての方向は、人によって考えが違うじゃないですか 。いっぱいあった方が幅も広がるし、 こちらの学びにもなるので、高め合えるみたいなことがあると思います。
寺尾
選択肢が1つとなると、僕らも自分たちの首を絞めることになってしまう。抽象的な部分があるからこそ、 そこにたどり着くまでのゴールがいろいろあると思います。究極でいくと、スケートがずっとオリンピック種目である保証なんて一切ないですよね。その魅力を伝えるのも選手自身だし、エンターテイメントとしてサポートするのが僕らの役目でもあると思うので。自分たちが切り開いて、もっと盛り上げて行けるって、緊張感を持ってやらないといけない。藤原監督の「社会人野球に何ができるか」は、まさにおっしゃる通りです。
指導者同士が語るのも、貴重な学びの場に
最後に、チームづくりにおいて大切に思っていることを総括し、座談会を締めくくった。
寺尾
監督同士でこう本気で話し合えるってのは、なかなかなかったと思うので。どれが正解ということはなくて、我々自身がトライすることで、選手に選択できる幅が広がることに改めて気付きました。正解を教えるよりも、選択肢を与えることが大事。それぞれの現場でどういったことをされているのか、 スポーツを見る側としても新しい視点として学んでいきたいと思いました。
藤原
こんな貴重な機会、やっぱりトヨタっていいなって思いますね。いろんな人がいろんな意見を出して、チームの目標に向かって進んでいくのがすごく大事なので。僕らは、どういう環境づくりをするかとか、どう後押しをするか、どう舵取りをしていくのか、なんだと思っています 。目標に向かって僕らが逃げちゃいけないっていうか、本気じゃないといけないんだろうなと思って。 「こういうチームいいよね」っていう存在でありたいと思うので、こういう機会をまたやりましょう。
大神
「学ぶ」ことは私たちにも大事で、それが成長にもなっていくと思います。たぶん学びをやめたとき、私は指導者を辞めなきゃいけないんじゃないかって。「コーチ」の語源は、ハンガリーの「コチ」という、馬車がスタートした場所だと聞きました。私たちは馬車のように、目的地に導く役目だと思うんです。導くために、サポートするのか、オプションを与えるのか、情熱を持ってきっかけを与えるのか、そういうところを今日気付かさせてもらえたなと思うので。選手に伝わってこそのコーチングだと思うので、共有ではなくて共感してもらえるように今後も成長していきたいと思います。
座談会の動画は、2023年8月11日11:50からYouTubeで生配信されるトヨタイムズスポーツにてお楽しみください。