トヨタイムズスポーツ
2023.04.12

「配球に正解はない、でも不正解はある」レッドテリアーズ正捕手が学んだこと

2023.04.12

JDリーグ開幕を迎える、女子ソフトボール部レッドテリアーズを取材。新人をはじめ、今シーズンの注目選手を元日本代表の峰幸代さんと共に紹介していく。解説の中で飛び出す"峰語録"にも注目だ。

4月7日に配信されたトヨタイムズスポーツは、女子ソフトボールを特集した。「超戦」をスローガンに掲げ、4月15日にJDリーグ開幕を迎える新生レッドテリアーズ。昨シーズンのプレーオフでの悔しい想いを乗り越え、選手たちは自分をどう超えようとしているのか。2度のオリンピックで金メダリストになったOGの峰幸代さんと取材し、今年のチームの見どころを探った。峰さんの的確なコメントや表現力にも注目だ。

峰幸代さんのコメント力が昨年を超えて成長

4月を迎え、トヨタ本社で行われた入社式にも、新社会人となったトヨタアスリートが出席。レッドテリアーズからは、門里唄選手、舟阪育枝選手、高島歩選手、片岡僚子選手、丸本真菜選手の5人が参加していた。新人アスリート特集は4月後半の放送を予定しているのでお楽しみに!

特集のスタートは、桜が満開に咲き誇るトヨタスポーツセンター。ソフトボール日本代表で3人しかいない北京2008・東京2020のオリンピック2大会での金メダリストである峰さんが、森田京之介キャスターと一緒に古巣の練習を取材した。

今回の見どころの一つは、峰さんのコメント力。視聴者のチャットでも「アボットの球受けてたキャッチャーからのコメント説得力すごい」「ドンドン話すの上手くなってないか」という声が集まるほどだった。引退から1年を経て成長を続けている峰さんのコメントは、選手たちも聞くのが楽しそうだった。

馬場監督が掲げる課題と期待

インタビューに答えた馬場幸子監督は、「超戦」という言葉について「選手がみんなで考えてくれました。一人ひとりがまず自分を超えていく戦いをしていこうという想いがこもったスローガン」と語った。

「日本一になります!」と目標を宣言した馬場監督。投手陣はチームを14年支えたモニカ・アボットさんが去ったが、後藤希友選手、三輪さくら選手という左右のエースは強力。昨年から成長を続ける石堂紗雪選手、新人の丸本真菜選手にも期待が集まる。

チームの課題は、相手チームの投手がいいピッチングをしている時に、自分たちの攻撃をどうするか。それが浮き彫りになったのが、昨年のプレーオフ。ダイヤモンドシリーズの準決勝は7回まで0対0が続き、延長8回にホームランを打たれて敗退した。馬場監督は「チームとしてどういうことをしなければいけないかが、本当に大事だと思い知らされました」と振り返る。

忘れられない一球を糧に成長する切石結女

スタジオでは、その決定打のシーンをVTRで振り返った。峰さんは「西地区を優勝した後に勝ち切れなかったという悔しさがにじみ出てきます」と、本当に悔しそう。

続くインタビューは、決勝ホームランを目の前で打たれたキャッチャーの切石結女選手。当時のことを「勝負に行ってああいう打たれ方をしたので。(配球に)正解はないと峰さんもよく言うんですけど、あれは正解ではなかった。あそこで我慢できていればホームランはないですし、重い一球でしたね」と語った。

自身も捕手だった峰さんは「一生忘れられないと思います。この配球をしたらどうなると想像できるようになっていくんじゃないかな」と後輩にエールを送る。スタジオでも「(配球に)正解がないと言いますが、不正解はあるんです。不正解をいかに多く経験して、改善をどれだけ繰り返すかというところも重要になってくると思います」と解説し、切石選手の成長を確信していた。

昨シーズンに正捕手を1年間経験し、「後半戦になるにつれて対応できなかったり、私も変えていかないといけないと学んだ。自分を変えたり配球を変えたりするのは勇気がいることだと分かりましたし、今年はどう思い切ってできるかが大事」と話す切石選手。打撃面でも昨年を上回る成績を目指し、「ガンガンいって勝利に貢献したい」と抱負を述べた。

三輪さくらが考える柔軟な投球スタイル

番組ではチームのカギを握るキーパーソンの3選手に注目した。投の主役は、多彩な変化球を持つ三輪さくら選手。峰さんも「投げられるボールの種類は格段に多く、ストレートの球威も上げようとしていて、かなり器用で面白い選手」と評価している。

昨年までは、試合で主にストレート、チェンジアップ、ライズを中心に組み立てていた。「細かいところは内緒なんですけど、ひとつ練習していまして」と話し、今年は残りの持ち球であるドロップ、横に曲がるカーブ、遅いライズから磨きをかけたものを、実戦でも使っていくという。

「今まで自分のピッチングスタイルだと思っていたものを一歩引いて、対相手となった時に自分の先入観やこうでありたいというのを超えて選択しました」と、ピッチングの幅を広げた三輪選手。峰さんは「めちゃめちゃ心強いですね。柔軟な考え方があるピッチャーの方が、コンスタントにいい結果が出せるんじゃないかな」と太鼓判を押した。

下山絵理が「打点王」にこだわる理由

バッティングでは、下山絵理選手に期待が集まる。目標としていた日本代表にも初めて召集された。峰さんは「相手も海外の選手だと刺激が多く、上には上がいるという発見があるのは、彼女にとってすごく大きい。代表の経験はそのままレッドテリアーズの力になってくると思う」と解説する。

昨年はホームランの本数を目標に挙げていた下山選手だが、「ここぞという時に得点できなかったのも反省しないといけない」と話し、今年の目標を「打点王」に切り替えた。「このバッターに回したら絶対得点できるとか、そういう信頼される選手になることが必要。結果が出なかったとしても、自分のやるべきことを積み重ねていく。ランナーがいる時こそ考えをシンプルにして、ヒットを打っていくことを心がけたい」と語る。

峰さんは「ここぞという時にホームランじゃなくていいから、点を導くことがチームを勝たせるという考え方になってきた」と、チームの主軸としての下山選手の成長を喜んでいた。

新加入のベテラン 原田のどかは「一家に一台」

移籍で新加入してきたのが、14年目の原田のどか選手。外野守備での強肩には森田キャスターも注目しており、自身も「守備が一番自信があるところなので」とコメント。代表チームで返球を受けたことのある峰さんは「返球が一番捕りやすいんです。ダントツですね。速さとコントロールと、回転もすごいきれい」とベタ褒めしていた。

原田選手は「自分が経験してきたことを還元できるようにすることと、気持ちの面でも元気を出して頑張って、日本一に貢献したい」と目標を語った。そんな彼女の存在を、峰さんが「切り込み隊長やムードメーカーの要素があって、若手とベテランをつないでチームを底上げしてくれる、一家に一台みたいな」と表現していた。

峰さんはここだけの話、自分たちが引退してから若手主体となったチームを「若テリアーズ」と表現することに、「おばちゃんたちいなくなったぜみたいな雰囲気」と引っ掛かるところがあったそうだ。原田選手が自分のことを「おばテリアーズ」と呼んだのに対して、峰さんは「なんちゅう言葉を…」と絶句しつつも、若いチームに経験や強い気持ちを注入してくれることを期待していた。

キャプテン鎌田優希らがリモート出演

この日の放送はVTRだけでなく、生中継でも主将の鎌田優希選手ら4人が出演した。「冬の間から個々の筋肉トレーニングだったり、技術も鍛えてきました。新メンバーも加わって新たなレッドテリアーズをお見せできると思います」と鎌田選手は話していた。

キャッチャーの藤家菜々子選手は「4人のピッチャーが試合でしっかり力を発揮できるようにして、去年より強い自分を試合で見せられるようにやっていきます」。伊波菜々選手は「去年の盗塁数(15個)を超えて、盗塁王を獲ります!」。長谷部陽香選手は「本塁打を5本以上打って、チームの勝利に貢献します」と、それぞれが昨年より超えていきたいものを紹介した。

鎌田選手は「1試合1試合をしっかりと戦いたい。見てる人たちも楽しませることができるようなソフトボールをやって、最終的に勝つ試合をしたいと思います」と意気込みを語り、豊田市でレッドテリアーズ仕様のコミュニティバスが実現したこともPRしていた。

ノック志願の森田キャスターが感じたこと

取材の合間には、森田キャスターが自らの希望でノックを体験した。自分のグローブを持参する気合いの入れようで、峰さんとキャッチボールしてウォーミングアップにも熱が入る。

ショートの位置で坂元令奈コーチの強い打球をしっかりとキャッチし、1塁へと送球する森田キャスター。他の競技のチャレンジで失敗するシーンが続いていたが、ここでは野球経験者としての面目を保った。峰さんも金メダリストの軽やかなフィールディングを披露していた。

約15分のノックを受け、グラウンドに倒れこんだ森田キャスター。「めちゃくちゃ楽しかったです。ボールの感触とか音とかもそうですし、やっぱりソフトボールっていいなと思いました」と満足げだった。

レッドテリアーズの開幕戦は4月15日、福岡県の北九州市民球場で、対戦相手は日本精工ブレイブベアリーズ。5月の交流戦や9月の全日本総合選手権、そして11月のポストシーズンへと、長い戦いが始まる。

ヴェルブリッツ「雷神祭」にも選手らが登場

この日の放送では、ラグビー部ヴェルブリッツの公式Youtubeチャンネルで公開されている、フィギュアスケート紀平梨花選手のラグビー初観戦の動画に入りきらなかった映像を披露。ファン感謝イベント「雷神祭」の様子や、姫野和樹選手への直撃取材などが特別に公開された。

映像に登場していたのが、他の強化運動部と一緒に「雷神祭」をお手伝いしていたレッドテリアーズの選手たち。山田柚葵選手や石野江里佳選手らが紀平選手をもてなす様子を見ることができる。他のトヨタアスリートを応援したりファンを楽しませることにも一生懸命な彼女たちが、本気でソフトボールに打ち込む姿を応援しよう!

毎週金曜日11:50からYouTubeで生配信しているトヨタイムズスポーツ。次回(2023年4月14日)は、女子バスケットボールを特集する。Wリーグも大詰めを迎え、3連覇を目指すアンテロープスはプレーオフのセミファイナルを快勝。勢いに乗るチームを取材し、放送翌日から始まるファイナルを展望する。ぜひ、お見逃しなく!

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