「トヨタさんが来る...」。トヨタ生産方式の積極的な取り入れに不安があった仕入先。だが一緒に改善に取り組む中で意識は徐々に変わっていき...。
膝をつき合わせて
梅村工業 梅村社長
トヨタさんやTier1メーカーさんが毎週時間を割いてくれていましたが、本当の気持ちを言うと、最初は「こういうところが悪いから直しといてね」、次に来たときに結果をチェックされて、「まだこういうところが悪いから直してね」(と言われるかと)。そんな浅い感じかなと思っていました。
それが実際には、膝を突き合わせて、本当にトヨタさん、林テレンプさんとずっと一緒に、一つずつ(困りごとを)潰していくことができました。
グル連活動が進むにつれて、現場には余裕が生まれ、梅村工業からの参加者も増えていった。
活動当時は内装システム企画部に所属していた、林テレンプのインテリアバリューチェーン部 石川浩隆部長は、徐々に現場が活気づいてきた様子を振り返る。
林テレンプ 石川部長
最初は(梅村工業から活動に)出せる人も3人ぐらいと言われていたんですが、気づいてみれば、林テレンプよりたくさんの人が活動に参加いただいているような状況で、だんだんとやる気も上がってきたんだろうなと思います。
改善活動はこのように、3社が一緒になってやっていけば実を結ぶということを分かっていただけたかなと思います。
一番嬉しかったのは、「社員の方のモチベーションが上がった」という言葉を聞けたことですね。
一方で「梅村工業さんで成功例ができましたが、じゃあ次に手を挙げる会社さんがあるかというと…。やっぱりまだ構えている」と課題も。
「ムリ、ムラ、ムダ」を徹底的に突き詰めるTPSの考え方の1つが、“休むことのない労働”をイメージさせるのかもしれない。
トヨタから参加していた、調達技術・プロジェクト推進部 ものづくり改革室の岩田純一グループ長も、活動を始めるまでのハードルの高さを感じている。
トヨタ 岩田グループ長
TPSをやると旨味がわかるんですよね。でも「難しいだけ」みたいなイメージが(払拭できない)…課題ですね。
事前にもっとわかりやすく、「いいでしょ」と言えることができればいいんですけど、やってみるとわかるというのが難しいところ。
梅村工業と活動に取り組む際には、「『現場のみなさんの仕事を楽にしたい』というTPSの目的をお話しし、時にはトヨタの現場に来ていただいたり、どのような効果が生まれるかも言語化・図示化して伝わるように努めました。その効果と想いが伝わり、一歩踏みだしていただけました」と振り返る。
前回のトヨタイムズ記事で、熊倉本部長がSSAを通じて原価低減が図られた分は、「仕入先さんに(利益を)受け取ってもらっています」と語っているが、この考えはグル連活動も同じ。活動を通じて得られた成果は、仕入先の原資に活用されている。
「会社としてもエネルギー費や人件費といった経営課題がある中で、原価低減で結果を出せたというのは本当に良かったです」と梅村社長。
活動は2024年5月に最終報告がされた。だが梅村工業では、今回の学びをほかの生産ラインや工場にも展開していくという。
改善のサイクルが回り始めている。