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モビリティ×AI・通信で交通事故ゼロへ NTT・トヨタ協業

2024.10.31

「交通事故ゼロ社会」に向けて、NTTとトヨタが新たな一歩を踏み出す。両社が構築していく「モビリティAI基盤」とは。

高速・高品質な通信インフラと膨大な情報を賢く処理するAI(人工知能)の力で「交通事故ゼロ社会」の実現へ。日本電信電話(NTT)とトヨタが協業を深化させる。

両社は31日、都内で会見を開き、モビリティ分野における新たなAI基盤の開発を共同で進めていくことを発表した。

モビリティAI基盤

コネクティッドカー*の普及を見据えて、2017年からデータ処理基盤などの技術開発で協業を進めてきた両社。20年には、クルマ単体からクルマも含めた社会全体へと視野を広げ、スマートシティの基盤づくりを目指した業務資本提携を結んでいる。

*情報通信端末のように情報のやりとりができるクルマのこと。さまざまなサービスを享受できるとともに、社会のセンサーとしての機能にもなりえる。

このとき会見に臨んだ豊田章男社長(当時)は、両社が見据える未来について次のように語っている。

「両社が描く未来の真ん中には『人』がいます。『笑顔』の人がいます。『ヒューマンコネクティッド』。それが私たちの目指す未来社会です。」

それから約4年半。両社は協業をさらに深め、「交通事故ゼロ社会」を実現するための次のステップへ踏み出した。切れ目のない通信基盤と、大量のデータを賢く処理するAI基盤や計算基盤を組み合わせた「モビリティAI基盤」を共同で構築する。

佐藤恒治社長は会見で、トヨタの安全・安心への想いを語った。

トヨタ 佐藤社長

今回、次のステップとして、両社でモビリティ社会を支える「AI・通信基盤」を構築し、「クルマの未来を変える」取り組みを加速してまいりたいと思います。

クルマの価値を広げながら社会システムとの融合を視野に入れて、モビリティの多様な価値を生み出していく。

私たちはそれを牽引するクルマがソフトウェア・ディファインド・ビークル、SDV*であると思います。

*ソフトウェアによって自動車の機能がアップデートされることを前提に設計・開発されたクルマ。

クルマ屋のトヨタが考えるSDVの最も重要な提供価値は「安全・安心」。すなわち交通事故ゼロの社会に貢献していくことです。

それは私たちが目指している「すべての人に移動の自由をお届けすること」にもつながってまいります。

社会とつながる安全・安心なSDVを実現するために、まずクルマ側ではソフトウェアプラットフォームのArene、そして電子プラットフォームも刷新してまいります。

例えば必要なデータを抽出し、賢く適切な通信手段でデータを収集できるようにしたり、ソフトウェアをスピーディにアップできるよう、アップデートできるよう電子制御システムを大きく見直してまいります。

「モビリティ」と「AI・通信」の未来

SDVを通じた事故防止のアプローチは、大きく分けて2つ。

1つは街を走るクルマの大量のデータを、AIが自ら継続的に学習し、スピーディにソフトウェアを改良し続ける、データドリブンな「高度運転支援/将来的な自動運転システムの開発」。

もう1つは、ヒト・クルマ(モビリティ)・インフラから得られる情報を集め、死角を減らしたりするなど、「三位一体」のインフラ協調型の取り組み。

これらの実現には、高速・高品質な通信環境が求められ、同時に膨大な情報を扱うため、通信量やデータ処理量も増加する。トヨタの試算では、SDVの増加に伴い、2030年にはデータ通信量が現在の22倍、計算能力は150倍必要になるという。

NTTと新たに構築していく「モビリティAI基盤」を構成する要素は次の3つ。

①分散型計算基盤(データセンター)
クルマなどから収集した膨大なデータを蓄積、処理するデータセンターを分散した場所に設置。再生可能エネルギーが豊富な地域に立地させることで電力の地産地消などが実現できる。

②インテリジェント通信基盤
ヒト・モビリティ・インフラを連携させ、さまざまなデータを収集する通信基盤。市街地や地方・郊外などの交通環境・状況に適した切れ目ない通信を実現。

AI基盤
「分散型計算基盤(データセンター)」と「インテリジェント通信基盤」を土台に、ヒト・モビリティ・インフラから得られるデータを学習・推論するモビリティAIを実現する基盤。

NTTの島田明社長は、「こうしたAIを組み合わせて、交通事故ゼロや自動運転の高度化、ヒトによりそうAIエージェントなど、さまざまなモビリティサービスで豊かな社会をつくります」と説明し、次のように続けた。

NTT 島田社長

トヨタとNTTで、「モビリティ」と「AI・通信」の未来を描き、住みよい地球と豊かな社会をつくっていきます。

そして、この取り組みにご賛同いただける仲間を増やしていきたい。この取り組みの輪を広げていきたい。そのように考えています。

佐藤社長の「クルマの未来を変えていこう」という想いを、両社とパートナーの「人のチカラ」と挑戦で一つひとつ実現させ、住みよい地球と豊かな社会をつくり上げたいと、心から思います。

今後の取り組みにご期待いただきたいと思います。

開発は5,000億円規模を投じ、2025年からスタート。28年ごろから社会実装を始め、30年以降の普及拡大を目指す。

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