「トヨタさんが来る...」。トヨタ生産方式の積極的な取り入れに不安があった仕入先。だが一緒に改善に取り組む中で意識は徐々に変わっていき...。
誰もできないと思っていた
成形・W/J(ウォータージェット)裁断では、加熱ヒーターやプレス機、ウォータージェットといった設備が使われている。この工程では、段替え*時の設備停止にムダな時間が発生していた。
*段取り替えの略。製品や工程内容に合わせて装置や治具の交換・設定変更を行う作業。
改善にあたっては、作業にかかっている時間の計測、映像を撮影して解析するなど、トヨタの手法を導入。型や材料の置き場を作業者の近くになるよう見直し、段替え作業にかかる時間を短縮。その分設備の可動率*は67.9%から82.6%に向上した。
*設備を動かしたい時間に対して実際に動いた時間の割合。段替え作業や故障などで停止すると、可動率は下がる。
この可動率、グル連活動開始時の目標は74%だった。少量多品種を扱う(段替えが多く発生するため停止時間が長くなる)工程ということもあり、梅村工業のメンバーは「誰もできないと思っていた」という。
だが、からくり製作と同じく、こちらもトヨタや林テレンプの経験値が加わったことで、日々数値は改善。当初の不安はいつしか「次の改善までに(目標値の)もっと上を行ってやろう」という自信に変わっていった。
活動前、なりゆきだと46時間/月発生するとみられていた残業時間は、活動後にはゼロになっている。
カンとコツからかんばんへ
グル連活動を通じた改善はほかにも。
生産の順番を決める仕掛け作業では、「かんばん」を取り入れている。これまでカンとコツに頼っていたため、在庫の過不足が発生することがあった。ここに、使ったものを使っただけつくる「後補充」の考え方を取り入れて適正管理を徹底。
結果として製品在庫、原反の在庫ともに半減させることに成功した。
こうした、からくりやかんばんの導入、可動率向上の取り組みは、トヨタではおなじみのもの。だが梅村工業でも最初からうまくいく確信があった訳ではない。従前の業務に加えてグル連活動まで手が回るのか…。梅村工業で活動の統括責任者を務めた河合克哉 製造部長が、当時の想いを、このように語ってくれた。
梅村工業 河合 製造部長
最初のころはトヨタさんが来るということで構えていました。自分たちがどこまでできるかも全くわからない状態で、はっきり言えば、「どこまで意見を言ってくるんだろう」と。そう思っていたら、意外と自分たちの意見を第一に優先して話を進めてくれたのでやりやすかったです。
梅村工業が活動に取り組んだのは、2023年6月~24年5月。すでに、ほかのTier2の事例も生まれていたが、梅村恒次社長も当初は半信半疑だった。