米国関税や他メーカーとの国際競争など、事業環境は一段と厳しさを増す自動車産業。生き残りをかけて、労使が実行に移すべきアクションは何か?
生産性や能率の指標とは…
ここから労使の話し合いは、さらに深まっていく。秋山大樹 副委員長は、鬼頭委員長が示した「覚悟」について触れつつ、その想いの裏には乗り越えるべき壁や個人レベルの葛藤があるという。「職場は一律ではない」として、克服に向けて動き出している人間も、もがいている人間もいる実情を伝えた。
その上で、まずは製造現場から2点報告があった。
- 多くのお客様をお待たせしている現状に「申し訳ない」という気持ち以上に「もっとつくれたはずだ」という悔しさがある。稼ぐ力の強化は、モノづくりの最前線にいる私たちが当事者。メンバーも多様化し、海外から来ている仲間への丁寧なめんどう見と1秒を削り出す改善の両立に悩む実態もあるが、1秒1滴1円に徹底的にこだわって改善を進める。(堤支部)
- 設備停止ゼロに本気でチャレンジしていきたい。今後取り組むべきは「自分たちのライン設備は自分たちで守っていく」という覚悟のもと、自主保全*をさらに拡大していくこと。製造メンバーが保全職場へ留学したり、自主保全士の資格を取得したりとスキルアップを進めているが、現場に戻ると身に付けた知識・技能を十分に発揮できていない職場もある。(下山支部)
*ラインに入っている従業員自身が、ラインの設備を保守・点検すること。
こうした声に対し、伊村隆博 生産本部長は、丁寧なめんどう見を続けつつ、生産性を高めるために、現場の困りごとを聞き、やるべきことをやっていくと応えた。保全については、現場の従業員が自分たちでつくった設備が増えれば、メンテナンスもしやすくなるとして、会社としてもサポートしていきたいとした。
伊村本部長は2024年の労使協で、能率・生産目標の凍結を打ち出したが、今回の労使協でも言及があった。
伊村本部長
生産性や能率の指標とは「みんなが頑張ってきたことが結果につながっているか」を見る指標なんです。
だから、みんなが頑張っても生産性が上がっていないというのであれば、それを阻害する要因があるので改善していく。例えば、ラインが停止ばかりしているから上がっていかないのか、ロスが多いから上がっていかないのか。そういった改善の糸口を見つける道具だと思っています。
我々会社側も、能率の目標を達成するために、改善が追い付いていないのに、無理矢理人を減らすようなことを職場にさせてしまっていたことは大反省です。
今回は、そういったことができないような仕組みにしていきたい。4月からは新しい能率制度を運用していくために進めています。
課題があれば現場のメンバーがやること、チームリーダーがやること、組長がやること、工長として全般を見てやること、それぞれの立場で課題に対して何をするか行動指針を決めて進むことが、一番大事なことだと思います。
そして、目標は一律じゃない。仕事も違う、職種も違う。自分たちの職場が成長するために、1台1台しっかりつくっていくために、どういった指標を持って、どういったKPIを持ってやっていくのか、自分たちで“My KPI”を掲げて、進んでいってほしいと思います。
伊村本部長は、いいクルマをお客様に届けるためには「生産現場から販売までつながって初めてできる」と続ける。
昨年もたびたびラインが停止したことには「これがトヨタの実態です。こんなことをやっていたら、生産性をいくら上げたってダメです。生産性を上げる本質は、こういったロスをしっかりなくすこと」と強調した。
設備停止については、組合も踏み込んだ議論が必要だと考えている。次のような意見があった。
- 保全の時間を確保するため、生産ラインが止まっている土日に休日出勤しなければならず、それが常態化している現状がある。組合の中でも、こうした働き方では保全の現場から離れていく組合員も多く、保全とその先にある生産ラインを支えられない。解決するための一案として、土日休みではないカレンダーに変えるなど、これまで当たり前と思っていた働き方の見直しもあると考えている。
飯田智士 副委員長は「土日は休むということを我々は当たり前に考えていたし、ある意味それを守ってきた部分」、「組合がある意味で障壁になっていた部分があったのではないか」と、組合としても強い決意をもって提案していることを補足。生産性向上とメンバーのやりがいを両立する職場体制・勤務を柔軟に考えたいとした。
この提案については、引き続き議論していくこととなった。
より柔軟な応受援体制を目指して
続いては開発部門から。このような課題感が説明された。
- ある断面を見ると、忙しい職場とある程度の余力がある職場が混在している。こうした負荷の差を柔軟にカバーできれば、開発部門全体での生産性は大きく伸ばせるのではないか。応援の手を挙げたくても、マネジメントによるリソーセスの囲い込み(城固め)で手を挙げられない組織もあると思う。ただこれは、サポートに入った結果、人を抜かれてしまったなど、誰かのために動いたことが痛みとして返ってくるときがあるから。そうした風土を変えていきたい。(クルマ開発支部)
モノづくり開発センター支部からは、通常時に他部署の仕事を学んでおくことで、応援しやすくする「セカンド職場」の仕組みが動き出し、やりがいにつながる成果も出つつあることを報告。
応援者に難しい仕事を依頼できず、応援者もやりがいを感じられない、応援者の上司も専門性の高い職場には出しづらいという声を受け、課題解消へ歩みを進めている。
クルマ開発センターの山下寿志チーフプロジェクトリーダーは、間接部門で難しいと言われる作業の原単位仕事の把握と課長間での共有が必要とした上で、スムーズに応援に出せる体制づくりをとっていくとした。
原単位の把握や仕組みづくりと定着については、これまでも繰り返し議論されてきた。それでも進んでいないのは、話し合いの踏み込みが足りないのではないか? 山本 本部長が労使に問題を投げかけた。
山本 本部長
この話は今までもずっとあったと思います。けれども、それがなぜできていなかったのか。
この辺りに、今の議論がもう一つ、本質に踏み込めていないところがあるのではないかと思います。
これは全社同じだと思います。手を挙げて、今横で困ってる人がいるから行く。そこには上司の承認も仕組みも関係ないと思います。
河合おやじが「おやじの会」をつくり、電話1本で(助け合う)という話もあったじゃないですか。
あのように、志や声を上げた人たちがすぐに(助けに)行けるよう、周りがサポートすること、それをどう仕組みに落としていくかということの2つが必要です。
しかし、会社がマネジメントの仕組みをつくればつくるほど、結局進まない。ここを打破していかなければいけないと思います。