機能の壁を越え、もっといいクルマづくりを追求する。時には本音でぶつかりながらも。眼前の難局を共有した労使。強い収益構造をつくるため、必要なのは覚悟と行動だ。
「アクションが遅い」「競争力につながるようなことを、今日からでもやって欲しい」
宮崎洋一 副社長は、目の前の組合、そして後ろに並ぶ会社双方に呼びかけた。
3月4日、愛知県豊田市のトヨタ自動車本社で第2回の労使協議会(労使協)があった。
2月25日の第1回では、モノづくりが、いかに日本の発展に寄与してきたかについて労使の認識を共有。そのうえで、組合からこれまでのルールや仕組みといった「当たり前」だと思っていたことをもう一度見直し、行動に移そうとしている想いが伝えられた。同時に、行動を阻む壁もあるという訴えもあった。
組合が示した覚悟と悔しさに、会社はどう答えたのか。
第2回の労使協をお伝えする。
意味のある頑張り
この日はまず、鬼頭圭介 委員長が前回の話し合いを振り返り、各職場から「組合も会社も本気で変わろうとしていることが伝わった」「自分たちの職場は自分たちで変えていくんだ」と熱量が上がっていることを報告。「議論を全体論に戻すことなく、前進させるための具体論に、しっかりとこだわっていきたい」と伝えた。
鬼頭委員長の言葉に応えたのは近健太 執行役員。
近執行役員
前回、(組合の)皆さまからは、これまでの当たり前というものを思い切って変えなければ、マイナスをゼロにすることさえできない。クルマをお客様に届けるという普通のことさえできない、ということをおっしゃっていただいたと受け止めました。
では、我々はゼロに戻ればいいんでしょうか? 違います。
近執行役員は前回、収益構造の改善は待ったなしであることを語ったが、現在トヨタが置かれている状況が厳しいものであることを示し、労使で認識を合わせた。
近執行役員
今、私たちの当たり前を変える。
「私たちの当たり前というのは、世間と比べてどうなんだろうか」
「世の中の当たり前というのは、もっと厳しいのではないか」
「もっと競争力があるんじゃないか。もっとみんな一生懸命やっているんじゃないか」
そういうことを、真摯に、謙虚に、我々全員で見つめ直す時だと思います。
我々はみんな一生懸命頑張っています。自分の頑張り、仲間の頑張りを絶対にムダにしない。それを絶対にアウトプット、成果に結び付ける。
そうすることで、前回も佐藤さんが言われたように、我々は成長していけるんだと思っています。
しかし、今それを阻害している障害や古くからの習慣、いわゆる構造といったものが我々の周りには明確にあるんです。それをみんなですぐに止めて、変えて、無いもの(仕組み)はつくっていきたいと思います。
まずは会社側の覚悟を、具体的な取り組みとしてお伝えできればと思います。
続けて会社側から、管理スパン*の考え方や保全職場の取り組みについて、これからの取り組みを説明した。
*上司・管理者1人に対する部下の人数。
【管理スパン】
従来、管理者1人につき20人程度が適正とされてきた。これを、組分割の見直しやTL(チームリーダー)の代行などにより、職場実態に合わせて最適な運営を選択できるように検討。
【保全】
自主保全*については、区分A(ライン作業などの直接生産業務)から同B(改善業務)、同C(保全業務)への変更を簡素化。日当たり単位/時間単位で、必要なときに、必要な時間だけ自主保全に取り組めるよう柔軟性を持たせる。
*ラインに入っている従業員自身が、ラインの設備を保守・点検すること。
3組2交替に限定せず、設備やラインの特性などに応じて複数の勤務パターンを準備。
老朽化した設備は、優先順位をつけて計画的に更新。
伊村隆博 生産本部長は、稼ぐ力とやりがいの両方を高められる職場にしていくために「決めるべきことはすぐ決めて実行に移していく」と呼び掛けた。また、人事からも保全職場の勤務形態の変更に即して、食堂や通勤バスの運行手配も進めていくことが提案された。
組合からは、飯田智士 副委員長が、職場は生産計画や要員の人数、受援率などで日々変化していくものと認識を示し、会社からの提案に対しては、一度決めたら終わりではなく、継続して議論し、適正な体制を築いていきたいとした。
飯田副委員長
自主保全の拡大も保全の勤務変更もそれ自体がゴールではないと思っています。必要な保全時間をしっかりと確保して、製造の全員で自分の設備は自分で守っていく、こういう想いを持って、改めて設備停止ゼロを目指していきたいと思っています。
製造現場の使命は、やはりお客様に1日でも早く、1台でも多くおクルマをお届けすることであると思っていますし、これこそが我々トヨタの競争力の源泉だと思っています。