2026年の労使の話し合いが始まった。年頭あいさつでこの1年を「『意志ある踊り場』にしていく」と語った佐藤社長。今年は何が話し合われるのか。
2月18日、トヨタ自動車労働組合から会社に対して労使交渉の申し入れが行われた。今年も1年間の“総決算”と次の1年に向けた話し合いが始まる。
意志ある踊り場
佐藤恒治社長は今年の年頭あいさつで、このようなことを話している。
佐藤社長(26年1月年頭あいさつ)
これまでの取り組みを踏まえて、みんなでやってきた「足場固め」に一区切りつけて、「意志ある踊り場」の1年にしていきましょう。
この2年間、みんなで余力をつくって「やるべきこと」、「やりたいこと」に時間を使える環境をつくろうと頑張ってきました。
生産現場を始め、その時間を活かしていろいろな改善が進んだことは、本当に良かったと思っています。
しかしながら、やり切れなかったこともあります。
「やりたいことをやり続ける」ために必要な「稼ぐ力」を高めることです。「稼ぐ力」がなければ、クルマづくりも、未来への挑戦も、やりたいことはできないんです。
(中略)
未来を支える「稼ぐ力」は、今の私たちの行動にかかっています。
自分自身も、その行動が足りていなかったと思っています。
だからこそ今年は、まず私たちのキャパシティ、「今の実力」に向き合いましょう。向き合ったうえで「仕事の正味率」をみんなで高めていきたいと思っています。
2年間の足場固めにより安全・品質を徹底。6日にあった2026年3月期第3四半期決算発表では、関税影響1.45兆円を見込む中、通期見通しを3.8兆円に上方修正している。
一方で損益分岐台数の上昇は重要課題として残る。第3四半期決算の発表と同日には、経営チームのフォーメーションチェンジの発表もあり、佐藤社長からタスキを受け取る近健太Chief Financial Officer(CFO)が会見の場で「今は損益分岐台数を引き下げて、悪い時に踏ん張れる構造をつくっていかないといけない」と語っている。
環境に左右されない収益構造の構築。これは当然だが簡単なことではない。豊田章男会長は社長時代の2020年5月にあった3月期決算において、2013年3月期から2020年3月期を振り返り「最初の3年間は、いわゆる『意志ある踊り場』として、真の競争力強化を目指しましたが、十分な成果は得られなかった」とし、「平時における改革の難しさ」を痛感している。
「平時における改革の難しさ」は、佐藤社長も感じていたようだ。1年前、異例の本部・カンパニー単位での開催となった第2回の労使協議会(労使協)について佐藤社長にインタビューした際、このような話をしてくれた。
佐藤社長(25年2月労使協インタビュー)
もう一つ、労使協の温度感が職場まで伝播しないという問題意識がありました。労使懇、労使協に出てくる人たちは、すごく熱量が上がっている。
だけど、実際に職場を回ってみると、その熱量はまだら模様。「大変だ」という主張はあっても、当事者としての意識が見えないと思うこともありました。
(中略)
私が今年の第1回労使協で意識していたのは「健全な危機感」でした。好業績だから、足元に潜んでいるリスクに目が行きにくくなる。
だから、「健全な危機感を全員が持とう」「当事者意識を全員で持つことができる労使協にしよう」「健全な危機感と当事者意識のもと行動に移そう」。この3つが、今回の労使協で実現していきたい要素です。
「健全な危機感」は、昨年の労使協の大きなテーマの一つ。
続く第3回では、宮崎洋一 副社長から「恵まれた状況にあるにもかかわらず、『報われない』『割に合わないからチャレンジができない』(という声もある)。そんなこと言っていたら足元をすくわれる。これが一番皆さんと共有したかった」という言葉があった。
回答日には佐藤社長が「『トヨタは大丈夫』と思っていたら、私たちは、足元をすくわれます」と呼び掛けた。
「健全な危機感」を抱き、「意志ある踊り場」で「稼ぐ力」を高めるために何をするべきか。
組合の鬼頭圭介 委員長は、今年の申し入れに際し、覚悟を伝えた。