認証問題に対してこれまでどのような取り組みを実施し、再発防止へどうアプローチしていくのか。議論の前に、労使は現在地を見つめ直した。
是正命令その後
TPS自主研でトヨタグループに根付く風土改革に取り組む一方、8月9日に国交省へ提出した再発防止書には、「人づくり」「モノづくり」「基盤の強化」を柱とする14項目が記載された。
このうち実施中は11項目で、「社長メッセージの継続的な発信と現場との対話」では、是正命令を受けて以降、労使懇までに佐藤社長が6回にわたって従業員に向けてメッセージを発信。品質学習館には、新たに認証について学べるコーナーを設置した。
残る3項目(認証試験中であることを周囲が認識できる施策の導入、認証業務に関する規程体系の再編、認証関連組織への人的・物的リソース充当)については、準備が進んでいるところだ。
1月の調査開始から、これまでの経緯と取り組みを説明した宮本眞志カスタマーファースト推進本部長は、「この一連の出来事で、認証の大切さのみならず、仕事のやり方や文化・風土まで我々は本当にたくさんのことを学んだ」と語る。さらに職場の風土づくり、全社員の遵法意識の向上へとつながる取り組みを推進していく考えを示した。
続けて、中嶋裕樹 副社長が再発防止に取り組む中で見えてきた2つの課題を共有した。
〈人づくり〉と〈モノづくり〉の課題
中嶋副社長
実際に14項目の再発防止をやっていく中で、課題がいくつも見つかっています。今日は少し大きな2点をご紹介したいと思います。
1つ目がモノづくり、2つ目は人づくりという観点です。1つ目のモノづくりですが、試験後の設変(設計変更)数が多くなると、それぞれの中身のエビデンス(を残すこと)までしっかりと対応できていなかったことで、新規の申請に多大な工数がかかってしまいました。
ある事例では設変が300件あり、9,000時間もの時間をかけて、エビデンスがしっかり整えられているかを検証し、国交省に認可届け出をしました。
一点一点、見ていくと、やらなきゃいけない設変もあったんですが、もっと初期の段階で解決できた問題が、後工程までズルズル来てしまったものもあります。今やらなくても、次のタイミングでもいい設変もありました。
これはプロジェクトによってまちまちだとは思いますが、「とにかくやりきるんだ」(というマインドになっていました)。
これ自体は非常にビヘイビアー(ふるまい)としてはいいと思うんですが、どうしても、後工程にしわ寄せが行く実態が見えてまいりました。
トヨタは改善文化ですから、今後も必要な設変はやっていきます。
必要な設変は織り込みながら、お客様にもっといいクルマを届ける。そのためにも、タイミングとして不必要な設変を見極める。もしくは遅らせていた設変をもっと前工程でやる。そういった節目管理をしっかりやっていく。
今まで、カンパニー制でそれぞれに任せていた部分がありますが、開発段階での設変に関しては、プレジデントが責任を取る。
それから号試(号口試作)に移行するタイミングでは、宮本さんのところでしっかりと品質保証本部として、ゲート管理をしていく。
こうしたこともあわせてやっていこうとなってきています。
2点目の「人づくり」での課題では、「(経営陣の)本質を見極める力が不足していた」とし、現場の声を吸い上げ、信頼関係を構築していくことが急務という。
開発の実験現場や認証現場の設備・建屋の老朽化更新は即座に取り組んでいくことを伝えた。
また、TPS自主研についても、「本来の風土(を取り戻す)改革でもありますし、我々の働き方改革に直接つながるものだと思います」と語った。