「人への投資」を議題に据えたトヨタの労使協議会。では販売店・仕入先の現状はどうなっているのか? 本音の対話は自動車産業550万人の仲間へと広がっていく。
【販売店】クルマがどんなに進化しようと、ビジネス変革がどんなに進もうと、我々のビジネスの中心にあるのは人
トヨタの国内販売事業本部の赤尾克己 副本部長は、「お客様との接点になる販売店においては特に“人”が大変重要な基盤」と強調。ト販協の金子直幹 理事長(福岡トヨタ社長)からも、「人への投資は代表者が取り組むべき最重要課題」と強く訴えた。
販売店各社で進められている労使交渉においては、このような会社スタンスに基づき交渉が行われ、すでに回答をした企業に関しては「ト販協から提示いただいたスタンスが後押しになっている」と小川委員長からも言及があった。
今後に向けて、赤尾副本部長から「地域の皆様から、『この販売店で働きたい、働き続けたい』と思ってもらうためには、処遇を上げるだけではなく、風土、人事制度、それから働き方を変えていかなきゃいけない」と提起。大石委員長代行からも「エンジニアの評価基準の難しさ、人を育成する時間確保の難しさ、体系的な研修体系の整備など、多くの悩みを聞きます」と続いた。
議論を受け、ト販協の中村博之 副理事長(トヨタカローラ鹿児島社長)は、「持続的に成長していくためには、収益を上げるだけでなく、お客様、地域から愛される・信頼される企業であり続けることが必要。インセンティブも個人ではなく、チームで還元するなどの取り組みも進めていく」とコメント。金子理事長からも「応急処置ではなく、風土改革も含めた中長期の取り組みを重視したい」と、引き続き人への投資に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
販売店との課題を共有し、トヨタの友山茂樹 国内販売事業本部長は、メーカーとしても継続的に支援していくことを約束した。
友山本部長
私どもの共通の認識として、クルマがどんなに進化しようと、IT・AIによるビジネス変革がどんなに進もうと、我々のビジネスの中心にあるのは人だと思います。
人と人とのリアルな接点、そのぬくもりなどから生まれるお客様や社会の共感、感動が何よりも大切で、その最前線に販売店という存在があるのだと思います。
だからこそ、販売店の従業員、働く人一人ひとりが、笑顔で、生き生き働ける職場、企業風土を醸成していくことが、販売店だけでなく、自動車ビジネス全体の魅力向上につながると確信しています。
私どもメーカーとしては、販売店の人への投資を全力、かつ、継続的に支援していくとお約束したいと思います。
従来、自動車ビジネスは成熟産業と言われていましたが、電動化、知能化、多様化という大きな変化点を迎えている今、変革にチャレンジしていくことで、まだまだ成長産業であり、大きな伸びしろがあると言えると思います。
その伸びしろをしっかり引き寄せていくことが、持続的な成長や継続的な人への投資につながるということは言うまでもありません。
こうしたチャレンジは、メーカーだけではなし得ないもので、長年お客様と絆を育まれてきた販売店さんとともに、切り開いていかなければと考えています。
これからもつくる人、売る人、使うお客様、すべての幸せのために、メーカーと販売店が両輪となって、豊かな未来へ進んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。
また、販売店に関する労使懇談会の終わりにあたり、宮崎洋一副社長は「販売店で働く人たちの“正味率”を上げていくことが必要。クルマを売るため・整備するために入社した人たちに対して、その仕事に専念する時間を提供する責務が会社にはある。メーカーとして、サポートできることを検討するためにも、今後も話し合いたい」と締めくくった。