国内外から多くの注目を集めたトヨタの新体制方針説明会。壇上の佐藤恒治新社長が語ったモビリティ・カンパニーへの変革の道筋とは。
BEV約750万台に相当するCO2の排出削減を達成
中嶋副社長からバトンを受け、宮崎副社長は、地域軸経営について次のように言及した。
宮崎副社長
私はこれまで、海外営業領域を中心にキャリアを重ねてまいりました。
みなさまには地域CEOとつながったCFO(Chief Financial Officer)としてご記憶いただけたら幸いです。
さて、私からは、地域軸経営についてお話しします。
社長の佐藤からお伝えした、トヨタモビリティコンセプトの実現に向け、盤石な事業基盤の維持・強化が引き続き重要であると考えています。
これについて、地域軸経営が果たしてきた役割とその成果から、お話しさせていただきます。
これまで「町いちばんのクルマ屋」を目指し、「もっといいクルマをつくろうよ」の掛け声のもと各地域の市場特性やお客様ニーズに対応しながら、TNGAで開発された素性のいいクルマ、一台一台を、地域CEOの下、丁寧に販売してきました。
その結果、新興国市場の拡大とあわせ、極めてバランスのとれた地域別販売構成を実現してきています。
また、TNGA効果による研究開発費やインセンティブ(販売奨励金)の低減に加え、我々の強みである、「地域のニーズにあったタイムリーな商品改良」と「仕入先とともに取り組む原価低減」を継続的に積み上げてきた結果、稼ぐ力は過去と比べて圧倒的に伸長し、さらなる成長に向けた「未来への投資」を行いながら、利益を伸ばせる体質に進化してきました。
また、従業員や株主、仕入先様などのステークホルダーの皆様とともに成長するサイクルも築いてきました。
加えて、電動車の導入も積極的に進め、初代プリウスの登場以降、累計で2,250万台を販売、BEV約750万台に相当するCO2の排出削減を達成しています。
このリード役となったHEVは、性能と原価に磨きをかけ世代進化してきました。その結果、ハイブリッドシステムの原価は当初の6分の1まで低下、ガソリン車と遜色ない利益が出せるようになりました。
このように、トヨタは稼ぐ力を大きく向上させながら、未来への投資とステークホルダーの皆様との成長と、CO2排出削減を両立してきました。
これがまさに、もっといいクルマをベースとした、地域軸経営の成果だと考えています。
これからもこの地域軸経営をさらに深め、事業基盤を、いっそう強固なものにしていきます。
炭素に国境なし
宮崎副社長
そのために、まず向き合わなくてはならないのがカーボンニュートラルです。
炭素に国境はありませんし、CO2削減は待ったなしの課題です。できることから、すぐに始める必要があります。
だからこそ、我々は、地域毎の電動化の進展度合いや多様なクルマの使われ方を踏まえ、電動車を少しでも早く、一台でも多く普及させるため、きめ細かな対応が必要です。
故に、BEVのラインナップ強化とともに、HEV・PHEVなど、全てのパワートレーンの一層の魅力と競争力の強化を行っていきます。
先進国は次世代BEVの準備と並行して品揃えを大幅拡充
宮崎副社長
ここからはBEVの各地域での取り組みをご説明します。
先進国では、次世代BEVの準備と並行して、性能をさらに磨いたbZシリーズを中心に、品揃えを大幅に拡充していきます。
アメリカでは、2025年に3列SUVの現地生産を開始します。このSUVには、ノースカロライナ州で生産するバッテリーを搭載し、生産能力の増強を進めて行きます。
また中国では、bZ4Xと先月発表したbZ3に加え、現地のニーズにあわせた現地開発のBEVを2024年に2モデル投入します。
また、その後もモデル数を順次増強していきます。
アジアをはじめとする新興国においても、伸び始めてきているBEVの需要にしっかりと対応してまいります。
具体的には、年内にBEVピックアップトラックの現地生産を開始するほか、小型BEVモデルも投入していきます。
先進国は、市場が成熟する中で電動車へのシフトが予想されます。一方、新興国は、新規や増車による市場の拡大が見込まれます。
トヨタは、フルラインナップと稼げるHEV・PHEVと、増強していくBEVの多様な選択肢で、グローバルの幅広い需要に確実に応え、さらに成長していきます。
新興国の成長にはHEVで対応し、稼ぐ源泉に
宮崎副社長
まとめますと、新興国の成長には収益力の上がったHEVで対応し、稼ぐ源泉とします。
そして、1,000万台のバリューチェーンで幅広い事業機会も取り込んでいきます。
加えて、TPSの強みを生かした原価低減と改善の効果をフルに発揮していきます。
結果として、BEVやモビリティ領域の広がりに向けた未来の投資余力をこれまで以上に生み出し、カーボンニュートラルと成長を両立させる強い事業基盤を確立していきます。
さらに深く、地域に受け入れられる会社へ
宮崎副社長
ここからはトヨタモビリティコンセプトの実現に向け、取り組んでいくことをお話しします。
電動化・知能化・多様化の技術革新が進む中で、もう一段広げた視点での地域貢献、産業報国へのチャレンジを進めていきます。
例えばアメリカでは、人々のモノづくり離れや構造的なコスト増など、自動車産業は大きな課題に直面しています。
ここに、現場で磨きあげてきた「匠の技能」と「知能化」を組み合わせ、新しいモノづくり・自働化工程を提案することで、人手不足という課題を解決しながら、アメリカにモノづくりを残す、という恩返しができるのではないかと思っています。
また、4月3日にタイでのCP、サイアムセメントグループとの協業概要を発表しました。
これは電動化やコネクティッドの技術でクルマ・人・物・情報をつなげ、モビリティをあたかも社会インフラの一部のように活用した実装の開始です。
こうした取り組みを通じ、深刻な渋滞や大気汚染、多発する交通事故などの地域課題の解決にチャレンジしていきます。
こうしたアプローチがモビリティ・コンセプト実現の一つのあり方だと考えています。
我々は誰ひとり取り残さず、カーボンニュートラルや地域の社会課題に向き合いながらモビリティ・カンパニーに向けた変革を進めてまいります。
「トヨタはもっとここで頑張っていいよ」と言ってもらうことがさらなる成長の源泉です。
世間的感覚や常識を持ち、外から内を見る。柔軟な発想とチャレンジ精神で積極的に行動を起こしていく。
これらを実践しながら、さらに深く、地域に受け入れていただける会社に成長していきたいと思います。
仲間とともに、常識を超えて挑戦
最後に再び壇上に立った佐藤社長。意志と情熱と行動で「クルマの未来を変えていく」と語った。
佐藤社長
モビリティ・カンパニーを目指したトヨタの取り組みについて中嶋は商品・技術の観点から宮崎は地域経営の観点からお話しいたしました。
どんなに時代が変わってもトヨタは、「商品で経営する」会社です。
そして、世界中で、お客様や社会の多様化にお応えし、幸せを量産していく会社です。
グローバル・フルラインナップの力を磨いてきたトヨタだからこそ、目指せるモビリティ社会の未来があると思っています。
タイにおける社会実装プロジェクトなど、その実現に向けたトヨタモビリティコンセプトに基づく取り組みは既に始まっています。
未来のために、今できることを、すぐにやる。その想いで、仲間とともに行動してまいります。
正解がない時代に、未来を変えていくのは意志と情熱にもとづく「行動」だと思います。
大切なのは、まず行動すること。止まっていたら景色は変わりません。
常識を超えて、挑戦する。
仲間とともに。
そうやって動き続けた先にクルマ屋らしく、トヨタらしいモビリティの未来がある。
そう信じています。
「クルマの未来を変えていこう」
これが、モビリティ・カンパニーを目指す私たちのテーマです。
このブレない軸のもと、意志と情熱をもって、挑戦してまいります。