「クルマ屋になろう」という意識が「もっといいクルマづくり」を進化させる!?

2023.10.10

「新しいカタチのスポーツSUV」として登場したクラウン スポーツ。開発陣のさまざまな挑戦を可能にした、クルマづくりの現場における変化とは?

新型クラウンの開発現場に広がった“圧倒的な当事者意識”とは!?

新型クラウンの開発現場における実務のリーダーとしてクラウン 「クロスオーバー」「スポーツ」、さらに今後デビューする「エステート」も担当している本間裕二。

前述した通り、クラウン スポーツでは内外装の意匠から走りに至るまで「見て、乗って、走って、お客様に“WOW”と感じていただけるようなエモーショナルなクルマ」を目指した。

プロジェクトメンバーの一人ひとりが失敗を恐れず、挑戦を続けることができたのは、クルマづくりの現場に “圧倒的な当事者意識”があったからだと本間は言う。

その背後には、「もっといいクルマづくり」を追求するために必要な「機能軸からの脱却」という考えがある。

本間

「私はサスペンション設計です」「私はデザイナーです」というスタンスが、いわゆる機能軸です。かつては、クルマづくりが各機能で分かれていたセクショナリズムの時代もあったと思います。

でも、「もっといいクルマをつくろうよ」「クルマ屋になろう」というトップの長年にわたるメッセージによる意識変革の大きな流れがあり、クラウンに限らず各プロジェクトが自然に呼応するようになってきたと感じています。

「私はサスペンション設計だからサスペンションを見ます」ではなく、「クラウンというクルマ軸で見ましょう」という意識です。

2022年7月に開催された新型クラウンの発表会で中嶋副社長は、4つのモデルを並行して開発するのは至難の業であり、それを可能にしたのが「カンパニー制」と「TNGAToyota New Global Architecture)」だと説明した。

2016年に始まったカンパニー制では、これまで当たり前だった開発プロセスの見直しを実施。例えば製品企画と開発の各工程を一つのチームにし、全員がプロであるという意識を高め、従来以上に緊密なコミュニケーションがとれるようにした。

一方、2012年に構想が立ち上げられたTNGAでは、もっといいクルマづくりを実現するため、プラットフォームとパワートレーンを刷新。一体的に開発することで、基本性能を飛躍的に向上させることを目指してきた。

こうした取り組みの成果が、クラウン スポーツの開発現場にも、カタチとなって現れてきたのだ。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

ところで、新型クラウンでは、歴代モデルで初めて「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」「エステート」という4つのボディバリエーションを展開する。

「人々の価値観が多様化した時代において、お客様それぞれのライフスタイルやライフステージに合わせて、一人ひとりに合ったクラウン“マイクラウン”を提供したいとの想いを込めて、4車種を提案させていただいた」と本間は語る。

本間

トヨタには「もっといいクルマつくろう」という全社員に共通する価値観がありますが、これはお客様に笑顔になっていただくためだと私は考えています。

お客様の多岐に渡るライフスタイルに合った、笑顔になっていただけるクルマを提供するため、「私たちが本当にいいと思える、今の時代に合ったクラウンとはなんだろう」というところからスタートし、さまざまなボディタイプを検討した結果、最終的に今回の4モデルに絞り込みました。

これら4モデルをお客様にタイムリーに提供するために必要なのが、超短期開発だ。先述の通りクラウン スポーツの開発期間もたった21カ月だった。

そこで重要になるのが、TNGAとカンパニー制に加え、開発の“初期完成度”を高めることだと本間は強調する。

本間

例えば外形デザインでいうと、デザイナーがスケッチを描いて、エンジニアが図面化し、実際にボディを試作して、量産フェーズに移るという流れになります。

クラウンスポーツのリアフェンダー意匠に代表されるように、デザインフェーズの初期段階から設計者や生産技術メンバーも入り、図面化や量産化のことも鑑みながらデザインを進めていくと、“初期完成度”が高まり開発期間がギュッと短縮できます。

このように各部署がそれぞれの工程を数珠つなぎではなく一体となり、「融合」させながら進めていく体制により、完成度を高め、開発期間を短縮させることが可能になりました。

プロジェクト全体でこうした新しい挑戦ができたのは、「もっといいクルマづくり」のためには、「失敗を恐れてはいけない」という考え方が浸透してきたためだと本間はいう。

本間

豊田会長の言葉に「バッターボックスに立とう」というものがあります。失敗をしているということは、チャレンジしていることであり、たとえ10打数0安打でも、打席に立つ人をみんなで応援する組織のあり方が大事だという考え方です。

「ナイススイング」と言ってくれるリーダーがいて、失敗したらみんなで助け合う風土がトヨタのクルマづくりの現場に根付いてきていますし、それが新型クラウンにも結実していると感じています。

本間によると、クラウンクロスオーバーでは実務で頑張っていたメンバーが、スポーツではリーダーとして力を発揮したり、他車種の開発を担当したり、新型クラウンのプロジェクトで育まれたチャレンジ精神とチームワークの輪が確実に拡大しているという。

企画から開発、そして生産まで、あらゆる現場における「革新と挑戦」は、今後さらに大きな輪となって、「もっといいクルマづくり」を進化させていくことだろう。

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